【完結】元SS冒険者の部隊長は王族に陥落される

アヴニール編【学園編】

鈴蘭

「さあ、みんな準備が出来たようだな。」

クライス先生が見渡す。


「この学園、金持ってるよなあ…。」

キリアは思わず呟いた。

だって、更衣室が全室鍵付き個室だったのだ。


「あいつの婚約者が、あいつの入学前に整備したんだよ。」

ほら、母親の事件があったから…。と、まだ名前の覚えていないクラスメイトが教えてくれた。


クリス=クレイソン。旧姓アッシュフォード。

俺もよく知ってる。

というか、俺は彼に憧れている。

実力だけでのし上がった。

だから、俺もあの事件は許せない。

彼の不幸は美しかったことだ。


事件があって一国が倒れたから、まさに傾国の美貌だと称賛する人もいるが、本人はそういわれたくないはずだ。

まだ若いのに、騎士団長を辞してしまった。


あんなことがなければ、彼はまだ国のために剣をふるっていただろうに。


凛とした見た目の意味ではなく、正義という花言葉に相応しい竜胆のような人だ。


さて、剣術の授業。


純粋の花言葉。

彼の息子の鈴蘭はいかほどか。



「さて、生徒同士組手を組む前に、デモンストレーションをしよう。アヴニール、前へ!」


「はい!」


へえ、これは実力を知るのに好都合。


「剣は一本だが、問題ないか。」

「ありません。」

「よし！」


アヴニールは、生徒用の剣を一本構えた。

構えたといっても、斜め右下に傾けた変わった構えだ。


対する教師も、剣を一見無造作に肩に乗せている。


「デモンストレーションだからお遊びなのかな?」

とんでもない。

二人とも無駄な力のかかっていない。自然体。
隙きがあるようで、ない。



教師の合図で同時にうごく。



一瞬。

一瞬で間合いを詰め、カキンという金属音がする。

凄まじい連撃。


受け止め、かわし、ぶつけ合う。


「あ、あわわ…。」


クラスメイト達は呆然としている。


ああ、なるほど。


鈴蘭は可憐だが、毒がある。