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第一章 始まりの章
14 説得
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クレアの腕を掴むオウルは冷静に諭すようにゆっくりと言葉を紡いでいく。
「行かせません。クレア先輩はもう死ぬ方法をわかってるはずだ」
「な、なんの事だ」
「スキル【審判】。それが先輩のスキルだ。自死や自暴自棄で魔獣に挑み死んだ瞬間魂が消える。さらにこれまで関わってきた全ての人の記憶からも消え、転生の輪廻からも外れる。そして一番忘れてはいけない力こそが相手が現在犯罪者だった場合どんな罪を犯しているかわかってしまう力でしょう」
「し、知らない!」
「クレア先輩は見たのですね。第一王子や国王を」
「だ、だから知らないと言っている!」
クレアは耳を塞ぎたいがオウルに腕を掴まれどうにもならない。
「そう……ですか。なら教えておきます。リーズベルト公爵家は先輩の病死が発表されてから全員亡くなりお家断絶となりました」
「そ……んな……」
「オウル! 何も今言わなくてもよ!」
「いや、知っておいた方が良い。クレア先輩、このまま死んだら国王達犯罪者に負ける事になりますよ」
「……」
「ちょ、オウルって!」
オウルは制止するカインを見向きもせず真っ直ぐクレアを見て言った。
「先輩の家族は自分の犯罪を知られたと思った王族に消された。今先輩が死んだら奴らを喜ばせてしまう。審判を消す手段は考えます。そしていつか復讐してやりましょうよ」
「復……讐……」
「カインはどうか知らないけど俺はスキル一つで追放した奴らが憎い。魔王シリル様に力を見出してもらって今その力を蓄えている」
「な、なんのためにだ?」
「復讐。スキル至上主義も人類至上主義も人間や偉い奴らにだけ都合がいいシステムだ。俺はいつかそれらを破壊してやりたい。俺らみたいな追放者はそんな奴らの被害者なんだよ。審判? 国が違えばルールは変わる。魔族達から見たら六王なんか全員自分達から領土を奪った犯罪者だ。そう考えると……人間の世界だけしか知らないまま死ぬなんてばからしいでしょ?」
死んでいたクレアの目に光が宿った。
「……わ、わかった。死のうとなんてしないから離してくれないかっ」
「信じますよ」
「ま、全く……。確かに私は未だ人類圏の常識に囚われているようだ。スキルもバレた。雇うのは難しいだろう?」
「いえ全く」
「はい?」
「犯罪は犯罪ですし。審判持ちは犯罪者に対して必殺の一撃を放てるでしょう」
「レベルをあげたら可能だな」
オウルは冷静さを取り戻したクレアに言った。
「審判消したいですか?」
「な、なに?」
「それさえあれば相手が犯罪者だった場合無敵の強さを誇れます。といいますか、先輩の審判今コピーして俺も持ってます」
「な、なぁっ!? な、何をしているんだ君はっ!!」
今度はクレアがオウルに掴み掛かった。
「審判はダメだっ! 犯罪者以外を殺しでもしたり自殺でもしたら関わった全ての人から忘れられてしまうのだぞっ!」
「先輩、スキルって案外都合よくできてるモノって知ってます?」
「は、はあ?」
こうなったオウルはもう止まらないとカインは諦め傍観者に回った。
「さっきも言いましたけど魔族達からしたら人間が犯罪者なんですよ。でも人間から見たら魔族が犯罪者なんでしょう?」
「そ、そう習ったからな」
「俺もそう習いましたよ学院では。でも今は魔王シリル様や執事長のセヴァンスから人間と魔族の歴史を習いました」
「い、いやいや。それは頭ではわかるが都合が良すぎる」
「要は知識と自分の心なんですよ。知らなきゃ罪を裁けないでしょ。神様だって全てを把握できないですよ。けど裁く基準はある。いうなれば自分ルールになるのかな」
クレアは呆れていた。
「ふ、はははっ。ユニークな考え方だ。そうなったら罪を知らないままだと誰も裁けなくなるな」
「そうなりますね。審判は人間を管理する神様が面倒くさくなって断罪を人間に丸投げしたからできたスキルじゃないかと思ってるんですよね」
「神は人を裁かない。だから同じ人間に裁かせるか。一理あるな」
カインは二人の会話についていけず一度酒場に行き酒を持って帰ってきた。そして二人を肴に一杯始め出した。
「君は面白いな。学院時代同じ学年なら切磋琢磨できていただろうに」
「先輩もさすがですね。飽きるとだいたいああなるんですよ」
オウルが指さした先には酔っ払ったカインがいた。
「や~っと終わったか? もう深夜なんだが!?」
「す、すまない」
「いや、クレア先輩は良いんす。可愛いんで」
「か、かわ!?」
多少土埃で汚れ服もボロかったが元の見た目が良いクレアは美しかった。
「で、先輩。とりあえず合格で良いんで今日はオウルと城に行って風呂にでも入ってきたらどっすか?」
「そ、それはまだ無理だっ!」
「なに勘違いしてるんっすか。男女一緒なわけないでしょ……ん?」
オウルは何かを覚りカインから視線を外した。
「い、一緒なわけないよな? ほ、ほら。町の風呂も別々だし? か、川で水浴びだったら皆一緒だけどさ!」
「そ、そうだな。というか町に風呂あるのか? 浄化魔法使えるから知らなかったな」
「あるよ! なんならお前がいた宿の隣にあったよ! つーか誤魔化させねぇぞ! 魔王城はどうなんだよ! おぉぉぉんっ!?」
