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第4章 東の大陸編

06 引っ越し完了からの

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 ララァはすっかり料理の魅力に取りつかれ、アーレスがミューズ達を連れて戻る頃にはララァが作ったと思われる生け簀に大漁の魚が捕らわれていた。

「戻ったかアーレス! 見ろっ、食材を集めておいたぞっ!」
「お前……この量は……。まさか地底湖の魚全部狩ったんじゃ……」

 そう尋ねるとララァは首を横に振った。

「心配ない。これでもまだまだ一部に過ぎん。凄いなこの湖は! 魚が山のようにいるぞ!」
「……そうか! この地底湖には敵性生物がいなかったから繁殖し放題だったのか!」
「アーレス」

 ララァと話をしているとミューズが割り込んできた。

「皆荷物を抱えています。先に家まで案内してもらえますか?」
「あ、ああそうだな。ララァの件は後にして先に家を見に行こうか。家は湖底にある。一番大きい建物がミューズの家だ」
「一番大きい……ふふっ、わかってますね。私は長、つまり一番多くあなたの子を産め、そうでしょう?」

 どこか勘違いしているようだが、顔が凄い事になっていたため、アーレスは長の言葉をやんわりと受け流し、湖底に向かった。そして人魚達に家を選ばせ、最後に長を宮殿に連れて行った。

「凄い建物ね……、いったい私に何人産ませる気なのですか?」
「そうだな……」
「あっ……」

 アーレスはミューズを壁に押し付ける。

「人魚は少ないんだろ? これから定期的に孕ませにくる。長なら頑張って数を増やさないとな」
「は、はいっ! あの……私もう産卵を終えましたので排卵してます。今からお時間頂けますか?」
「……しかたないな、二時間だけだぞ」
「あぁ……はいっ!」

 二時間後、ミューズは二回目の妊娠を終えた。そして二人は再び生け簀に戻る。するとそこでララァが獲った魚を調理し、人魚達に振る舞っていた。

「隊長! おかわり!」
「あ、私ももう一尾お願いしますっ!」
「よしっ、任せろ!」

 アーレスとミューズはララァのキッチンに群がる人魚達を見て驚いていた。

「な、なんだこの光景は?」
「あなた達、なにをしているのですか?」
「あ、長様!」

 すると人魚が一人塩焼き串を持ってミューズの所にきた。 

「隊長の焼き魚めちゃくちゃ美味しいんですよ! 長様も食べてみてください!」
「焼き魚?」
「なるほどな。どうやら皆初めて食べる料理の虜になったみたいだな」
「料理? これが?」

 そこにララァが現れる。

「長様、私の焼いた魚はどうでしょうか!」
「え? まだ食べてませ……」
「では食べてみて下さいませ! 魚は焼き立てが一番美味いのです! さあさあ!」
「わ、わかりましたから急かさないで!?」

 ミューズは人魚から受け取った焼き魚にかぶりついた。

「──! 美味しい!」
「ありがとうございますっ! アーレス、あのキッチンは最高だな!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。どうやらミューズも料理が気に入ったようだな」

 ミューズはララァの焼き魚に舌鼓を打ち、瞬く間に一尾平らげていた。

「ここは良い場所ですね。今までは料理をしたくても人間に見つかる事を恐れてできませんでした。アーレス、このようは場所を与えていただきありがとう」
「気にするな。これで魚人族も魔王軍の庇護下に入った。これからは俺達魔王軍が魚人族を守る。リヴァイアサン」
《どしたの、アーレス~?》

 リヴァイアサンが水中から飛び出してきた。

「これからここがリヴァイアサンの領域となる。また遊びにくるから皆を頼んだぞ?」
《うんっ! ボクに任せてよっ。だから絶対遊びにきてね!》
「ああ、約束しよう。さて……」

 アーレスはミューズ達を見て言った。

「じゃあそろそろ行くよ。玄武達もまたお前達のように住む場所に困っているからな」
「アーレスさん」
「ん?」

 ミューズが申し訳無さそうに顔を伏せる。

「無理矢理捕縛してしまい申し訳ありませんでした」
「ああ、捕まったのはわざとだし、リヴァイアサンとも出会えた。俺は気にしちゃいないよ」
「わ、わざと? は、ははっ。やはり私達が釣ったつもりが釣られていたのですね」
「ま、俺を拘束したいなら人魚の数が足りんよ。ミューズ」
「はい」

 アーレスは手を差し出し、ミューズがその手をとる。

「これからは同胞だ。何かあったら魔王軍や俺を頼れ。何があってもすぐに力を貸そう」
「はい、私達も魔王軍のために力を振るいます。アーレスさん……いえ、アーレス様。どうか末永く私達をお守り下さいませ」

 そうして魚人族に安住の地を与えたアーレスは転移ゲートを使い、一人海底へと戻った。

「……さて、だいぶ時間を使ってしまったがここから取り戻す。まずは東へと向かい玄武達と合流だな」

 アーレスはリヴァイアサンから習った魔法を使い、海中を凄まじい速度で泳ぎながら東へと向かう。そして数時間後、アーレスは無事砂浜に到着した。

「さて、待ち合わせ場所は港町【オルニース】だったよな。それと……リヴァイアサンから滅ぼして欲しい国の名を聞いたよな……確か商業国家【ユーテリア】だっけか? ふむ……問題はこの二つがどこにあるかだよな」

 アーレスは目の前に広がる一面の砂浜を見て頭を抱えた。

「港町ってどこだ? そもそもオルニースって町の名前で国の名前じゃないよな? 玄武達はどこにいるんだ?」

 東の大陸に着いたは良いものの、そこからどこに進めば良いか迷っていた。誰かに尋ねようとも近くに人の気配はない。

「……よし、海岸を北上してみるか。港町なら海沿いにあるだろ」

 アーレスはひとまず砂浜を海に沿って北上していくのだった。
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