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第03章 バハロス帝国編
04 誠心誠意
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ノイシュタット王に全てを話した後、蓮太はエレンを探し、誠心誠意謝罪をした。
「何も知らずに散々罵倒してしまい申し訳ありませんでした」
「……ふんっ。お前なんかもう知らんっ! どこへなり勝手に行けば良いじゃないか!」
普通ならここでそんなわけにはいかないと謝罪を続けるのだろうが、蓮太は普通ではなかった。
「そっか。じゃあ達者でな。俺はもう行くわ──って切っ先を向けんなっ!?」
「本当に行こうとする奴がどこにいるっ! うっ痛っ──あぁぁぁぁぁっ!」
「へ?」
いきなりエレンが腹を押さえ苦しみ始めた。
「エレン様っ!? た、大変だっ! もう陣痛が始まってらっしゃるっ!」
「は?」
「そこの貴方! エレン様をそっと分娩室に!」
「いや、どこだよ!?」
「エレン様の部屋の隣ですっ! 早くっ! 私は先生を呼びに行きますのでっ!」
「わ、わかった」
蓮太は魔法でエレンを浮かし部屋へと運んだ。そして男は立ち入り禁止と言われ部屋から追い出されると、そこにはノイシュタット王がすでに待機していた。
「レンタ殿、エレンの様子は?」
「今にも産まれそうだと。追い出されちまったよ」
「はははっ、ワシの時も追い出されたな。あの先生はエレンを取り上げてくれたベテランじゃ。安心して任せられる」
「……そうかい」
それから数時間待つと中から先生が出てきた。
「ノイシュタット王、御子が誕生いたしましたよ」
「おおっ! ど、どっちじゃ?」
「はい、可愛い男児にございます」
「男かっ! でかしたぞっ! これでノイシュタットは安泰じゃなっ! いや、本当によくやってくれた! ありがとうっ!」
「いえ、では私はこれで。ああ、中に入っても構いませんが、赤子はまだ首が座っておりませんのでご注意を」
「わ、わかっておる。エレンの時にも散々注意されたからのっ」
王は誰よりも早く室内に駆け込み、ベッドで産まれた我が子を抱えるエレンを称賛した。
「よく男児を産んでくれたっ! さすがだエレンよ」
「はい、元気な男の子です」
「うむっ、うむっ! 名は決めたのか?」
「いえ」
そう言いエレンはジト目で蓮太を睨みこう言った。
「一応アレが父親ですし、アレと話し合おうかと」
「そうかそうか。なら後は二人で話し合うと良い。レンタよ、今日からワシらは家族じゃな! ははははっ」
そう幸せを振り撒きながら王は退室していった。
「……何か私に言う事はないのか」
「えっと……その……すまなかった。それと、産んでくれてありがとう。だが俺はエレンとは一緒にいられないんだ。今俺はエルフや獣人達の王としてエンドーサの森に国を作ってそこで皆を守っているんだ」
「……そうか」
「だからすまんっ! 俺はお前と暮らせない」
エレンは穏やかな表情になり蓮太に言った。
「わかったいる。最初から一緒になるつもりはなかったからな。私は女だ。だが国民には性別を偽り男として生きていた。それはこれからも替わらないだろう。少なくともこの子が立派に育つまではな。昔言った通り、私はこの秘密を理解してくれる貴族令嬢と身を固めるつもりだ」
「……そっか。もう俺が口を出す事はないんだな」
「いや、それは甘い」
「は?」
するとエレンは突如昔のエレンに戻った。
「お前のせいで私が受けていたドワーフとの交渉がストップしてしまったからな。お前はそれをやれ」
「……は?」
「まさか何もせずまた逃げる気だったんじゃないだろうな?」
「は、ははは。ま、まさかだろ」
「そうだろうそうだろう。そこまで薄情な奴だったらどうしてやろうかと思案する所だったぞ」
エレンはどこか憑き物が落ちたかのように変貌していた。
「と、所でだな。その子の名は?」
「そうだな。ちょうど良い事に私達の名に被っている部分がある。なのでこの子の名は【レン】にする。異論は?」
「あ、ありません」
