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自称優勝候補たち

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 兄と私は今日も手を繋いで登校する。もう、誰もこちらを見てこない。『ああ、いつものか』と思われているに違いない。すっかりブラコンにシスコン兄妹として学園認定されてしまったようだ。

 まあ、兄が大好きなのは事実なので構わないとも思う。家族が仲良しなのは良いことなのだ。

 学園に着くと、ディオ様が駆け寄ってきた。

「おはようリアナ。その夏服、リアナのためにあるほど似合うね!――――今日は優勝してみせる。リアナに勝利を捧げさせて」

 そんな感じの内容を、ちょっとライトに兄からも言われました。でもお二人とも同じ学園でしかも同じ学年なのでどちらも優勝するのは無理ですよね。

「優勝は俺がいただく」

「フリード、君がそこまでやる気なのも珍しいね?」

 なんだかライバル二人が見つめあってますよ!二人とも美形で背が高くて、しかも金髪と黒い髪。
 すごい絵になる。絶対これ、スチルになるやつだわ。この目に焼き付けておくべき瞬間です。

「リアナは楽しそうだね?」

 ディオ様が笑顔を向けてくる。

「楽しいです!」

 ディオ様も兄も優勝したいなんて、青春を謳歌していてとても良いと思います。それに、もっと見つめあっていてくれて良いんですよ?

「リアナ様!」

 フローラが、こちらに向かって走ってくる。一目見るだけで上機嫌なのが丸分かりだ。

「フローラ!」

 フローラは、ジャージ姿だ。ジャージ、この世界にもあるんだね。何だか心がほわっとする。さすがヒロイン。

「私、今日は優勝しますから!応援していてください!」

 今日は優勝宣言を多数受ける日だわ。……でもね。

「悪いけど、優勝は私がいただくわ!」

 ふふふ。今の台詞、ちょっと悪役令嬢っぽかったかもしれない。私だって、トレーニングルームで毎日鍛えてきた。入学試験の時の私ではないのだ!

「おいおい、優勝は俺に決まってる。そして来期の一年の首席も俺だ」

 案の定、寂しがりのライアス様まで優勝宣言に加わってきた。そうね!正々堂々戦いましょう。

 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 今日はクラスごとに席が用意されている。フローラはまだライアス様とどちらが優勝するかで言い争っていたので置いてきた。
 着替えを済ませて一年のSクラスの席に着いた私に、青い髪と金の瞳をした男性が声をかけてきた。

「おはよう、ディルフィール公爵令嬢殿」

 ん?どこかで見たことがあるお方ですね?バッジの色から二年生であることがわかる。
 青みを帯びた髪の毛が綺麗です。……でも、誰だっけ?

 記憶の糸を紐解いていく。

(あっ!)

 攻略対象の現役学生にして騎士団所属、ランドルフ・リーフディア先輩!

「ごきげんよう。リーフディア侯爵令息様。でも、同じ学園の後輩です。そんな堅苦しく呼ばずとも良いですわ」

「ああ、助かる。ディルフィールと呼んでも?俺のことはランドルフとでも」

 あら、苗字で呼ぶのね?新鮮だわ。

「わかりました。ランドルフ様?」

 そういえば、物語の初めの頃のランドルフ先輩は遊び人設定なのだった。気づけば、周囲の女子たちの目線が私に突き刺さっている。

「いや、以前の騎士団の乱闘……ゴホン。総当たり訓練だが、俺は非番で参加できなかった。話に聞いてディルフィールと戦うの、楽しみにしていたんだ」

 ランドルフ先輩。乱闘って言っちゃダメですよ!そう、前回の騎士団総当たり戦に発展したあれは、父の政治的努力により訓練ということになっているのだ。

「そうだったんですね!よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく?またあとでね?ディルフィール」

 ランドルフ先輩は、爽やかに去っていった。しかも学生なのに現役騎士なんて。モテモテなのわかる感じだったわ。
 そうなると、ディオ様なんてどれだけモテるのかしら?そんなことを考えると少しだけ今日も、心臓がチクチクとした。
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