結局どうにか誤魔化すためにオウルは三人で酒場に向かいカインを酒で潰し、クレアを連れて城に帰ったのだった。
「行かせません。クレア先輩はもう死ぬ方法をわかってるはずだ」
「な、なんの事だ」
「スキル【審判】。それが先輩のスキルだ。自死や自暴自棄で魔獣に挑み死んだ瞬間魂が消える。さらにこれまで関わってきた全ての人の記憶からも消え、転生の輪廻からも外れる。そして一番忘れてはいけない力こそが相手が現在犯罪者だった場合どんな罪を犯しているかわかってしまう力でしょう」
「し、知らない!」
「クレア先輩は見たのですね。第一王子や国王を」
「だ、だから知らないと言っている!」
クレアは耳を塞ぎたいがオウルに腕を掴まれどうにもならない。
「そう……ですか。なら教えておきます。リーズベルト公爵家は先輩の病死が発表されてから全員亡くなりお家断絶となりました」
「そ……んな……」
「オウル! 何も今言わなくてもよ!」
「いや、知っておいた方が良い。クレア先輩、このまま死んだら国王達犯罪者に負ける事になりますよ」
「……」
「ちょ、オウルって!」
オウルは制止するカインを見向きもせず真っ直ぐクレアを見て言った。
「先輩の家族は自分の犯罪を知られたと思った王族に消された。今先輩が死んだら奴らを喜ばせてしまう。審判を消す手段は考えます。そしていつか復讐してやりましょうよ」
「復……讐……」
「カインはどうか知らないけど俺はスキル一つで追放した奴らが憎い。魔王シリル様に力を見出してもらって今その力を蓄えている」
「な、なんのためにだ?」
「復讐。スキル至上主義も人類至上主義も人間や偉い奴らにだけ都合がいいシステムだ。俺はいつかそれらを破壊してやりたい。俺らみたいな追放者はそんな奴らの被害者なんだよ。審判? 国が違えばルールは変わる。魔族達から見たら六王なんか全員自分達から領土を奪った犯罪者だ。そう考えると……人間の世界だけしか知らないまま死ぬなんてばからしいでしょ?」
死んでいたクレアの目に光が宿った。
「……わ、わかった。死のうとなんてしないから離してくれないかっ」
「信じますよ」
「ま、全く……。確かに私は未だ人類圏の常識に囚われているようだ。スキルもバレた。雇うのは難しいだろう?」
「いえ全く」
「はい?」
「犯罪は犯罪ですし。審判持ちは犯罪者に対して必殺の一撃を放てるでしょう」
「レベルをあげたら可能だな」
オウルは冷静さを取り戻したクレアに言った。
「審判消したいですか?」
「な、なに?」
「それさえあれば相手が犯罪者だった場合無敵の強さを誇れます。といいますか、先輩の審判今コピーして俺も持ってます」
「な、なぁっ!? な、何をしているんだ君はっ!!」
今度はクレアがオウルに掴み掛かった。
「審判はダメだっ! 犯罪者以外を殺しでもしたり自殺でもしたら関わった全ての人から忘れられてしまうのだぞっ!」
「先輩、スキルって案外都合よくできてるモノって知ってます?」
「は、はあ?」
こうなったオウルはもう止まらないとカインは諦め傍観者に回った。
「さっきも言いましたけど魔族達からしたら人間が犯罪者なんですよ。でも人間から見たら魔族が犯罪者なんでしょう?」
「そ、そう習ったからな」
「俺もそう習いましたよ学院では。でも今は魔王シリル様や執事長のセヴァンスから人間と魔族の歴史を習いました」
「い、いやいや。それは頭ではわかるが都合が良すぎる」
「要は知識と自分の心なんですよ。知らなきゃ罪を裁けないでしょ。神様だって全てを把握できないですよ。けど裁く基準はある。いうなれば自分ルールになるのかな」
クレアは呆れていた。
「ふ、はははっ。ユニークな考え方だ。そうなったら罪を知らないままだと誰も裁けなくなるな」
「そうなりますね。審判は人間を管理する神様が面倒くさくなって断罪を人間に丸投げしたからできたスキルじゃないかと思ってるんですよね」
「神は人を裁かない。だから同じ人間に裁かせるか。一理あるな」
カインは二人の会話についていけず一度酒場に行き酒を持って帰ってきた。そして二人を肴に一杯始め出した。
「君は面白いな。学院時代同じ学年なら切磋琢磨できていただろうに」
「先輩もさすがですね。飽きるとだいたいああなるんですよ」
オウルが指さした先には酔っ払ったカインがいた。
「や~っと終わったか? もう深夜なんだが!?」
「す、すまない」
「いや、クレア先輩は良いんす。可愛いんで」
「か、かわ!?」
多少土埃で汚れ服もボロかったが元の見た目が良いクレアは美しかった。
「で、先輩。とりあえず合格で良いんで今日はオウルと城に行って風呂にでも入ってきたらどっすか?」
「そ、それはまだ無理だっ!」
「なに勘違いしてるんっすか。男女一緒なわけないでしょ……ん?」
オウルは何かを覚りカインから視線を外した。
「い、一緒なわけないよな? ほ、ほら。町の風呂も別々だし? か、川で水浴びだったら皆一緒だけどさ!」
「そ、そうだな。というか町に風呂あるのか? 浄化魔法使えるから知らなかったな」
「あるよ! なんならお前がいた宿の隣にあったよ! つーか誤魔化させねぇぞ! 魔王城はどうなんだよ! おぉぉぉんっ!?」
結局どうにか誤魔化すためにオウルは三人で酒場に向かいカインを酒で潰し、クレアを連れて城に帰ったのだった。
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