「そうか。では今よりこの子はレンだ。レンは私に立派な王になれるよう教育する。お前などいらぬからドワーフの件を片付けたらどこへなり行って良いぞ」
「わ、わかりました」
この後、蓮太は部屋から追い出された。そしてエレンは我が子を抱え涙を流した。
「可愛い……。これが私とレンタの……。ふふっ、誰が何を言ってもレンタの子を最初に産んだのは私だ。しかし……あのレンタの動揺しまくった態度……。ふふっ、中々笑えたな。レンタは求めれば逃げる、なので多少突き放してみたが……どうやら正解だったようだ。これでレンタは私を裏切れない。どれだけ女がいようが私が一番だ! レン、早く立派な王になってくれよ。そしたら私は女に戻れるからな……ふふっ」
相変わらず真っ黒だが、そこに新たに愛情が加わったような気がするのは気のせいではないだろう。
その頃蓮太はノイシュタット王と面会し、ヴェスチナのドワーフの件を自分が解決しにいくと伝えていた。
「おおっ、レンタが行ってくれるなら心強い! 早速父親として働いてくれるのじゃな!」
「は、はぁ。で……どこに行けばドワーフの偉い奴と会えますかね」
「うむ。ヴェスチナの旧王城に大使がいる。その者に詳しく話を聞くが良い」
「わかりました。なら俺も色々と忙しいのでサクッと解決してきますよ」
「うむっ。エレンの事はワシに任せておけ。その代わりにレンタは何としてもドワーフの首を縦に振らせるのじゃ」
「頑張ってみますよ。じゃあもう行きます」
「健闘を祈る」
そうして蓮太は旧ヴェスチナ王国、今はノイシュタット王国ヴェスチナ領に向かった。
「ちくしょう……。これが安易に手を出しまくっちまった結果かっ。俺ののんびりスローライフはどこいっちまったんだよぉぉぉぉぉっ! こっちに生まれてから働いてばっかりじゃないかっ! シルファやリージュもその内産むだろうし……。さらには魔族や勇者まで! どうせ現れんなら勇者のいる国、神聖国ナーザリーに出ろよなっ、ちくしょぉぉぉぉぉっ!」
蓮太が叫びながら空を爆走している頃、その神聖国ナーザリーは滅亡の危機に瀕していた。
「くっ、まさか魔族が群れでやってくるなどっ! このままでは結界が破られてしまうっ!!」
「大司教様っ! 勇者様方と聖なる武器の転送が完了致しましたっ!」
「そ、そうかっ! 勇者達にはちゃんと伝えたか?」
「はい。転送された先の国で勇者と名乗り教会の名を出し保護してもらうようにと」
「……うむ。ならばもう思い残す事はない。勇者ほどではないが私達も聖なる力を扱える。さあ、結界が破られたら最後の戦いに向かうぞ」
「はっ! 最後まで抗いましょう!」
そして神聖国ナーザリーを包んでいた結界が無数の魔族により破られた。
《ようやく破れたか。さあ、勇者と聖なる武器を出してもらおうか。大人しく差し出すなら苦しませずに楽にしてやろう。ふはははははははっ!!》
「誰が魔族の言葉になど従うかっ! 欲しいならまず私達が相手になろうっ! 不浄なる者に神の裁きを与えてやるわっ!!」
《神だぁ? ははははっ、神の時代などもう終わりだ! 我ら魔族に新しい王が誕生したのだ! 魔王様はまず手始めに人間界を支配してやると仰られた。これより新しい新たな魔族の歴史が始まるのだっ! 殺れ》
《《オァァァァァァァァッ!!》》
「……神よっ!!」
この数刻後、神聖国ナーザリーは魔族の手により陥落した。だがいくら探せど魔族の求める者は見つからなかった。
《なに? 勇者も聖なる武器も見つからないだと?》
《はっ。地下に転送魔術を使った形跡がありましたので……恐らくどこかに飛んだかと》
《ちっ……》
魔族は祭壇を破壊し、そこに禍々しい玉座を置き座っていた。
《いかがいたしましょうか》
《探せ。だが慌てなくても良い。今魔王様は反抗勢力を従えるために魔界で暴れていらっしゃるからな。まだ時間はある。その間になんとしても勇者と聖なる武器を手に入れるのだ!》
《ははっ!》
ついに魔族が人間界で牙を剥き始めた。神聖国ナーザリーを瞬く間に滅亡に追いやった魔族は勇者と聖なる武器を探すため、その手を近隣諸国へと向け、動き始めるのだった。
