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井上くん
第五話
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──八月
いよいよ新人研修旅行だ。社員旅行を兼ねているため営業も事務も皆参加。伊豆のコテージを貸し切り毎年行われる。小さなバスも貸し切り、所長の一存で決められる名所や文化財などを巡る。
オレも三年目、後輩指導にあたる。
部屋割りはもちろん俺と先輩。バスも隣だ。これは実行委員の俺の特権。二日先輩と過ごせる。
コテージに到着し夕飯まで各々自由な時間を過ごしていたときだった。オレたちは砂浜に出た。そこでまたしても文哉が怪我をした。足の裏を切ってしまう。誰かが捨てたゴミを踏んだらしい。
するとすかさず先輩が文哉を軽々と背負った。細いのに力持ち、好き。王子様さながらで恭介&文哉のファンクラブ会員たちが黄色い声を上げる。
ほっとけないっていうか、よく怪我するよねほんと。先輩が心配性になるのも分かる気がするよ。結局二人は戻ってこず夕飯の時間になってコテージに戻ることにした。
「兄貴と一緒の部屋無理! やだ!」
「決まってることに文句言うな」
「いやだ! 兄貴うるさいんだもん」
上野兄弟の口喧嘩が始まった。
「じゃあ僕のところ来るか?」
「だめだ二人部屋だ、ベッドだし定員二名だ」
「井上と代わってもらえばさ」
先輩は二人を宥めるように提案を持ちかける。この話の感じだとオレは……
「井上、文哉と代われる?」
振り返った先輩が残酷なことを言った。
いつもオレは置いていかれる側だ。眼中にない。
これまでもオレは常に明るく振る舞ってきた。
二年前同じこのコテージで「お前元気だな、こっちまで元気もらえるよ!」と頭をポンと撫でてくれたから。だから新人研修でも誰よりもムードメーカーで、場を盛り上げることに徹した。
それから二年、ずっと先輩の側にいる。文哉に片思いしてることも分かってても気持ちを止められない。先輩はうぶで心が清らかで、文哉だってそれに気がつくって思ってるから。時間の問題で、多分ふたりは恋人になる。おれは脇役でいい。今回の研修でも、新人や先輩のお世話に徹する。
「無理です」
なのに口から溢れたのは否定の言葉で、先輩のお願いにオレはそれを許すことが出来なかった。
みんなと共に共用のリビングで今日バスで巡った文化財のパンフレットを見ていたときだった。所長がオレに近付いてきた。
「井上張り切ってんな。今年」
「そうっスか?……一応実行委員でもありますしね」
「あれ。文哉は?」
「風呂のあとの足の消毒って先輩に連れてかれました」
「はぁ? あんなのかすり傷だろうが。過保護だよなぁ、実の兄の俺だって気にもしないのに」
「昔からですか?」
この際だと思い二人のことを聞いてみることにした。
「あぁ、こんなに小さい時から。文哉は泣き虫で、怖いところも苦手、かくれんぼも泣くし。ほんと苛つくやつだよ」
仁が思い出してか笑った。
「恭介は文哉が泣くたびに世話してやってた、かくれんぼも一緒に隠れてやったり、逃がせてやったりよ」
「へぇ……」
「あいつは異常者だ」
「はは……優しいんスよ」
「まぁな、お前にも優しいもんな」
「え?」
「先輩先輩って、そんだけ慕われてあいつだって嬉しくないわけないだろ」
「オレは文哉くんみたいに可愛くないんで」
「ふん、じゃあ……」
「……?」
「いや、……コンビニ行ってくる」
「あ、はい」
所長はなにか言いかけてリビングを出ていった。
夜、部屋のベッドで参考書を眺めていると先輩が入ってきた。手には絆創膏の箱を持っている。
「文哉くんのところですか」
参考書に視線を戻して気にしてないフリで聞いた。
「うん、シャワーのあとの交換」
「優しいんすね」
「あいつはおっちょこちょいだから怪我ばかりするんだ」
「たしかに」
「受験勉強か?」
「はい、まぁ」
「製図の課題はもう出たんだよな?」
「はい」
「じゃあ、対策練らないとな」
「まぁ、だいたい構想はあります」
「さすがぁ」
コンコン──。
先輩がドアを開けると所長が立っていた。
