騎士団長は心配性

竜鳴躍

文字の大きさ
上 下
2 / 10

やだ…うちの子天才すぎない?

しおりを挟む
「それでは、よーい!はじめっ。」

伯爵邸の庭。

妻の合図で、娘と向かい合う。

怪我したら大変なので、お互いに紙を丸めてつくった剣を持っている。


ミレニアは、これから出かけるのか、外出用のドレスを着ていたが、ショールを上から羽織ってテラスに腰かけた。
ミレニアのお腹には、今、二人目の子どもがいるのだ。
身重の貴族の女性がどこへ外出するのか…と思うが、ミレニアだからな。


「お父様、真剣になってもらえますか?」

「すまん、集中する。」

天使に怒られちゃった。

でもなぁ、心配だなあ。これで騎士になるのをあきらめてくれるならいいんだけど。
女性でも騎士になる人はいるけど、いざ自分の娘が、って思ったら、やっぱり死と隣り合わせの職業だし、肉体欠損とかもあり得るんだし、させたくないよ。

さて、一応さっき握り方と型は軽く教えた。


どうかな?


ーーーーーーん?



8歳の娘から、すさまじい殺気が…。



思わず、振りぬき、娘の胴あたりを狙う。

シュッ。

横に飛ぶ娘。

そのまま私の背後へーーー。


と、私は体を半転して止め、縦に振りぬいた。




「う…ううわああああああああああああん!!!」


頭にぽかーってやってしまった!
ごめん、ごめんよお!!


「す、すまんアンジュ!!」

「くやしいですわあああああ!!!」

「悔しくて!?」


痛いから、じゃなくて悔しくて、か…。

剣筋も良さそうだし、この子がそれほど望むなら、騎士に鍛えてやるか…。


そう、だれにも傷つけられないほどの、騎士に。





ーーーーーーーそのころ。王宮では。


「アンジュちゃん、最近遊んでくれないなぁ…。」

「あらあら、デイヴィッドったら。アンジュちゃんのこと、好きなのね。」

王太子妃マリーが刺繍をしている傍で、その第一子である息子のデイヴィッドが、同じく刺繍をしながら、庭を眺めて呟いていた。

「ぼく、アンジュちゃんと遊べるように、お茶も刺繍も覚えたのに。」

「デイヴィッドは本当に器用よね。お母さま大雑把だもの。お母さまより針目きれいだわ。お父様に似たのね…。」

「僕、お父様に似てないよ?みんながお母さまに似てるっていうもの。」

「うーん、見た目の話じゃなくて、っていうか…。」

「アンジュちゃん、この間、僕の刺繍見て怒り出したの。何が、嫌だったんだろう…。」


可愛らしく首を傾げる8歳児には、分からないに違いない。

この年齢だと、女の子の方が早熟なのだ。


自分が気になる男の子が、

自分よりお茶のマナーも刺繍も上手だったら、貴族の女の子として、立場がないじゃないか。

どうしたものかしら…。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

ヤンデレ王子は姫騎士を包囲する

竜鳴躍
恋愛
一見か弱く、弱いふりをしているが実は戦闘狂の王太子 デイヴィット=フォン=レッドキングダムは、幼馴染で親戚の騎士団長の娘アンジュ=ローズ=ビクトリアのことを、物心つく頃から狙っている。ヤンデレ王太子はどうやって鈍感姫騎士を陥落していくのか。娘を溺愛する父親の目をかいくぐる、学園生活が始まる。 シリーズ1 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/709525494 シリーズ2 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/114529751

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。

石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。 色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。 *この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛
恋愛
 ある日現実世界で車に撥ねられ死んでしまった主人公。    しかし、目が覚めるとそこは好きなゲームの世界で!?  しかもその悪役令嬢になっちゃった!?    困惑する主人公だが、大好きなヒロインのために頑張っていたら、なぜかヒロインの兄に溺愛されちゃって!?    不定期です。趣味で描いてます。  あくまでも創作として、なんでも許せる方のみ、ご覧ください。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

処理中です...