損益計算いたします。

miyumeri

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「あんたのせいで、全部バレちゃったじゃない!どうしてくれんのよ!」

裏階段に呼び出され、お局様に責め立てられている私は転職1年目のOL。
経理課に配属になり、真面目に仕事をしているうち 
ちょっと気にかかる取引内容が目に止まった。
上司と担当部署に問い合わせ いろいろ調べているうちに、
営業アシスタントが”何やらおかしな動きをしている“と噂がたった。
噂の当人は在職20年のお局様。そう、いま私の目の前で激怒してる人。
どうやら先程、経理部長と営業本部長に呼び出され
お金の動きを問い詰められたようだ。
そこで私の名前が出たらしく、裏階段に呼び出された。
いや私が何かしたわけではない。
ただ、お金の動きがおかしい取引を上司に質問しただけだ。
たかだか転職1年目の女子社員に、何ができるというのだろう?

「あんたが見つけなければ、絶対ばれなかったのに。
 これじゃ私、専務に捨てられちゃうじゃない!」

おぃおぃ、専務もグルですか。お局はトカゲの尻尾きりされちゃったのね?

「ちょっと!何とか言いなさいよ!!」

踊り場で力いっぱい肩を押された。脳内を走り回るトカゲのイメージのせいで
ぼっとしていた私の足元が大きくぐらついた。

「え?ちょ、ちょっと・・・」

私は、そのまま階段の一番下まで落下した。強く打った頭が痛い。
なんだか目の前が暗くなってきたし、少し動かした頭の下は
ぐっしょり濡れている感じがする。

「や、やだ。私は知らないわよ。あんたが勝手に落ちたんだからね!」

そう叫んで裏階段から逃げ去るお局。おい、階段から落としておいて放置ですか。
さすが長年横領するような人ですね。
ポッケのスマホは録音モードになってるから 証拠はバッチリ。

あー、目の前がどんどん暗くなる。
きっと大怪我なんだろうなぁ。転職1年目だから有休そんなにないんだけどなぁ。




次に目が覚めた時、私はやはり階段の下で倒れていた。
しかし、タイル仕様の裏階段ではなく
赤い絨毯が敷かれているゴージャスな階段の下に
私は倒れているようだ。周りにはドレスや礼服の男女が立っており
メイド服の女性が私の手を握り、泣きながら呼びかけている。
朦朧としながらも階段上を見ると、
真っ青な顔の超イケメン男子と 泣きそうな顔の童顔巨乳女子。
どうやらこの二人が私を突き落とした犯人らしい。

人混みがモーゼ状態になり
そこから強面ダンディおじ様がすごい勢いで近づいてきた。

「殿下、この状況をご説明いただけますか?
 なぜ、あなたの婚約者のわが娘が階段下で倒れているのですか?
 そして、そんな状況にも関わらず 殿下はそこの女を腕にぶら下げて
 なぜ階段上から見下ろしているのですか?」

「そ、それは・・・」

「侯爵様、アンソニー様を責めないでください!
 アンソニー様はそこのイオナ様から私を守ろうとして、手を払っただけです。
 そうしたら、イオナ様が自分から階段を飛び降りたんです。」

「ほう、わが娘が自分から階段を飛び降りたと。なんのために?」

「そ、それはアンソニー様に同情されたくて」

「こんな大怪我をしている人間を見て、そんなことが言える女を
 殿下はなぜ守っているのですか?」

「侯爵!彼女は僕の最愛の女性、マリアンだ。女などと見下すな!」

「そうですか、婚約者がいるにもかかわらず最愛の女性ですか。笑わせる。
 もう結構です。娘を医者にみせねばなりません。下がらせていただきます。
 しかし、侯爵家の名に懸けてこのままでは済ませませんので、ご覚悟を。

 衛兵、ここにいる人間すべてに聴取を。
 そこの女の親にも この事件を連絡するように。
 文官、陛下に謁見の申し込みを至急で頼む。
 娘を医局に運び次第、陛下にお会いする。
 殿下とそこの女にも事情を聴いておくように。いいな」

