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三年目の武闘会

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 青く高い空の下、今年も武闘会が取り行われる。
 今年も恒例の、一年生同士の試合から幕が切られた。

 ディオ様の弟君は首席だった。この学園では学業がトップなだけでは、首席になるのは不可能だ。
 かなり腕も立つということだろう。楽しみだ。

「リアナ様!今日も正々堂々がんばりましょうね!」

 そして、今年も私とフローラはお揃いの聖女服に身を包んでいる。
 たぶん、二人並ぶと相当目立つことだろう。

「去年は、ライアス様に負けた上に不戦勝にさせてしまいましたから、絶対本戦を楽しむ所存です!」

「そうね、楽しみましょうフローラ」

「……それに、戦いに勝つだけが強さじゃないって、リアナ様が教えてくれたから」

「え……?」

 最近聖女としても活躍しているフローラ。支援魔法を使って味方を助けたという噂もちらほらと聞く。ドラゴンを素手で倒したとか、フェンリルをソロで倒したとかいう武勇伝の方が断然多いけれど。

「――――あと、一年生の中に素敵な人を見つけたんですよ」

 頬を染めたフローラの、ピンクブロンドの髪が揺れる。
 聖女の白い衣装を着て微笑むフローラ。これを見て恋に落ちない人っているのかしら。

 でも、たぶん素敵な人というのは強い人と同義に違いない。

「そんなに強かったの?」

「強いなんてものじゃないんです!底知れない強者の風格がにじみ出ているというか……。ほら、その人の試合が始まりました!一緒に見ましょう?」

 始まった試合、今年もギャラリーは多い。
 フローラが強いと言っていた人は、ディオ様の弟君、トア様だったようだ。
 弟君は学年首席だ。学業だけでなく武術も秀でているのは間違いない。

 弟君の剣技は兄ゆずりなのだろうか。まるで弧を描くように振るわれる剣筋がとても美しい。
 そして、あっという間に対戦相手を打ち負かした。
 たしかにとても強い。
 でも、底知れない強者と言われると……?

 そう思いながらフローラの方を見ると、なにやら珍しく難しい顔をしている。

「フローラ、どうしたの?」

「いえ、まったく本気を出していないようなので、不思議だと思いまして」

 たしかに、そういわれるとトア様は、なにかしらの制約をかけて戦っているような気がしないでもない。
 フローラが言うのなら、それがおそらく事実なのだろう。

「あ、ライアス様」

 遠くの方からライアス様が、フローラのもとに走ってくる。
 友情なのか愛なのか未だにはっきりしないながらも、ライアス様って本当にフローラが好きだよね?

「フローラ、準備運動に少し付き合え」

「いいですよ!それではリアナ様、また後ほど!」

「ええ、楽しみにしてるわ」

 一緒に走っていく二人は相変わらず仲が良い。
 最近フローラは、強さだけでなく淑女や聖女としての立居ふるまいを学び、勝利の女神なんて呼ばれ始めているらしい。学業でも私とライアス様を追い抜く日は近いかもと思わせる成長っぷりだ。

 それなのに、いまだにライアス様の婚約者の席は空席だ。

 学園卒業までに婚約者の席が埋まらないなんて前代未聞。
 再び、ディルフィール公爵家にも婚約の打診が来たそうだが、父と兄の持っているすべての力を使って断ってくれるようにお願いしておいた。

 フローラも聖女というだけで、十分婚約者としての資格はあるのだが、公爵家令嬢で聖女にもなってしまった私の存在が王太子殿下の婚約問題をややこしくしてしまっているようだ。

 申し訳ない。とくに、第二王子に与して王位を狙うとかじゃないので、私の事はそっとしておいてほしい。

(新たな破滅ルートとかじゃないよね?)

 王太子派ですからね、我がディルフィール家は!
 私は出来るだけ早くフローラとライアス様が恋人方向に進展してくれることを今日も世界樹に祈った。
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