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新章 溺愛編

サウス王国の守り神

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「この国の成り立ちを話しよう。」


ロメオ王子は、弱っている神獣を優しくなでながら、語り始めた。


「この国は、海に面し、海抜が低く、津波に苛まれていた。

みなを守るリーダー役だった逞しい男は、相棒に海鳥を連れていた。

一人と一羽は津波の前兆をいち早く見つけると、皆に知らせ、被害を最小限に収めることに努めていた。


ある日、大きな津波が来た。

この国全土が呑まれ、逃げ場はない。だれも助からない。


リーダーさえも覚悟を決めたその時、海鳥の姿が変わった。


海鳥は愛する相棒に死んでほしくなかった。

彼が守る彼の大切なみんなにも。


願いの力が窮地にきて、海鳥に変化をもたらし、海鳥は神獣へと進化した。


海鳥は、その大きな体で津波を防ぐ防波堤となった。


みなを助け、傷ついたものには、自分の命を分け与えた。


そして、津波を起こしていたものの、正体を知る。



それは、大きな蛸の化け物だった。



このあたりの海域には、昔、海賊船や様々な船が沈んでいる。

それらの船から出てきた毒が、生き物を化け物へと進化させた。

この海には、こういった化け物が、多く眠っていた。



海鳥は、人の女性へ姿を変え、この国の初代王妃となり、以降、国を化け物から守り続けた。」



そして、相棒がなくなってからは、国の守り神となったが、最近では人の姿を保てず、弱り切っているんだ。

神獣の血が、僕たち王族には入っているんだよ。



「能力といい、姿といい、偶然かもしれませんけど。ザオラルと同じ、種なんでしょうね。」

それで、ザオラルと彼女を会わせて何がしたかったんですか?



「彼女はもう亡くなる。両親が日夜祈って、回復を願っていたが、治ることはなかった。老衰なんだ。だから、その前に、彼女の力を継承してほしい。 ザオラル君、君に。そして、アリスにはその様子を見てもらって、将来的にはこの力を人工のものにしてほしいんだ。」


「彼女の力?」


「彼女の能力は癒しの力。化け物を元の動物に戻すくらいの、毒を打ち消す浄化の力。」


未来視が見える。

今、僕の両親が彼女の代わりに海の化け物たちと戦っているけど、僕らじゃだめだ。

サザン将軍や、公爵夫人が駆けつける。

でも、それでは終わりにはできない。

浄化が必要だ。




僕に力を貸してくれ。

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