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卒業式とサプライズ
しおりを挟む世界樹の呪いが解かれても、ミルフェルト様とディオ様は見つからなかった。
それでも、ディオ様については、私の記憶がどんどん塗り替えられているので、黒いドレスのリアナの幸せのために戦っているのだとわかる。
(ディオ様のあんな台詞やこんな台詞が記憶の中に増えていくの居た堪れない。なんでこんなに甘いの黒リアナとディオ様?!)
もはや、黒いドレスを着ていない別のルートの私については、他人なのだと思うことにしている。
いや、無理なので。兄のハッピーエンドに至るまでの台詞くらい無理なので。
それに比べて私と兄は……。
「お兄様?」
兄と私の距離はなんだかおかしい。
以前のように、兄妹なのだという言い訳ができなくなった結果、なんだか距離がおかしい気がする。
「もう、兄と呼ぶのはやめてくれない?リアナ」
「うっ。フリード……兄様」
「フリード」
え……兄ってこんなキャラでしたか?……いや、こんなキャラだった気もしますけど?
近いっ、近いんです距離が!!
「フリード……様?」
こんなにも、私に名前で呼ぶことを強要してきたのに、名前で読んだ途端にやたらと距離が離れてしまう。
いったいどうしたらいいというのか。
「こんな現実があって良いのか。幸せすぎる」
少し離れた場所で、しゃがんでしまった兄は可愛いけれど、せっかく想いを伝えたのに兄のはっきりした返事はまだない。
それでも、兄は本当に可愛らしくて、カッコよい。
兄は、極秘資料管理官の仕事を同僚さんに全振りして、宰相候補として働き出した。
もちろん、ディオ様の抜けた穴は大きくて、兄は騎士団でも活躍している。
やっぱり兄は、過労で倒れないかと心配になるくらい忙しい。
しばらくしゃがみ込んでいた兄が、ようやくこちらへと戻ってきた。
確かにそろそろ時間だ。
今年も兄と手を繋いで卒業式へと向かう。
「――――リアナも卒業か。流石に婚約が決まってないのはまずいよな?」
「お兄様こそずっと決まってないじゃないですか」
「俺には幼い頃から、たった一人心に決めた人がいるから良いんだよ」
兄には幼い頃から好きな人がいたらしい。
衝撃の事実だ。
「はぁ……。どうしてそんな顔するかな?」
「え?」
兄は私の手に口づけを落とした。
そして、青い宝石がついた金色の指輪を私の環指にはめる。
「父上から許可もいただいた。今日、卒業式の後に発表されるから」
「え?」
「だから、もう兄と呼ばないで?」
時々兄はとても強引だ。
卒業式の後に、王太子とディルフィール次期公爵、二人の婚約が決まったと電撃発表された。
「「聞いてない!!」」
何も知らされないままに二人の隣に立たされたフローラと私。
私たちの声だけが会場に響いた。
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