「お、仁どした?」
「飲もーぜ」
リビングで所長が購入してきたアルコールたちを囲んでオレ、先輩、所長三人で飲みが始まる。
「先輩、これ」
先輩の前にチューハイの缶を置く。
「うん、今日はこの気分」
「だと思いました」
「わかってるね~、あとのり塩な」
「ちゃんとありますって」
ポテチをパーティー開けして先輩の前に開いた。
「さて、井上も一級建築士の学科が終わったことだし、今夜はお疲れ会だ!」
「はは、ありがとうございます」
「結果は九月だっけ」
「まずは乾杯!」
三つの缶がぶつかり合う。
「設計製図の課題は図書館なんだって?」
「はい。コミュニティーセンターも兼ねた図書館で、構造種別は自由です」
「僕の時は介護施設だったなぁ、仁は?」
「俺?……うーん、俺も図書館だった気がする」
「あぁ! そうだったかも、お前の図書館めっちゃ僕の意見詰めすぎて豪華になってたよね!」
「そうだったかぁ?」
所長と先輩は大学も同じ。所長が独立するんで先輩に声を掛けた。それまで先輩は大手の住宅メーカーに勤めていたらしい。
ご機嫌にのり塩のポテチをパリパリと音を鳴らして食べる先輩。そのポテチはさっき俺が荷物から出したやつだ。先輩は必ず飲むとのり塩ポテチを欲しがるのを知ってるから。
「あ、先輩口にポテチついてます」
思わずそれを親指の腹で取ると、先輩が硬直した。
あ、調子乗りすぎたかもしれない。誤魔化さなければ。
「先輩、酔ってます?」
「ま、まだ酔ってないし」
「つまみもありますよ」
「おい、井上、ピーナッツある?」
「ありません、所長はご自身で買ってください、金あるんですから」
「はぁ?……ったく、じゃあコンビニ行ってくるわ」
「嘘ですよ、オレが行きます」
「いいよ、今は所長でいたくねぇ」
「……分かりました」
よっこらしょと立ち上がりリビングを出ていく。
「所長どしたんすか」
「マレーシアの出張あったろ?」
「所長が通したかったやつ」
「そう、交渉不成立。十二億の仕事が……」さよなら~と手を振った。
「やっぱ僕行ってくるよ」
「オレも行きます」
「財布は忘れたふりしような」
先輩がこどもみたいに笑った。同期の仲間を思いやる先輩、やっぱり好き。
いよいよ新人研修旅行だ。社員旅行を兼ねているため営業も事務も皆参加。伊豆のコテージを貸し切り毎年行われる。小さなバスも貸し切り、所長の一存で決められる名所や文化財などを巡る。
オレも三年目、後輩指導にあたる。
部屋割りはもちろん俺と先輩。バスも隣だ。これは実行委員の俺の特権。二日先輩と過ごせる。
コテージに到着し夕飯まで各々自由な時間を過ごしていたときだった。オレたちは砂浜に出た。そこでまたしても文哉が怪我をした。足の裏を切ってしまう。誰かが捨てたゴミを踏んだらしい。
するとすかさず先輩が文哉を軽々と背負った。細いのに力持ち、好き。王子様さながらで恭介&文哉のファンクラブ会員たちが黄色い声を上げる。
ほっとけないっていうか、よく怪我するよねほんと。先輩が心配性になるのも分かる気がするよ。結局二人は戻ってこず夕飯の時間になってコテージに戻ることにした。
「兄貴と一緒の部屋無理! やだ!」
「決まってることに文句言うな」
「いやだ! 兄貴うるさいんだもん」
上野兄弟の口喧嘩が始まった。
「じゃあ僕のところ来るか?」
「だめだ二人部屋だ、ベッドだし定員二名だ」
「井上と代わってもらえばさ」
先輩は二人を宥めるように提案を持ちかける。この話の感じだとオレは……
「井上、文哉と代われる?」
振り返った先輩が残酷なことを言った。
いつもオレは置いていかれる側だ。眼中にない。
これまでもオレは常に明るく振る舞ってきた。
二年前同じこのコテージで「お前元気だな、こっちまで元気もらえるよ!」と頭をポンと撫でてくれたから。だから新人研修でも誰よりもムードメーカーで、場を盛り上げることに徹した。
それから二年、ずっと先輩の側にいる。文哉に片思いしてることも分かってても気持ちを止められない。先輩はうぶで心が清らかで、文哉だってそれに気がつくって思ってるから。時間の問題で、多分ふたりは恋人になる。おれは脇役でいい。今回の研修でも、新人や先輩のお世話に徹する。
