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新章(アリスの結婚編)

魔王の息子

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僕の妻に手を出す。

僕の妻が邪魔。

つまり、僕の子を宿す者が彼らでは困る、者たちということか。


まだまだ頑張ってくれているようではあるけれど、王太子夫妻には娘しかおらず、ロメオの予言通り、その次は僕である可能性が高い。


僕のお母さまは最初こそ男爵家の者だったけれど、母方のおじいさまの血筋は悪くなかったし、結果的に辺境伯の爵位を譲り受けたから、僕の血統的には、彼ら的には王統を継ぐものとして、合格なのだ。

だが、僕は他国の王と、王女と、神獣を妻に選んだ。


彼らが望む、国内の、然るべき血筋の姫君ではない。


そのへんは、お父様とお母さまが、僕の意を汲んで、掃除したはずなんだが。

それで、まだ。企てるなんて。よほどの者だぞ。



目の前の男ーーーーー薄汚い、どこにでもいそうな、ひげ面の不細工な中年男ーーーーーは、がくがくと震えている。



「おっ、俺はぁ! あの娘さんに恨みがあるって男に頼まれて…!! 俺も女には散々馬鹿にされてきたから…!むしゃくしゃしてて…!!!」


「おい、死にたくなかったら情報をよこせ。お前に頼みごとをした男はどんな男だ!?体格年齢特徴すべて言え。簡潔に。」



「ひぃいいい!」


プッ

「ーーーーーーーーーーーー!」

「!!」


男が口を割ろうとした瞬間、どこからか矢が飛んできて、男の脳を貫き、即死させた。



僕が遅れをとるなんてーーーーー。

悔しいが、いい腕だ。カリスおじいさまといい勝負かもしれない。


せっかく旅行に来たのに…。

こんなことなら、公爵家でゆっくりするんだったか…。


だが、もうここまで来てしまったらどうしようもない。



僕は、お嫁さんたちを人ところに集めた。

なるべくくっついて、僕から離れないで行動して。

危険が来たら、ザオラルは飛んで逃げて。
君になるべく力を使わせたくはないけれど、もしもの時の回復役だから、自分を一番大事にして。
タケルは、日本刀で一緒に戦ってほしい。でも、無理はしないで。


私だけ戦えない…。と、ルージュが下唇を噛んだが、気にしないでいいと答えた。
その代わり、一番周囲に気を配っててもらえると助かる。




ツーツー。

念のためにお母さまが持たせてくれた通信機が鳴る。



『アリス、キャッツアイだ。もしかしたら既にことが起きているかもしれんが、お前の嫁さんたちが狙われている。』


「ああ、今まさに襲われたところだよ。実行犯は捕まえたが処分された。」


『犯人はまだ裏を取り切れていないが、おそらくはグロリア伯爵だ。お前に自分の娘を宛がいたがっている。今いる嫁を蹴落として、な。』


「ばかなことだ。すぐに後悔させてやる。」


『おいおい、やり方には気をつけろよ。こっちもアヴニールと一緒に頑張るから。グロリア伯爵は、お前の誘拐事件の首謀者だったグレイス侯爵の遠縁の分家だ。裏の騎士団の総括者だったのではないかとみている。なかなか狸親父だ。気を抜くな。』



プツ。通信が切れた。


そうか、アヴニールも僕らのために頑張ってくれているのか。




実行犯のあたりがついたなら、前進だ。




僕は、『魔王』の息子だからね。






剣を振るだけが、僕の特異点じゃないんだよ?








「おーーーーーーーい、また会ったねぇ、これって運命?」



田中一郎が呑気な顔をしてやってくる。






お前が一番うさんくさいんだよ!




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