俺のスキル『アイテム図鑑』が優秀すぎる!

夜夢

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第1章 転生

第04話 神殿へ

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 町に到着した翌朝、リクトは両親と共に神殿を訪れた。

「着いたぞ、ここが今日儀式を受ける神殿だ」
「へぇ~。立派な建物だね」

 父親は神殿と言っていたが、よく見ると少し大きな教会といった感じだった。恐らく両親もこの町で儀式を受けたため、これより大きな建物を知らないらしい。

「リクト、例えスキルを授からなくても落ち込まないでね?」
「そうだぞ? 別にスキルがなくたって生きてはいけるんだからな?」
「わ、わかってるって。二人とも心配し過ぎだよ」

 両親はスキルを持たないからこそ我が子の未来を案じていた。

「よし! そろそろ行くか。どうやら他に受ける子はいないようだしな」
「うん」

 父親が正面の扉を開き中に進む。リクトは母親と並びその後ろを歩いていった。その間も教会のテーブルやら燭台、祭壇や女神像などが図鑑に記載されていく。

(これ、こっそり実体化させなきゃ訴えられそうだな)

 女神像の製造は教会の許可が必要であり、無許可で製造した者は厳しく罰せられるのである。リクトはまだ知らないが、とある宗教国家ではこれを厳罰とし、発見された場合は即死刑となる。

 そんな事を考えていると奥の扉から温和そうな老神父が姿を見せた。

「おや、どうされましたかな?」
「朝早く申し訳ない。自分は【ミゲル村】のラットと申します。息子のリクトが昨日十二歳になりましたので儀式を受けさせに参りました」
「おやおや、そうでしたか。今日は他に予定もありませんので今から受けますかな?」
「はい。よろしくお願いします、神父様」

 そう言い、父親が神父にお布施を手渡した。中身はわからないが貧しい中でお布施を貯めるのは大変だったろう。

「確かに。ではリクト殿は私と共に儀式の間へ。御両親はそちらでお掛けになりお待ち下さい」
「「お願いしますっ!」」

 リクトは神父に従い奥にある部屋に向かった。部屋に入るとどこか神聖な空気が感じられ。

「ここは空気が違いますね」
「おや? わかるのですか?」
「えっと、何かが違うとだけしか」
「ほっほ。もしかしたら君は聖職者に向いているのかもしれませんねぇ。普通この空気の違いはわからないものなのですよ」

 そう言われたリクトは無表情を装いつつ、内心焦っていた。

《うぉぉぉいっ、やべぇっ!? 転生する時に入った空間に似てたからついうっかり口走っちまった……! も、もっと注意しなければ目立ってしまうっ!》

 リクトは自分の役割が星の文化レベルを上げる事だと思っている。そのため、目立ってしまえば国に仕官させられ自由に動けなくなるのではと危惧していた。

 そう考えている間に老神父は儀式の準備を終え、部屋の中央に立っていた。

「さて、そろそろよろしいかな? 心の準備ができましたら私の前で片膝をつき祈りの姿勢を」
「はい」

 リクトは神父の指示に従い祈りのポーズをとる。そのリクトの頭に老神父が右手をかざし、宣誓を始めた。

「女神ミュルニクスよ、我が祈りを聞き届けたまえ。そしてこの新たな神の僕に女神の祝福を……」

 そこでリクトの意識が途絶えた。

《もしも~しなのっ》
「……ん」
《もしも~し、クロダ リクト! 聞こえてるなの~?》
「はっ! こ、ここは……」

 不思議な声で意識を取り戻し辺りを見回す。そこは真っ白な空間で、目の前に少女がいた。

「あ、あなたは……?」
《私はジアースの女神なのっ。みんなはミュルニクスって呼んでるなのっ!》
「あ、あなたが女神ミュルニクス様!?」

 リクトは慌てて頭を下げた。王もそうだが、神も直視する事は許されていない。

《あれからもう十二年経ったなの。ジアースには慣れた…なの?》
「はい。貧しい暮らしでしたが俺は両親に愛され幸せな日々を過ごしておりました」
《それは良かったなのっ。で……文化レベルは上がったなの?》
「え? い、いえっ。まだ未成年で一人では村から出られなかったもので」
《え? それは困ったなの……》