「何も知らずに散々罵倒してしまい申し訳ありませんでした」
「……ふんっ。お前なんかもう知らんっ! どこへなり勝手に行けば良いじゃないか!」
普通ならここでそんなわけにはいかないと謝罪を続けるのだろうが、蓮太は普通ではなかった。
「そっか。じゃあ達者でな。俺はもう行くわ──って切っ先を向けんなっ!?」
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「へ?」
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「エレン様っ!? た、大変だっ! もう陣痛が始まってらっしゃるっ!」
「は?」
「そこの貴方! エレン様をそっと分娩室に!」
「いや、どこだよ!?」
「エレン様の部屋の隣ですっ! 早くっ! 私は先生を呼びに行きますのでっ!」
「わ、わかった」
蓮太は魔法でエレンを浮かし部屋へと運んだ。そして男は立ち入り禁止と言われ部屋から追い出されると、そこにはノイシュタット王がすでに待機していた。
「レンタ殿、エレンの様子は?」
「今にも産まれそうだと。追い出されちまったよ」
「はははっ、ワシの時も追い出されたな。あの先生はエレンを取り上げてくれたベテランじゃ。安心して任せられる」
「……そうかい」
それから数時間待つと中から先生が出てきた。
「ノイシュタット王、御子が誕生いたしましたよ」
「おおっ! ど、どっちじゃ?」
「はい、可愛い男児にございます」
「男かっ! でかしたぞっ! これでノイシュタットは安泰じゃなっ! いや、本当によくやってくれた! ありがとうっ!」
「いえ、では私はこれで。ああ、中に入っても構いませんが、赤子はまだ首が座っておりませんのでご注意を」
「わ、わかっておる。エレンの時にも散々注意されたからのっ」
王は誰よりも早く室内に駆け込み、ベッドで産まれた我が子を抱えるエレンを称賛した。
「よく男児を産んでくれたっ! さすがだエレンよ」
「はい、元気な男の子です」
「うむっ、うむっ! 名は決めたのか?」
「いえ」
そう言いエレンはジト目で蓮太を睨みこう言った。
「一応アレが父親ですし、アレと話し合おうかと」
「そうかそうか。なら後は二人で話し合うと良い。レンタよ、今日からワシらは家族じゃな! ははははっ」
そう幸せを振り撒きながら王は退室していった。
「……何か私に言う事はないのか」
「えっと……その……すまなかった。それと、産んでくれてありがとう。だが俺はエレンとは一緒にいられないんだ。今俺はエルフや獣人達の王としてエンドーサの森に国を作ってそこで皆を守っているんだ」
「……そうか」
「だからすまんっ! 俺はお前と暮らせない」
エレンは穏やかな表情になり蓮太に言った。
「わかったいる。最初から一緒になるつもりはなかったからな。私は女だ。だが国民には性別を偽り男として生きていた。それはこれからも替わらないだろう。少なくともこの子が立派に育つまではな。昔言った通り、私はこの秘密を理解してくれる貴族令嬢と身を固めるつもりだ」
「……そっか。もう俺が口を出す事はないんだな」
「いや、それは甘い」
「は?」
するとエレンは突如昔のエレンに戻った。
「お前のせいで私が受けていたドワーフとの交渉がストップしてしまったからな。お前はそれをやれ」
「……は?」
「まさか何もせずまた逃げる気だったんじゃないだろうな?」
「は、ははは。ま、まさかだろ」
「そうだろうそうだろう。そこまで薄情な奴だったらどうしてやろうかと思案する所だったぞ」
エレンはどこか憑き物が落ちたかのように変貌していた。
「と、所でだな。その子の名は?」
「そうだな。ちょうど良い事に私達の名に被っている部分がある。なのでこの子の名は【レン】にする。異論は?」
「あ、ありません」
「そうか。では今よりこの子はレンだ。レンは私に立派な王になれるよう教育する。お前などいらぬからドワーフの件を片付けたらどこへなり行って良いぞ」
「わ、わかりました」
この後、蓮太は部屋から追い出された。そしてエレンは我が子を抱え涙を流した。
