魔族と組んで異世界無双 2

夜夢

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第1章 始まりの章

04 魔族の事情

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    一悶着あった食事も無事に終わり、ポプリは昼間疲れたからか先に寝ると言って奥の部屋に入って行った。そして、枢は今ラピスと2人テーブルでお茶を啜っていた。

「あの、ポプリが騒がしくてごめんなさないね?あの子、久しぶりに元気な私を見て舞い上がったみたいで…。」

「いや、騒がしいのは嫌いじゃ無いから構わないよ。それより、色々聞きたい事があるんだけど…話を聞かせて貰っても良いかな?」

「話を?私が知っている話なら…。」

    枢はこの周辺の環境と他の魔族、そして、この世界について色々な話を聞いた。

    先ず、今居る地域は世界の外れと呼ばれる大陸で、大きな森が広がる辺境の大陸らしい。大陸自体はそんなに大きくは無く、国も無い。住んでいるのは魔族のみ。森に此所と似たような集落を作り、それぞれ生活しているらしい。食べ物は主にモンスターの肉や森から採れる野菜。文明レベルは低い。この大陸では貨幣の概念が無く、物々交換で取引しているとか。

「成る程、大変分かりやすい話だった。ありがとう、ラピス。」

「いえ、それにしても…同じ魔族の筈…ですよね?何にも知らないので驚きました。」

    不味い。何か疑われているか?ふむ…仕方ない。

「実は俺は孤児でな。幼い頃から森でずっと1人で生活していたんだよ。だから全然何も分からないんだ。幸い言葉は通じる様で安心したよ。」

「まぁ…。大変…だったのですね。」

「ま、まぁな。」

    ラピスは悲しそうな表情を浮かべていた。

「ら、ラピスこそ。父親は居ないのか?他に家族は?」

「主人とは死別しました…。ポプリを産んだ辺りで病に倒れ…。」

    おっふ…。空気が重いっ!

「す、すまん。」

「いえ、もう15年も経ちますし…。それより、枢さんはこれからどうなさるので?」

「?どう、とは?」

「行く宛てとか、目的とか、色々です。」

「あ、あぁ。え~と、特に決めていないな。此所に来たのも偶然だし、他の集落の場所も分からないしな。」

    ラピスは枢に言った。

「でしたら、暫くこの集落で暮らしませんか?長には明日私から話を通しておきますので、宜しければですが。」

「…ふむ。」

    枢は少し考えた。

「大陸には魔族しか住んで無いんだよな?滅び掛かってるとかは無いよな?」

「…滅び掛かってますよ。大陸に押し込められ回りは危険なモンスターだらけ、魔族は徐々に総数を減らしています。」

「なら…何故固まって暮らさないんだ?そっちの方が生存確率も上がるだろう?」

「他の集落に行くのも命懸けなのですよ。何せ森は深いですから。この周辺は比較的弱いモンスターばかりですが、少し奥に進むだけでモンスターはガラリと変わります。合流しようにも出来ないのですよ。」

    成る程な。 

「そう言う事情か。話は分かった。この集落周辺のモンスターが一番弱い、合ってる?」

「え、えぇ。」

「集めるなら…此所だな。良し!」

    枢は立ち上がった。

「明日長に会わせてくれ。考えがある。」

「考え?」

「ああ。この地に魔族の楽園を築いてやるよ。最終的には全ての魔族をこの地に集めてやる。」

「す、全て?貴方は一体…。」

「まぁ、実現するのはまだまだ先の話だがな。色々聞かせてくれてありがとう。そろそろ休もうか。俺の寝る場所ってある?」

「あ…。あ、あの…。ごめんなさない。ベッドが2つしか無くて…。1つはポプリが使ってるので…。」

「そうか、なら座ったまま寝るか。」

「だ、ダメですよ。それでは疲れがとれませんわ。あの…狭いですが私のベッドで…。」

「良いのか?見ての通り身体がデカイんだが…。」

「くっついて寝れば何とか…。あ、こんなおばさんと同じベッドなんて嫌ですわよね?困りました…。」

「いや、寧ろ有難いと言うか…御馳走様?」

「えっ?あっ、その…、私…まだ病み上がりですので…ごめんなさないね?」

「寝るだけで良いよ。何もしないさ。」

「うっ…。病み上がりの身体じゃなければ…。で、では…部屋に行きましょうか。」

    それから枢はラピスと一晩過ごした。敢えて言っておく。決して手は出していない。柔らかいモノが何度も襲い掛かって来たが、血涙を流しつつ耐えた。逆に疲れたのは言うまでも無い。

    ラピスは思った。

《はぁぁ…♪それにしても…良い身体してるわね…。同衾なんていつぶりかしら…。触っちゃおうかしら…。だ、ダメよラピス!止まらなくなるわっ!大丈夫、チャンスはまだある筈よ…。今は…当てるだけにしておくのよ…。》

    2人は悶々としながら夜を明かすのであった。

「おっはよ~!あれ…?2人とも眠そうだね?どうしたの?」

    あんな環境で碌に眠れる筈もなく、枢は寝不足を感じていた。

「い、いや。ベッドとか久しぶりでな。落ち着かなかったんだ。」

「さ、さぁ、朝御飯にしましょ!今日は長に枢さんを紹介しに行かないと。あ、素材無かったんだっけ。」

「俺が作ろう。パンと目玉焼き、サラダで良いよな?ポプリには果実水、俺達は珈琲で良いかな?」

「「珈琲??」」

「知らないのか…。ならラピスはお茶かな。直ぐに用意しよう。」

    それから枢は食事を済ませ、ラピスに案内され集落の長の家を訪れていた。

「長、ラピスです。」

「おぉ、ラピスかい。ん?元気になったのかの?」

「えぇ。昨日此方の枢さんに治療して頂きました。」

    長は枢を見た。 

「治療?主、回復魔法を使えるのかの?」

「似たようなものだ。」

「ふむ、してラピス。今日はどうしたのじゃ?再婚の報告かえ?」

「な、ななな何をっ!?」

「ほっほっほ。脈ありじゃな。主はまだ若い。頑張って同胞を増やして貰わんとなぁ。」

    枢は長に言った。 

「実は話があって来たんだ。俺は通りすがりの魔族に過ぎないが…いずれはこの地に魔族の楽園を作りたいと思っている。悪い様にはしないからどうか協力してくれないか?」

「ふむ、聞けば昨日ポプリも助けた様じゃな。とんでもなく強いらしいの。…ふむ、構わんが条件がある。」

「条件?」

    長は枢に言った。

「先ず、主の力が見たい。この集落には様々な問題がある。先ずはそれらを解決して見せよ。解決した暁には長の座を主に譲り、集落を自由にさせてやろう。楽園を作るなりなんなり好きにするがよい。」

「良いのか?簡単に余所者を信用して。」

「ほっほ。これでも人を見る目はあると思っておる。主は悪い魔族では無い。それにの、本当に楽園が出来るなら見てみたいのじゃよ。」

「そうか…。まぁ、悪い様にはしない。この集落の問題は解決してやるさ。で、問題って何だ?」

    枢は長から問題点を聞いた。

「…以上じゃ。出来るかの?」

「……少し考えさせてくれ。頭が痛い。」

「まぁ、全部とは言わん。やれるだけで構わんぞ?」

「…行こうか、ラピス。」

「あ、はい。では長、失礼しました。」

    2人は長の家を出た。 

「大丈夫…ですか?」

「ああ…。しかし…簡単にはいかなそうだなぁ…。やれやれだ。」

    枢は頭を抱えながらラピスの家へと帰るのであった。
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