「「「はっ。」」」

私は、どうやら父である強面おじさんに抱きかかえられ、医局に向かうらしい。
その間、ひどい頭痛のなかイオナとしての記憶が次々に戻ってくる。

私の記憶では、
殿下があの童顔巨乳女を連れ、執務室から出てきたところに鉢合わせ。
厳しい王子妃教育を受けた帰りに、鼻の下を伸ばした婚約者が
童顔巨乳女と部屋から出てきたのを見て
冷静に突っ込む私に、動揺しながら言い訳をする殿下。
そして殿下の陰からほくそ笑む童顔巨乳女。
女に家名前を聞くと

「どうして・・・あれだけいじめをされていたのに・・・
 初めて会うような言い方をするんですか?
 この前だって私の頬をぶったくせに!」

と大嘘をつかれ、茫然としていると

「なんだと!マリアンのかわいい頬を打っただと。」

と、叫び私の肩を押す殿下。あまりの勢いに後ろに倒れる私。
ここは階段すぐそば。私は階段下に真っ逆さまに落ち、肩を強打し意識朦朧。
童顔巨乳女が、自分が落ちたような叫び声をあげたせいで人混みができるが
だれも怪我人を助けないという状況で、メイドが駆け寄り私の意識覚醒した と。

医局に私を届けると、侯爵はすぐいなくなった。
さっき謁見すると言っていたから、王様のところに行ったのだろう。
娘から事情を聴いていったほうがよかったのでは?と思ったが、
それほど仲の良い親子で会った記憶はないので家の立場のほうが大事なのだろう。
私は肩から背中にかけて強打したための打ち身と
突き落とされた時にひねった足首の捻挫が重症と診断され
2・3日医局に入院し、その後侯爵家で安静にすることとなった。

父は翌々日に医局にきて、怪我人の娘に事情聴取をし始めた。

「今回の件で、お前と殿下の婚約が白紙になりかけている。
 家としては、破棄をして慰謝料をもらいたいところだが
 殿下はお前があの女をいじめていたと言っている。
 おまえはそんなことをしていたのか?」

「そんなわけないじゃないですか・・・
 いじめの証拠は提出されましたか?」

「いや、あの女の証言だけだ。」

「では、私がいじめていない証拠をお出しすればよいのですね?」

「お前の友人の証言では弱いぞ?口裏を合わせていると言われかねない。」

「大丈夫です。証言者は王室ですから。」

「どういう意味だ?」

「私は、彼女に会ったこともありません。
 ということは学院の上流貴族棟の生徒ではないでしょう。
 私は王子妃教育のため、
 朝は王家派遣の教師が門の前まで迎えに来て上流貴族棟に通学。
 授業が終われば、上流貴族棟の前から門まで教師が付き添い
 どこにもよらずに馬車で王宮に行きます。
 それは入学当日から1日も欠かさず行われています。
 学院内では爵位を貴び 上流下流を明確に分けていますので、
 上流貴族棟に下流貴族は絶対に入れません。
 そして、最近は王子妃教育が多岐にわたるため、学ぶことが多く学院に行かず
 王宮に朝からいることも多々あります。
 それは、王城の出入管理簿を見ていただければはっきり致します。
 彼女は、いつ暴力を振るわれたと証言しているのでしょう?
 私の行動記録にそんな時間は隙間もございません。」
 