 女神の雰囲気が少しピリつき、場に緊張が走った。

《人間なんて六十年もすれば死んじゃうなの。今から世界を回ってもあと四十八年しかないのっ!》
「そ、そう言われましても……。なにぶん転移ではなく転生でしたので……」
《う~ん……》

 女神は何やら不機嫌になり、リクトの頭に手を置いた。

《本当は今日発現するはずだったスキル【全知全能】は没収なのっ!》
「う、うぐっ……」

 身体に何かが抜けていく感覚が走る。

《代わりにスキル【不老不死】を与えるなのっ!》 
「ふ、不老不死!?」
《成人までは成長するけど、そこで老化は止まるなのっ! それで世界を回って戦を止めさせ、星の文化レベルを上げるなの~》
「い、戦を止める!? 俺が!?」

 リクトは我が耳を疑った。

《当たり前なの。戦は何も生み出さないなのっ。この世界では常にどこかで争いが起きてるなのっ。何故かわかるなの?》
「えっと……」

 リクトは戦争を経験しているため、ある程度の理由は察していた。

「種族の違いや経済格差、領地の奪い合いでしょうか?」
《概ね正解なのっ。まず……》

 そこからミュルニクスによるジアース講義が始まった。

 まとめると、まずジアースには人間の他、獣人、亜人、魔族が存在している。その種族間で争いが起きているらしい。種族が違えば意見も違う。だが人間は人間とも争っており、世界は危機に瀕しているのだとか。おかげで戦に対する技術ばかりが向上しており、民草の生活レベルは一向に向上していないらしい。

《リクトにはまず戦を終わらせて欲しいなの》
「む、無理ですよ! 俺一人で世界中の戦を終わらせるなんて!」
《大丈夫なの! ジアースに戻る前にあの神父に神託を授けるなのっ》
「な、なんて?」
《リクトはミュルニクスの使徒なので戻ったら世界を回らせなさいと》
「んなっ!? めちゃくちゃ過ぎる!?」

 リクトは何とか神託を止めさせようと試みたが無駄に終わった。

《心配要らないなの。リクトはもう世界一強いなの》
「え?」
《お爺ちゃんのくれたスキルは破格のスキルなのっ。この世界における人間の平均レベルは三百程度なの》
「さ、三百!? 俺……千超えちゃってますよ?」
《うんなの。平均は三百、限界レベルは九百九十九なの。人間は寿命が短いから限界レベルに到達する事はないなの。寿命が長い種族でも倍……あ、竜種はまた別なの》
「竜種……? 先ほどは入ってなかったような……」
《竜種は他者と関わらない種族なの。けど手を出されたら襲われるなの。レベルは……まだリクトは近づかない方が良いかも……なの》
「ま、まじすか……」

 レベル千超えでやり過ぎではと思っていたが、まさかの不足だった。

《とにかくなの!》
「は、はい」
《リクトは私の使徒として今すぐ旅立つなのっ! これは女神の決定なのっ! 従わなかったら酷い目にあうかもなのぉっ!》
「ひ、酷い目……とは?」
《スキル全没収の上、野良猫のメスに再転生なの》
「旅立ちますっ! 勘弁してくださいっ!」 
《にゃはっ、ありがとうなの~! 良い子良い子~なのっ》

 ミュルニクスは笑顔になりリクトの頭を撫で回した。

《じゃあ意識を下界に戻すなのっ。約束忘れたら猫転生なの。ばいば~いなのっ》
「あぁぁぁ……」

 リクトの意識は再び遠のいていくのだった。
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