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213 戦う男と戦わない男
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菜摘は朝陽の家に押しかけ、デートの顛末を報告。
「振っちゃったんだ?」
「うん。うっとうしいから、魔石の指輪でちょっぴり痛い思いさせた。
学校別だから、どうってことない」
「あれ、使ったんだ?」
「うん。
さよならって言ったら、乱暴に肩つかんでくるんだもん。
要するに、やることしか考えてないの。
やらせる女なら、誰でもいいって感じ?」
「男ならたいていは、そうだと思うけど。
まあ、正直ライム君はどうかな、って思ってた」
「見栄えはなかなかだったし、一見優しそうだった。
だけど、別れを言った時の血走った眼、超ドン引き」
朝陽は菜摘の言葉にうなずく。
実は内心ほっとしていた。来夢とは一度、ボーリングのダブルデートで会ったことがある。
大人しそうな外見とは裏腹に、粘着質で嗜虐的な内面を、なんとなく感じた。
小学生の時、菜摘はロリコン高校生に、騙されかけたことがある。
俊也に相談し、事なきをえたが(ロリコン高校生はひどい目にあったらしいが)、菜摘はあの手の男を引き付ける何かがあると、朝陽は思っている。
本人も性に関し意識が甘い。要するに、隙が見えてしまうのだ。
どうしたものか……。
朝陽はため息をついた。
「朝陽ちゃん、俊也さんに頼んで。
私、経験したい」
「えっ、マジで言ってるの?」
朝陽はびっくり。たしかに菜摘は、それらしきことを何度もほのめかしていたが……。
「マジだよ。他の子やライム君とデートしてても、なんか、ずっともやもやしてたんだよね。
原因は俊也さんだと思うの」
「アニキがそんなに好きなの?」
「よくわかんない。
もちろん好きなんだけど、『そんなに』がつくかどうか自信はない。
だけど、経験したら、もやもやはなくなる気がするの」
「アニキの危険性、わかってる?
本気になっちゃうよ」
「ハハハ、私が?
それはない。私は日本で暮らしたい。
お願い、一度だけ!」
なわけないでしょうが……。これまでのアニキの実績を考えたら、それは明らかだ。
だけど、なっちゃんは、アニキに夢中になった方がいいかもしれない。
アニキや、あのお嫁さんたちの庇護下にあったら、大きな過ちは犯さない。
「わかった。頼んであげる。
しばらくは忙しくて、こちらに帰れないそうだけど」
朝陽は、ちょっぴり寂しそうな目で応えた。
親友にも取り残されそうだ。
「朝陽ちゃんは平気なの?」
菜摘は朝陽の微妙な表情に気づいた。
「そんなに平気じゃないけど、仕方ないよ。
私はアニキとセックスできない。
血のつながりが呪わしい」
「な、なんか…ごめん……」
菜摘はうなだれた。
「一つだけ言っておく。
きっと私の義理の姉になっちゃうよ。
その覚悟はしておきなさい」
「だから…それはないって」
「まあいいよ。また一人ぐらい義理の姉が増えても、どうってことない。
誤差の範囲だ」
「ひっど~!」
朝陽と菜摘は、微笑みあった。
「俊也さん、なんで忙しいの?」
「一番新しいお嫁さんのためよ。
イスタルトのためでもあるけど。
転移マップを作ってるの。アニキたちが今戦ってる国の」
「よくわかんないけど、大変そう。そういえば、海水浴に行った国でも、なんかやったと言ってた?」
「信じられないかもしれないけど、あの国、現在進行中で戦時下なの。
最後の城塞に籠ってる人、生きた心地、してないんじゃない?
籠城して二か月以上なんだって」
「ふ~ん……。そんな国で、海水浴バーベキューやってたなんて、呪われそう?」
「庶民は普通の生活に還ってるそうよ。
むしろ、占領軍が落とすお金で潤ってるらしい。税を絞り取る人も動けないし」
「そっか! 俊也さんは解放軍なんだ!」
「侵略軍の片棒担いでるだけよ。
戦争に正義なんてない。
アニキは嫁のために戦ってるだけ。
愛する女のために戦う。
妹が言うのもなんだけど、本物の男だよ」
朝陽は本音を語る。今まで、誰にも言ったことはなかったが。
朝陽の言葉に、菜摘は背筋を伸ばしてうなずいた。
それなんだ……。
今まで付き合ってきた男と、俊也さんの違い。
今までの男は「自分のため」だけの男であり、しかも「戦わない」男だった。
俊也さんは、一度私のために戦ってくれた。あの時の目は怖いほど「男の目」だった。
「朝陽ちゃん、念のためもう一度聞く。
ほんとに、いいの?」
「いいとするしかないでしょ?