「なるほど。あの女は男爵家であるから、お前とは会うこともかなわないな。」

「はい、ただ・・・殿下といつお会いになったのかは気になります。
 殿下に学院で会えたとしたら、私にも合う可能性が出てきますので。」

「いや、殿下はお忍びで城下に行った際にあの女に会ったと言っていた。
 お前は一切城下など行っておらぬだろう?」

「はい、そんな暇はございません。」

「では、破棄となるよう証拠を集めよう。」

「あ、侯爵様・・・じゃなかった。
 お父様。王子婚約者の年間予算はご存じですか?」

「は?まぁ、宰相であるから知ってはいるが、それがどうした?」

「よかった、国の予算資料を取り寄せなくて済みそうです。
 私、妥当な慰謝料を自分で計算してみようと思いまして。」

「慰謝料を自分で計算?」

「はい、婚約者費用から算出した数字で損益計算書を作成し
 侯爵家に損が出ないように請求しようかと。」

「そ、損益計算?なんだそれは?」

「あ、こちらはまだ複式簿記ではないのですか?」

「お前は頭も打ったのか?」

「まぁ、その話は追々・・・
 取り急ぎ侯爵家に帰ったら家の財務帳簿を見せていただいても?」

「・・・好きにするがよい。」

「ありがとうございます。俄然やる気が出てきました!」

「お前のそんな笑顔を見るのはいつぶりか・・・思うようにやりなさい。
 ミランにもすべてを開示するよう手紙を書いておく。」

「助かります!さぁ、いくら請求しようかなぁ♪」


お父様は、複雑な表情で職場に戻っていった。
翌日侯爵家に戻ると、お父様の執務室に10年分婚約期間中の国家予算内訳と
侯爵家財務帳簿が揃っていた。
この世界にはどうやら計算機がないようなので
取り急ぎ、お抱え技師にそろばんを作ってもらった。

そして大量な書類を参考に、慰謝料を計算した。
まず、私が王子妃教育にかけていた時間を給与換算し
王城に通うための馬車の費用、ドレス仕立て代、護衛の人件費などを加算。
給与は、妃教育の過酷さに比例させ上乗せもした。これを支出とする。
収入は、王家から公爵家に払われる婚約者費用と殿下からの贈り物。
贈り物は現金に換算し収入金額を弾き出す。
収入から、支出を引くと・・・あら大変!侯爵家の持ち出しが結構な額に!
これじゃ丸赤だわ。
この計算で出された数字は、あくまでも経費部分だ。

次に、ここに婚約が破棄された場合の慰謝料を加算していく。
婚姻まで予定では後2年あるので、2年分の侯爵家が受け取る婚約者費用。
それと王子妃になった時に払われるはずの王家からの祝金。
各貴族からの祝金は、私の直近の誕生会にいただいた金額x3とした。
まぁ妥当なところだろう。
それと、数字化するのは難しい私の価値。
王子との婚約を破棄したために受ける 私の価値下落金額の算出の参考にしたのは
近々で婚約破棄のあった 公爵家と伯爵家の間で支払われた慰謝料金額とした。
王家と侯爵家の爵位差と似ていたし、公爵家嫡男の浮気が原因だったので
婚約破棄理由も合致する。
ただ侯爵令嬢と伯爵令嬢を同等とするのは無理なので、慰謝料金額x2とした。

そんな計算を楽しくやっていた私は、あることに気が付いた。
婚約者費用の中に”贈答品費用”項目があるのだが、
ここ2年程通常の3倍もの金額が充てられている。
しかし、この2年 私はドレスや宝飾品、花束など一切殿下から送られていない。
なのに、計上されている金額は莫大・・・。
童顔巨乳女と殿下がイチャイチャしだしたのは2年前から。
もしかして、あの童顔巨乳女に贈られている?
だとすると、これは横領。
本来愛人に贈り物をするならば、殿下費で賄わなければならない。
あくまで殿下個人の趣向として扱われるべきもの。
ふふふ・・・この金額も慰謝料に入れちゃお!
あら、”交際費用”も2年前から爆上がりしてる。
王子妃教育が忙しくて、王子とのお茶会すら回数が減っているので
例年金額以下になってもいいはずなのに、爆上がり・・・。
これもあの巨乳ちゃんとのお食事費用なのでは?
これも慰謝料に追加っと!

そんなこんなで慰謝料金額は国家予算の半分にまでなってしまった。
これは一括では回収できないなぁ。お父様に相談しよう!

私はお父様の職場にお手紙で、慰謝料算出が終わったこと、
金額が今年の国家予算の半分になったこと、
殿下が婚約者費用を不当に愛人に使っていたこと、
を伝えた。
すると、手紙を出したその日の晩に血相を変えたお父様が自宅に戻ってきた。

「イオナ、手紙の内容は本当かっ?」

「はい、こちらが徴憑書類と参考資料になります。
 あ、計算しずらいでしょうから このそろばん使ってください。」

「なんだこれは?いや、いまはいい。
 慰謝料金額のことではなく、殿下の横領の件だ!」

「はい、これがその証拠になります。
 ここの贈答費用、2年前から私は殿下から贈り物もされていません。
 お茶会も月1でしか開かれておりませんから
 3年前の交際費用との差がそのまま横領金額かと。
 以上の2点分の金額合計がこちらになります。」

「・・・なんと2年でこんなにもか!財務省は何をしておるのだ。」

「たぶん、私に贈るという殿下の言葉を信じてらっしゃるのでしょう。
 そういえば文官の中に浮気相手の親族がいたはずです。」

「家ぐるみの犯行か。侯爵家を舐めおって。陛下に直訴し処罰してやる!」

お父様は計算書類を握りしめ、王城に飛び出していかれました。
深夜ですのに、まだまだお若いですね。王城はブラック企業ですか?


