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やだ…うちの子天才すぎない?
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「それでは、よーい!はじめっ。」
伯爵邸の庭。
妻の合図で、娘と向かい合う。
怪我したら大変なので、お互いに紙を丸めてつくった剣を持っている。
ミレニアは、これから出かけるのか、外出用のドレスを着ていたが、ショールを上から羽織ってテラスに腰かけた。
ミレニアのお腹には、今、二人目の子どもがいるのだ。
身重の貴族の女性がどこへ外出するのか…と思うが、ミレニアだからな。
「お父様、真剣になってもらえますか?」
「すまん、集中する。」
天使に怒られちゃった。
でもなぁ、心配だなあ。これで騎士になるのをあきらめてくれるならいいんだけど。
女性でも騎士になる人はいるけど、いざ自分の娘が、って思ったら、やっぱり死と隣り合わせの職業だし、肉体欠損とかもあり得るんだし、させたくないよ。
さて、一応さっき握り方と型は軽く教えた。
どうかな?
ーーーーーーん?
8歳の娘から、すさまじい殺気が…。
思わず、振りぬき、娘の胴あたりを狙う。
シュッ。
横に飛ぶ娘。
そのまま私の背後へーーー。
と、私は体を半転して止め、縦に振りぬいた。
「う…ううわああああああああああああん!!!」
頭にぽかーってやってしまった!
ごめん、ごめんよお!!
「す、すまんアンジュ!!」
「くやしいですわあああああ!!!」
「悔しくて!?」
痛いから、じゃなくて悔しくて、か…。
剣筋も良さそうだし、この子がそれほど望むなら、騎士に鍛えてやるか…。
そう、だれにも傷つけられないほどの、騎士に。
ーーーーーーーそのころ。王宮では。
「アンジュちゃん、最近遊んでくれないなぁ…。」
「あらあら、デイヴィッドったら。アンジュちゃんのこと、好きなのね。」
王太子妃マリーが刺繍をしている傍で、その第一子である息子のデイヴィッドが、同じく刺繍をしながら、庭を眺めて呟いていた。
「ぼく、アンジュちゃんと遊べるように、お茶も刺繍も覚えたのに。」
「デイヴィッドは本当に器用よね。お母さま大雑把だもの。お母さまより針目きれいだわ。お父様に似たのね…。」
「僕、お父様に似てないよ?みんながお母さまに似てるっていうもの。」
「うーん、見た目の話じゃなくて、っていうか…。」
「アンジュちゃん、この間、僕の刺繍見て怒り出したの。何が、嫌だったんだろう…。」
可愛らしく首を傾げる8歳児には、分からないに違いない。
この年齢だと、女の子の方が早熟なのだ。
自分が気になる男の子が、
自分よりお茶のマナーも刺繍も上手だったら、貴族の女の子として、立場がないじゃないか。
どうしたものかしら…。
伯爵邸の庭。
妻の合図で、娘と向かい合う。
怪我したら大変なので、お互いに紙を丸めてつくった剣を持っている。
ミレニアは、これから出かけるのか、外出用のドレスを着ていたが、ショールを上から羽織ってテラスに腰かけた。
ミレニアのお腹には、今、二人目の子どもがいるのだ。
身重の貴族の女性がどこへ外出するのか…と思うが、ミレニアだからな。
「お父様、真剣になってもらえますか?」
「すまん、集中する。」
天使に怒られちゃった。
でもなぁ、心配だなあ。これで騎士になるのをあきらめてくれるならいいんだけど。
女性でも騎士になる人はいるけど、いざ自分の娘が、って思ったら、やっぱり死と隣り合わせの職業だし、肉体欠損とかもあり得るんだし、させたくないよ。
さて、一応さっき握り方と型は軽く教えた。
どうかな?
ーーーーーーん?
8歳の娘から、すさまじい殺気が…。
思わず、振りぬき、娘の胴あたりを狙う。
シュッ。
横に飛ぶ娘。
そのまま私の背後へーーー。
と、私は体を半転して止め、縦に振りぬいた。
「う…ううわああああああああああああん!!!」
頭にぽかーってやってしまった!
ごめん、ごめんよお!!
「す、すまんアンジュ!!」
「くやしいですわあああああ!!!」
「悔しくて!?」
痛いから、じゃなくて悔しくて、か…。
剣筋も良さそうだし、この子がそれほど望むなら、騎士に鍛えてやるか…。
そう、だれにも傷つけられないほどの、騎士に。
ーーーーーーーそのころ。王宮では。
「アンジュちゃん、最近遊んでくれないなぁ…。」
「あらあら、デイヴィッドったら。アンジュちゃんのこと、好きなのね。」
王太子妃マリーが刺繍をしている傍で、その第一子である息子のデイヴィッドが、同じく刺繍をしながら、庭を眺めて呟いていた。
「ぼく、アンジュちゃんと遊べるように、お茶も刺繍も覚えたのに。」
「デイヴィッドは本当に器用よね。お母さま大雑把だもの。お母さまより針目きれいだわ。お父様に似たのね…。」
「僕、お父様に似てないよ?みんながお母さまに似てるっていうもの。」
「うーん、見た目の話じゃなくて、っていうか…。」
「アンジュちゃん、この間、僕の刺繍見て怒り出したの。何が、嫌だったんだろう…。」
可愛らしく首を傾げる8歳児には、分からないに違いない。
この年齢だと、女の子の方が早熟なのだ。
自分が気になる男の子が、
自分よりお茶のマナーも刺繍も上手だったら、貴族の女の子として、立場がないじゃないか。
どうしたものかしら…。
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