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武闘会二年目
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武闘会当日がやってきた。Sクラスの席に着いた私のもとに、マルクくんがやってくる。
平均よりも長身な私より低かったはずの背は、いつのまにか私のことを抜いていた。
可愛いマルクくんが、カッコいいに変わっていく。これこそ、マルクくん推しの醍醐味なのだ。堪能させていただき、感謝しかない。
「リアナ様、今日の戦い見ていて下さいね?」
「うん、応援しているね?ところで、なんだかますます強くなった?」
「――――ロイド様に稽古をつけていただきました」
なんだか、マルクくんのつぶらな瞳が、その言葉を発したとたんに光を失った。この瞳のマルクくんを私は知っている。
(マルクくんのバッドエンドにしてコアなファンにとってのトゥルーエンド。ヒロイン閉じ込めマルクくんエンドの光を失った瞳?!)
いったい、ロイド様は彼にどんな稽古をつけたのだろうか。それについては、あとでフローラに確認しなくてはなるまい。
「障害になるものは全部取り除いて見せる」
「え?!」
その後続く言葉って……あれですか。『ずっと見ているだけだった、あなたにたどり着くためにすべてを』ってやつですか?!……いや、まさか。
「ずっと見ているだけだった、あなたにたどり着くためにすべてを」
そのまさかだった!!え?嘘でしょう。なんでマルクくんがその台詞を私に言うの?!
私は動揺を隠せない。マルクくんについては、そのカッコ可愛さを遠くから眺めることはあっても、そこまでの関係でもなかったという認識だ。
「――――学年優勝は、いただきます」
「え?――――宣戦布告ですか?」
「宣戦布告です!」
私の頬は、自分のあまりにも恥ずかしい思い違いに強い熱を帯びる。つまり、去年の武闘会でマルクくんを倒した私に、宣戦布告をしに来たということなのね?!
「負けたままでは、本当に見ているだけになってしまいますから」
マルクくんの瞳が、熱を帯びている気がする。それって、今度はどういうことなのかしら。また、何か秘められた意味があるのかしら。
その時、グイッと腕を掴まれて体が傾く。驚いて振り返った先には兄がいた。
「……リアナ」
「お兄様!」
公務を抜け出せないと嘆く父に代わり、忙しい仕事の合間を縫って兄は応援に来てくれた。
しかし去年の武闘会で伝説と化した兄は、会場に現れたとたんに男女問わず生徒や父兄に囲まれてしまったのだった。
その人の輪から、やっと抜け出てきたらしい兄は、珍しく疲労をにじませているように見える。
「フリード・ディルフィール管理官殿、本日はご機嫌麗しく」
「ああ。久しぶりだな、マルク」
あまり絡みはなかった気がしたこの二人に、実は交流があったのだろうか。意外な事実に胸が高鳴る。
兄とマルクくんが声をひそめて二人で話している姿。文官と騎士団長推しの私だが、これはありなのではないだろうか。
「先日の情報提供感謝する」
「いいえ、リアナ様をお救いするためですから」
(まさかの私絡みでの交流ですか?!)
そういえば、マルクくんの家は平民とはいえ大陸有数の商家なのだった。その情報網は、大陸中に張り巡らされ、高位貴族ですら一目置いている。
「あの……マルクくん?」
「リアナ様は、ご心配なく。これはれっきとした取引ですから」
そう答えてくれたマルクくんに安心したいところだが、なぜかその瞳は光を失ったままなのだ。どんな取引をしたのか、とても心配になる。
「あの……お兄様?」
「リアナが心配することはない。仕事の範疇だ」
いや、私絡みだってさっき言ってましたよね?お兄様、公私混同したらダメだと思います。
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