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新章 溺愛編

女王の影と陣痛

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フフフフフフ。


好機が訪れたわ。

私を縛っていた憎々しい光が消え、外に出る。


都合がよいことに、ここは今世の魔王様の屋敷。

忌々しいあの男も、ここにいる。


影から影に移り、屋敷中を探すと、寝室であの男は寝ていた。

男のくせにネグリジェのような服を着て。


よく見ると、腹が膨らんでいる。

病気ではない。



膨らみに触れると、心臓の音がした。




こいつ、男なのに魔王様の子を孕んでいるの?



幸せそうな寝顔を見て、辛くなる。



私は魔王様に愛されなかった。

愛されたのは、この男。




この男が憎い。

殺してしまおうか。


いや、待って。

それほど魔王様がこの男がいいというのなら、憑りついてしまうのもいいかもしれない。



ズズっと、暗闇で、影の手がのびた。













気配を感じた。


闇の気配。

スノーフォレストの倒したはずの女王に似ている。

濡れたものが纏わりつくかのような気持ち悪さを感じて、俺はを掴んだ。

『…ひっ!』


短い悲鳴が聞こえた気がした。


体が重くても。


跳べなくても。


たとえ暗闇で何も見えなくても。



ここで俺がやられるはずはないだろう?



ましてや、今、俺は一人だけの体じゃないのだから。


可愛い我が子の命もかかっているのだから。


枕元の剣を払い、くるくると空中で回転する剣を一瞬で手に取って、そのままベッドを突き刺した。


『ギャアアアアアアアアアアア!』


「クリス!」


そこへ、アイスが灯りを持って駆け込んできた。








灯りに照らされたそれは、黒い布切れのようだった。


アイスがランプの中に、詰める。


そこへ、アリスも入ってきた。

「お母さま、ご無事で…!?」


「無事に決まってるんだろ。誰だと思ってるんだ。身重でも、俺だぞ?」




「…でもお母さま、顔色が…。」



「…そう……いえば…。おなか…



ーーーーーーおなかが痛い…。



玉の汗をかいて、倒れこむ。


呼吸が荒くなる。


気が遠く、なる。





ああ、これ。


ダメな奴だ…。

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