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新章(アリスの結婚編)

新婚旅行3 温泉街ベフイン

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昔、お母さまたちも新婚旅行に来たという町についた。


港が近くて、海の幸が豊富だけど、山にも近くて温泉が湧くらしいこの町は、スノーフォレストの中でも随一の観光名所だって、マシューさんが言っていた。


スノーフォレストは、世界で唯一、王制じゃない。

貴族がだれ一人残っていなかったから、改革をしやすかったとマシューさんが言っていた。

今では、王族は象徴的なもので、政治は国民から選ばれた人たちがやってるんだって。

いつか世界の主流になりそうだよね。



僕も王様になりたくないから、できればレッドキングダムもそうなってほしいんだけど、貴族が邪魔するだろうからできないだろうな。

だから、貴族のいる他国だと、うんと遠い未来になりそうだ。



身分の上下がないから、国民もみんな元気だ。

うん、こういうところでは身分関係なく過ごしたい。



「かわいこちゃんたち! ねえ、そこのかわいこちゃんたちってば!!」


さっきからなんか騒音が聞こえる。



「ねえ、さっきから君たちに話しかけてるんだけど?」


「きゃ!」




浅黒い肌の暗闇のような黒髪黒目の男が、ルージュの肩をつかんだ。


「僕の妻にきやすく触るのはやめていただきたい。」

ルージュの肩から手を払うと、男は目をくりっとさせた。

色が全体的に暗いから、埋もれて気が付かないけれど、よく見たら結構整った顔をしている。
それに、年齢も若そうだ。20代前半~後半くらいだろうか。

軽薄そうだけど、筋肉質で、なにか肉体労働をしているのかもしれない。




「ごめん、ごめん!俺、田中一郎。一緒の船に乗ってたんだよ。学生の卒業旅行かなあって思ったから、よかったら案内とかどうかなーと。」

まさか、そこの女の子が君の奥さんだとは思わなかったからさぁ。



「彼女だけでなく、ここにいる3人全員が僕の妻です。新婚旅行なので放っておいていただけると助かります。この辺の情報はすべて頭に入れてきましたので。お気遣いなく?」


「でもさぁ、穴場のお店とか、地元の人間しかしらないスポットとかグルメとか、そういうとこは知らないんじゃない~?」



「いいんですー。鉄板の観光で十分満足できますから。」

なんかうさんくさいんだよなあ。


しかし、この後、僕らは行く先々でこの男に出会うことになるのだ。









宿につく。


4人がまとめて泊まれるような、一番広くて立派な部屋を借りた。


部屋には、大きな露天風呂がついている。


「みんなで入りましょうね。」ふふっと、ルージュが笑っている。


彼女は男同士の睦ごとを見る趣味があるようで。あとから大量のそういう書籍を見せられた時は唖然としたが、だからみんなでやりたいのか、と納得した。

学園で腐ったらしい。

なんでかあの学園にはそういう本を自主制作しているサークルが伝統的にあるらしくて、若いころのお母さま×王子を見せられた時は、みんなで、「ないわーない、ない。」と思わず言ってしまった。


お母さまは、嫁側だと知らない人からみたら、カッコいいからなー。




「私としては全裸でもいいんですけど、これならみなさんも恥ずかしくないでしょう?」


ふふっと笑うルージュ。


僕は全裸なんだけど、お嫁さん側は薄手の着物をきている。



「いっぱい気持ちよくなってね。」


「精いっぱい、がんばります…!」



うーん。こまったなあ。













「うーん、まいったなぁ。」


宿で湯あみをすると、浅黒い肌は、白くなった。


さすが、頭が切れる子だ。

うまくノッてくれない。


「これじゃあ、任務が遂行できないぞ…。」


まあ、だからと言って退かないけどね。



ぺちょんと、風呂場に水音を響かせて、顔を洗いながら、田中一郎はつぶやいた。
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