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222 ようこそ! それ専の大使館へ

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 アルス港湾都市キャンベル。

古くから良港として栄え、王都エルサドラに次ぐ第二の都市である。

その都市の経済を牛耳っているのが、アルス商会とキャンベル商会の二大豪商だ。

二つの商会は、キャンベルにとどまらず、アルス王国全体の経済を握っていると形容しても、過言ではない。

両商会はライバルというより犬猿の仲。

アルスの次期王を巡る貴族同士の争いに、商会運をかけ、積極的に支援していた。

アルス商会は、第一王子のハント派、キャンベル商会は第二王子のスティーブ派。

これまでの投資を回収し、さらには、独占的な権益を得るため、双方とも引くに引けない状態となっている。

 俊也はユーノ、エリーナ、カエデ、三人の嫁を伴い、キャンベルに程近いパガダに転移した。

パガダは、エリーナの母親の実家、ミケア侯爵領内にあり、キャンベルの衛星都市としてかなりの規模を誇る街だ。

ミケア侯爵は、アルスきっての名門であるが、王宮の権力からはじかれた感がある。
芸術家肌の彼は、権力争いを嫌う。
政府内の役職は王室特別顧問。

はっきりいえば、完全な名誉職。最近すっかり老けこんだ王の名代として、対外的なセレモニーに出向く程度の仕事しかない。

ミケア侯爵的には、それをラッキーとし、趣味の絵画や音楽を楽しんでいる。

俊也は侯爵の許しを得、この地に商業施設を作る計画だ。

「この辺にしようか」
 俊也は広げた地図を見ながら言う。

見渡す限り草原が広がり、近隣には、民家や農園、牧場が散在している。
その地は、キャンベルとパガダを結ぶ街道を底辺とした、二等辺三角形の頂点にあたる。
つまり、両町の中心部から、ほぼ等距離に位置する。

俊也の計画はこうだ。

中核となる大規模な、ショッピングモールをまず建設する。
宿泊施設、レストラン、劇場、カジノ、公園、もふもふ小動物園等を併設する。
そして定住者を積極的に募り、施設周辺に街を作る。

初期投資は巨額だが、日本で同規模の施設を作ることに比べたら微々たるものだ。
土地や人件費はべらぼうに安いし、何より俊也には強みがある。

魔法で整地や道路整備の人件費が、ほぼゼロに抑えられること。
転移魔法で、流通コストが、冗談みたいに安く抑えられること。

もう一つは…今のところ秘密で。

要するに、両街からの移動時間に見合うだけの、価格破壊が可能だということだ。

「問題は生鮮食品や、大きな商品の輸送だと思うんですけど。
両方の街は乗合馬車でも、片道二時間近くかかります」
 カエデは現実的な問題点を指摘する。

「俊也さんに抜かりはないよ。
希望者には引き換え券だけ売って、両方の街で商品を受け取る。
大きな荷物は、有料で宅配もする。
なにせ経営者は、イスタルト王よ。
これ以上ないほど信用はあるはず」
 計画の詳細を知っているユーノが答える。

「なるほど……」
 カエデはうなずきながら思う。
普通の経営者では、太刀打ちできない。アルス商会とキャンベル商会は、気の毒としか言いようがないな。


 同じころ、アルス王宮内は、イスタルト新王訪問に備え、慌ただしく支度を整えていた。

アルス王や貴族たちは戦々恐々。なにゆえイスタルト王自らが来るの?


 俊也は新規嫁五人を率い、大使館に転移。全員すでに三発ずつ、「魔力増強処置」を施している。もちろん興津根様つきで。
全員いわば元人妻。初々しさには欠けていたが、「処置」をほどこすにあたり、気遣いをせずに済んだ。
 
 先王の好みか、全員肉感的なボディーの持ち主。子爵家出身でありながら入内しただけあって、それぞれ掛け値なしの美人だ。

「ようこそ。俊也さんがお留守の間、大使館を預かっている一宮弥生と申します」
 弥生が五人にまず挨拶。新規嫁は自己紹介がてら、挨拶を返した。

「これがらぶほ…という建物ですか……。いえ、元らぶほ」
 カトリーヌが悠然と建物内を見渡す。彼女は元王妃の中でも古参に属する。
 聞くところによれば、らぶほ、とは、エッチ専門の宿だという。重厚さには欠けるが、清潔感があると感じた。
 ロビーだからね……。

「俊也さん、今日はどんなところご案内するの?」
 弥生が聞く。
「浅草やスカイツリーなんかどうかなって」
 俊也が答える。
「それはどうかな……。あなた、しばらく行ってないでしょ?
東京の観光名所。
外人客でいっぱいよ。お勧めできない」
「そんなに?」
「円安だからね。コ〇ナ明けだし」
「そっか……。いきなり雑踏はまずいかな?」 
 弥生はこくんとうなずく。

「じゃあ……」
「エッチ希望です!
それ専門の建物なのでしょ?」
 最年少のスザンヌが提案。彼女は入内後半年で未亡人となった。
 まだどこか幼さを残している。しかしながら、先王は新しい女好き。集中的に先王から寵を受け、やっとエッチの悦びを覚えたばかり。
 おまけに興津根様憑き俊也エッチを経験した。

 それ専なら、「それ」に思い切りひたりたい! 湖の館では、なんとなく気後れするし。三幹部には特に。女としての圧というか……。

「了解。弥生、近場でどこかおいしいところ予約しておいて。
夕食までやりまくろう!」
 俊也は悲壮な決意を固めた。

「五人まとめて、ですか?」
 アニータが、目を輝かせる。彼女は多少レズっ気があるのではないかと想像される。必要以上、他の嫁とスキンシップする傾向が見られる。

 今まで新規嫁には、マンツーマンエッチしか試さなかったが、俊也には明日予定があった。

 不公平があってはいけないでしょ!
「まとめてかかってきなさ~~~い!」
 どんと胸を叩く俊也だった。

 弥生は苦笑を浮かべて、軽く肩をすくめた。まあ、思う存分やってください。

「きゃ~~~!
浴室がすけすけだ~~~!」
「いや~~ん! 鏡張りだ!」
「灯りがピンク、ですか……」
「でっかいベッド!
みんなで乗れますね!」
「さあ、皆さん、戦闘準備を整えましょう!」
 
大はしゃぎの新規嫁に、俊也がちょっぴりひいたことは内緒だ。
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