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男爵令嬢

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ミシャ=サンドイッチ男爵令嬢は、教育施設のある町を治める領主の娘だ。

白い肌に、ダークブラウンの黒髪にも見えるしっとりした髪に、鮮やかな青い目が美しく、小ぶりの鼻にぱっちりした目元はお人形のようで、もっと家格の上の家の娘であれば、良家への縁談も期待できるほどの器量よしだった。

自分の分は弁えつつも、下級貴族であっても、それなりに裕福で、好きになれる人と結婚したい。


そう思ってあれこれ選んでいたら、婚約者ができないまま、いつのまにか学園を卒業してしまっていた。


ミシャは、このまま誰の嫁になれなくてもいいと思っていた。
好きでもない相手と苦労するような結婚をするくらいなら、一人で生きていこう。

親にお願いして、大好きな本屋を経営することにして。


それでふと、子爵家の人が営んでいる教育施設へ、慈善で本でも寄付しようかしら。と思ったのがそもそもの始まり。


20代半ばの経営者は、サザエル=ホーリーランドという子爵令息で、お父様は騎士団長、お母さまは副団長を務められた立派な方。お姉さまも公爵家の養女になって、他国へ王妃として望まれて嫁がれている。

本人は、あまり剣がお得意ではなく、障がいをもった子の教育に力を注ぎたいと、教育者になった方。


なんてすばらしいのでしょう。


それに、サザエルさまは、見目麗しい方だった。


一目見て、恋に落ちてしまったのだ。


彼はまだ独身だった。けれど、婚約者がいた。

でも、初めて知った恋は、婚約者がいるからといってあきらめきれるものではなかった。



マナ=クレイソン。

クレイソン公爵家の三男。


かわいい顔をしているけれど、耳も聞こえないし、口もきけないし、体も弱い。


そんな子に女主人が務まると思って?


この施設を建てるのに口添えしたのは、公爵家だと聞いている。

恩を売って、押し付けたということ?


そんなのサザエルさまがおかわいそうだわ!





公爵家からあの子が出てこなくなったと聞いて、さすがの私も気になって、かの家の前まで来たところ、思いがけずサザエルさまとばったり会った。

サザエルさまはあの子のお見舞いに行くところで、果物の入った籠を持っていた。


挨拶をしていたら、あの子が屋敷からこちらを見ているのに気付いたわ。

だから、それとなく、転んだ振りをしてサザエルさまに寄りかかったの。

お優しいサザエルさまは受け止めてくださったわ。


「ごめんなさい。ありがとうございます。でも、あなたにこれほど想われて、マナ様はお幸せですわね。」

「ええ、僕はマナを愛しているんです。」


サザエルさまは、押し付けられたわけではなくあの子が好きなのね。


ちくりとして、自分の勘違いを知り、もうサザエルさまをあきらめる努力をしようと思ったけど、あの子の窓が閉まっていて、少しいい気味だと思ってしまった。
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