その後、殿下の横領と不貞が理由の婚約破棄が発表され 
同時に陛下は王子殿下を廃嫡された。
陛下のお子様は一人だったので、年の離れた王弟が王太子とされた。
廃嫡された王子殿下は、あの童顔巨乳女の男爵家に婿入りさせられた。
その上で、男爵家は爵位を下げ騎士伯とされた。
つまり、あの女の親が死亡すると元殿下夫婦は平民になる。
王子から平民に一直線に降下するのだ。あの人が耐えられるとは思えない。
あの女も”王妃になれないなら結婚したくない”と喚いていたが、
王命の結婚を辞退などできるわけもなく
生まれた時から贅沢しかしたことのない男を夫に持つ最悪な未来しかなくなった。
もちろん殿下から童顔巨乳女に贈られた高級品はすべて売り払われ、
侯爵家への慰謝料に充てられた。まぁ、全然足りてないんだけどね。
残りは分割で返済中。年15%の分割手数料付きで。
貴族のうちに全額返済できるといいね。
平民になったら、たぶん食い扶持なくなるからね。

王家からの慰謝料も、ほぼ私の計算通りの金額が認定された。
国家予算の半分。王子殿下の持ち物を売りさばいても全然足りないので
こちらも分割になった。

「この国の宰相として、イオナ 年15%の分割手数料は高すぎる!
 臣下として手数料は取らないでくれないか。」

「いくらお父様でもそれは聞けません。
 男爵家もその手数料を支払っているのです。
 国の代表が手数料を踏み倒しては名折れではないでしょうか?」

「しかし、慰謝料の金額が違いすぎるではないか。
 男爵家は、殿下からの贈答品の賠償と同額の慰謝料。
 こちらは国家予算の半分だぞ?年1割の予算を返済に充てれば、国家運営は滞る。
 5分の予算で返済していけば、完済まで20年。手数料金額だけで莫大。
 宰相としてこれは認められない。」

「では、慰謝料の半分を侯爵家の納税金額から差し引いてみてはどうでしょう?
 国は返済期間が半分になりますし、侯爵家は納税金額が大幅に減ります。
 私を女侯爵にしていただければ50年間の分割でいいですよ?」

「うーーーん、それしかないか。
 まぁ女侯爵の前例はないが、陛下に直訴し是が非でも認めていただこう。
 当家としても、税が少なくなるのは益が多いしなぁ。」

「では、しっかりと契約書を交わしましょ!
 宰相として被害者令嬢と契約をしてくださいませ。」

こうして私の慰謝料計算は決着した。めでたしめでたし。
あ、元王子夫婦からの返済は1年で滞りましたので、
サクッと借金奴隷になっていただきました。
元王子は金鉱山の鉱夫として、童顔巨乳女は鉱夫専用の娼婦として働いている。
もちろん、奴隷としての売却金では返済金額に届かなかったので
給料天引きで返済してもらっている。
それでも、あと10年くらいはかかるはずなので頑張って働いていただきたい。

私は、その後この国初の女侯爵になり 
そろばんや複式簿記、PL BSなどを広め財務の女神と呼ばれるようになった。
財務管理がしっかりしたおかげで国の財務体制は非常に良好になり、
余裕が出た分を返済に回して、慰謝料は25年で完済とになった。
階段から落ちて死亡した前世では、たぶん経理係長にもなれなかっただろう私が
財務のエキスパートになれちゃった今世。
痛い思いの対価としては、まぁ等価かな。

そうそう、一番“益”だと思ったのは、
王妃様の宝物 元殿下から初めて母親に贈られたルビーのネックレスを
借金の肩に売り払ったときにいただいた 悔し気な王妃様の顔。
さんざん王子妃教育で意地悪をされた姑予定のあのお方に、
ぎゃふんと言わせられた時の私の笑顔は 相当”悪い借金取り”顔だったはず。
数字にはできないけど、確かに”益“だったので大満足です! 








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