異世界転生したら王子なのに身売りさせられるところでしたが聖女でした。魔王を倒したのでいちゃいちゃしたいです。

花木大翔の転生

追いかけて死なせてしまった、前途有望の若者。

彼はどんな青年だったのか気になって、個人的に事件を洗い直した。


彼は冤罪だった。

赤城タクマを糾弾する記事を書き、赤城は議員を辞職した。


支援者が離れ、一ノ瀬に対するお門違いな恨みを吐きながら、俺のことも恨んで。



「一ノ瀬ッ!　一ノ瀬めっ!　死んでも俺の邪魔ばかりしやがって!　お前もだ!　一ノ瀬の犬め!!」


赤城にビルの屋上から落とされた。

そして俺も、落ちる時、赤城の足を掴んでいたのだ。



「あいつは………あなたを恨んで、この世界へ来ています。たぶん、年は俺くらいだと思います。俺は、貴方の力になりたくて。」


女神さまの予定では、あなたは才気ある愛し子として皆に愛され、聖女と崇められ、他国の王子に娶られて幸せに暮らす予定だったんです。

ところが、何故か叔父あいつが、その容姿に執着したから、あなたは姿を変えられて閉じ込められた。


赤城が………関わっているような気がするんです。


「罪滅ぼしにもなりませんが、赤城があなたの幸せを壊しにかかるのなら、俺があなたを幸せにしたいと思いました。」


諜報活動なら、前世のスキルが生きますから、早くに出仕しました。

子爵だと、王子の輿入れには不相応でしょうから、出世して、伯爵位を目指したかったんです。




「君はそこまで気に病んで……。」

「ところが、王統が潰れた。あなたは捕まって。だから………。結局俺は何もできず、廃嫡されて囚人になりました。今の暮らしは前世からの罰だと思っています。それだけのことをしたのですから。」


服から覗く肌は、痛ましい赤が散っている。

彼はこの店では最下層だから、毎晩のように複数人の相手をさせられているのかもしれない。

廻し部屋っていうんだよな……。



「君は充分罰を受けたよ!　そんなに自分を責めないで!!」

思わず、彼の両手を握りしめる。


「君は俺が身請けする。そのかわり、俺に力を貸して。」


「はい……。俺はあなたに生涯の忠誠を誓います。」

彼は、大きな瞳から、大粒の涙をこぼした。


かつて赤城タクマの真実を暴き、俺の名誉を回復させ、赤城を追い詰めた敏腕。

今度は一緒に闘おう。






「王様。」


イライラしながら、執務をしていると、見知った男が現れた。

容姿としては割合地味だが、整った顔の司祭の息子。


「君か……。」

「グレイス君、残念でしたね。」

やっと愛を手に入れられたのに。

「あなたこそ、王。王の器。あなたが軽んじられているのがおかしかったのです。あなたにこれを。」

彼は薬を王に渡す。


「オメガのヒートを誘発する薬です。なんかしら理由をつけて、会うことができたなら………。分かりますよね?」　

男はニヤリと笑う。


三ヶ月のような目と口は、赤城タクマに瓜二つだった。