「無理です」
なのに口から溢れたのは否定の言葉で、先輩のお願いにオレはそれを許すことが出来なかった。
みんなと共に共用のリビングで今日バスで巡った文化財のパンフレットを見ていたときだった。所長がオレに近付いてきた。
「井上張り切ってんな。今年」
「そうっスか?……一応実行委員でもありますしね」
「あれ。文哉は?」
「風呂のあとの足の消毒って先輩に連れてかれました」
「はぁ? あんなのかすり傷だろうが。過保護だよなぁ、実の兄の俺だって気にもしないのに」
「昔からですか?」
この際だと思い二人のことを聞いてみることにした。
「あぁ、こんなに小さい時から。文哉は泣き虫で、怖いところも苦手、かくれんぼも泣くし。ほんと苛つくやつだよ」
仁が思い出してか笑った。
「恭介は文哉が泣くたびに世話してやってた、かくれんぼも一緒に隠れてやったり、逃がせてやったりよ」
「へぇ……」
「あいつは異常者だ」
「はは……優しいんスよ」
「まぁな、お前にも優しいもんな」
「え?」
「先輩先輩って、そんだけ慕われてあいつだって嬉しくないわけないだろ」
「オレは文哉くんみたいに可愛くないんで」
「ふん、じゃあ……」
「……?」
「いや、……コンビニ行ってくる」
「あ、はい」
所長はなにか言いかけてリビングを出ていった。
夜、部屋のベッドで参考書を眺めていると先輩が入ってきた。手には絆創膏の箱を持っている。
「文哉くんのところですか」
参考書に視線を戻して気にしてないフリで聞いた。
「うん、シャワーのあとの交換」
「優しいんすね」
「あいつはおっちょこちょいだから怪我ばかりするんだ」
「たしかに」
「受験勉強か?」
「はい、まぁ」
「製図の課題はもう出たんだよな?」
「はい」
「じゃあ、対策練らないとな」
「まぁ、だいたい構想はあります」
「さすがぁ」
コンコン──。
先輩がドアを開けると所長が立っていた。
「お、仁どした?」
「飲もーぜ」
リビングで所長が購入してきたアルコールたちを囲んでオレ、先輩、所長三人で飲みが始まる。
「先輩、これ」
先輩の前にチューハイの缶を置く。
「うん、今日はこの気分」
「だと思いました」
「わかってるね~、あとのり塩な」
「ちゃんとありますって」
ポテチをパーティー開けして先輩の前に開いた。
「さて、井上も一級建築士の学科が終わったことだし、今夜はお疲れ会だ!」
「はは、ありがとうございます」
「結果は九月だっけ」
「まずは乾杯!」
三つの缶がぶつかり合う。
「設計製図の課題は図書館なんだって?」
「はい。コミュニティーセンターも兼ねた図書館で、構造種別は自由です」
「僕の時は介護施設だったなぁ、仁は?」
「俺?……うーん、俺も図書館だった気がする」
「あぁ! そうだったかも、お前の図書館めっちゃ僕の意見詰めすぎて豪華になってたよね!」
「そうだったかぁ?」
所長と先輩は大学も同じ。所長が独立するんで先輩に声を掛けた。それまで先輩は大手の住宅メーカーに勤めていたらしい。
ご機嫌にのり塩のポテチをパリパリと音を鳴らして食べる先輩。そのポテチはさっき俺が荷物から出したやつだ。先輩は必ず飲むとのり塩ポテチを欲しがるのを知ってるから。
「あ、先輩口にポテチついてます」
思わずそれを親指の腹で取ると、先輩が硬直した。
あ、調子乗りすぎたかもしれない。誤魔化さなければ。
「先輩、酔ってます?」
「ま、まだ酔ってないし」
「つまみもありますよ」
「おい、井上、ピーナッツある?」
「ありません、所長はご自身で買ってください、金あるんですから」
「はぁ?……ったく、じゃあコンビニ行ってくるわ」
「嘘ですよ、オレが行きます」
「いいよ、今は所長でいたくねぇ」
「……分かりました」
よっこらしょと立ち上がりリビングを出ていく。
「所長どしたんすか」
「マレーシアの出張あったろ?」
「所長が通したかったやつ」
「そう、交渉不成立。十二億の仕事が……」さよなら~と手を振った。
「やっぱ僕行ってくるよ」
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