「可愛い……。これが私とレンタの……。ふふっ、誰が何を言ってもレンタの子を最初に産んだのは私だ。しかし……あのレンタの動揺しまくった態度……。ふふっ、中々笑えたな。レンタは求めれば逃げる、なので多少突き放してみたが……どうやら正解だったようだ。これでレンタは私を裏切れない。どれだけ女がいようが私が一番だ! レン、早く立派な王になってくれよ。そしたら私は女に戻れるからな……ふふっ」
相変わらず真っ黒だが、そこに新たに愛情が加わったような気がするのは気のせいではないだろう。
その頃蓮太はノイシュタット王と面会し、ヴェスチナのドワーフの件を自分が解決しにいくと伝えていた。
「おおっ、レンタが行ってくれるなら心強い! 早速父親として働いてくれるのじゃな!」
「は、はぁ。で……どこに行けばドワーフの偉い奴と会えますかね」
「うむ。ヴェスチナの旧王城に大使がいる。その者に詳しく話を聞くが良い」
「わかりました。なら俺も色々と忙しいのでサクッと解決してきますよ」
「うむっ。エレンの事はワシに任せておけ。その代わりにレンタは何としてもドワーフの首を縦に振らせるのじゃ」
「頑張ってみますよ。じゃあもう行きます」
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そうして蓮太は旧ヴェスチナ王国、今はノイシュタット王国ヴェスチナ領に向かった。
「ちくしょう……。これが安易に手を出しまくっちまった結果かっ。俺ののんびりスローライフはどこいっちまったんだよぉぉぉぉぉっ! こっちに生まれてから働いてばっかりじゃないかっ! シルファやリージュもその内産むだろうし……。さらには魔族や勇者まで! どうせ現れんなら勇者のいる国、神聖国ナーザリーに出ろよなっ、ちくしょぉぉぉぉぉっ!」
蓮太が叫びながら空を爆走している頃、その神聖国ナーザリーは滅亡の危機に瀕していた。
「くっ、まさか魔族が群れでやってくるなどっ! このままでは結界が破られてしまうっ!!」
「大司教様っ! 勇者様方と聖なる武器の転送が完了致しましたっ!」
「そ、そうかっ! 勇者達にはちゃんと伝えたか?」
「はい。転送された先の国で勇者と名乗り教会の名を出し保護してもらうようにと」
「……うむ。ならばもう思い残す事はない。勇者ほどではないが私達も聖なる力を扱える。さあ、結界が破られたら最後の戦いに向かうぞ」
「はっ! 最後まで抗いましょう!」
そして神聖国ナーザリーを包んでいた結界が無数の魔族により破られた。
《ようやく破れたか。さあ、勇者と聖なる武器を出してもらおうか。大人しく差し出すなら苦しませずに楽にしてやろう。ふはははははははっ!!》
「誰が魔族の言葉になど従うかっ! 欲しいならまず私達が相手になろうっ! 不浄なる者に神の裁きを与えてやるわっ!!」
《神だぁ? ははははっ、神の時代などもう終わりだ! 我ら魔族に新しい王が誕生したのだ! 魔王様はまず手始めに人間界を支配してやると仰られた。これより新しい新たな魔族の歴史が始まるのだっ! 殺れ》
《《オァァァァァァァァッ!!》》
「……神よっ!!」
この数刻後、神聖国ナーザリーは魔族の手により陥落した。だがいくら探せど魔族の求める者は見つからなかった。
《なに? 勇者も聖なる武器も見つからないだと?》
《はっ。地下に転送魔術を使った形跡がありましたので……恐らくどこかに飛んだかと》
《ちっ……》
魔族は祭壇を破壊し、そこに禍々しい玉座を置き座っていた。
《いかがいたしましょうか》
《探せ。だが慌てなくても良い。今魔王様は反抗勢力を従えるために魔界で暴れていらっしゃるからな。まだ時間はある。その間になんとしても勇者と聖なる武器を手に入れるのだ!》
《ははっ!》
ついに魔族が人間界で牙を剥き始めた。神聖国ナーザリーを瞬く間に滅亡に追いやった魔族は勇者と聖なる武器を探すため、その手を近隣諸国へと向け、動き始めるのだった。
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