あくまで私は、アニキの妹なんだから」
明らかなつくり笑顔を浮かべる朝陽だった。
「振っちゃったんだ?」
「うん。うっとうしいから、魔石の指輪でちょっぴり痛い思いさせた。
学校別だから、どうってことない」
「あれ、使ったんだ?」
「うん。
さよならって言ったら、乱暴に肩つかんでくるんだもん。
要するに、やることしか考えてないの。
やらせる女なら、誰でもいいって感じ?」
「男ならたいていは、そうだと思うけど。
まあ、正直ライム君はどうかな、って思ってた」
「見栄えはなかなかだったし、一見優しそうだった。
だけど、別れを言った時の血走った眼、超ドン引き」
朝陽は菜摘の言葉にうなずく。
実は内心ほっとしていた。来夢とは一度、ボーリングのダブルデートで会ったことがある。
大人しそうな外見とは裏腹に、粘着質で嗜虐的な内面を、なんとなく感じた。
小学生の時、菜摘はロリコン高校生に、騙されかけたことがある。
俊也に相談し、事なきをえたが(ロリコン高校生はひどい目にあったらしいが)、菜摘はあの手の男を引き付ける何かがあると、朝陽は思っている。
本人も性に関し意識が甘い。要するに、隙が見えてしまうのだ。
どうしたものか……。
朝陽はため息をついた。
「朝陽ちゃん、俊也さんに頼んで。
私、経験したい」
「えっ、マジで言ってるの?」
朝陽はびっくり。たしかに菜摘は、それらしきことを何度もほのめかしていたが……。
「マジだよ。他の子やライム君とデートしてても、なんか、ずっともやもやしてたんだよね。
原因は俊也さんだと思うの」
「アニキがそんなに好きなの?」
「よくわかんない。
もちろん好きなんだけど、『そんなに』がつくかどうか自信はない。
だけど、経験したら、もやもやはなくなる気がするの」
「アニキの危険性、わかってる?
本気になっちゃうよ」
「ハハハ、私が?
それはない。私は日本で暮らしたい。
お願い、一度だけ!」
なわけないでしょうが……。これまでのアニキの実績を考えたら、それは明らかだ。
だけど、なっちゃんは、アニキに夢中になった方がいいかもしれない。
アニキや、あのお嫁さんたちの庇護下にあったら、大きな過ちは犯さない。
「わかった。頼んであげる。
しばらくは忙しくて、こちらに帰れないそうだけど」
朝陽は、ちょっぴり寂しそうな目で応えた。
親友にも取り残されそうだ。
「朝陽ちゃんは平気なの?」
菜摘は朝陽の微妙な表情に気づいた。
「そんなに平気じゃないけど、仕方ないよ。
私はアニキとセックスできない。
血のつながりが呪わしい」
「な、なんか…ごめん……」
菜摘はうなだれた。
「一つだけ言っておく。
きっと私の義理の姉になっちゃうよ。
その覚悟はしておきなさい」
「だから…それはないって」
「まあいいよ。また一人ぐらい義理の姉が増えても、どうってことない。
誤差の範囲だ」
「ひっど~!」
朝陽と菜摘は、微笑みあった。
「俊也さん、なんで忙しいの?」
「一番新しいお嫁さんのためよ。
イスタルトのためでもあるけど。
転移マップを作ってるの。アニキたちが今戦ってる国の」
「よくわかんないけど、大変そう。そういえば、海水浴に行った国でも、なんかやったと言ってた?」
「信じられないかもしれないけど、あの国、現在進行中で戦時下なの。
最後の城塞に籠ってる人、生きた心地、してないんじゃない?
籠城して二か月以上なんだって」
「ふ~ん……。そんな国で、海水浴バーベキューやってたなんて、呪われそう?」
「庶民は普通の生活に還ってるそうよ。
むしろ、占領軍が落とすお金で潤ってるらしい。税を絞り取る人も動けないし」
「そっか! 俊也さんは解放軍なんだ!」
「侵略軍の片棒担いでるだけよ。
戦争に正義なんてない。
アニキは嫁のために戦ってるだけ。
愛する女のために戦う。
妹が言うのもなんだけど、本物の男だよ」
朝陽は本音を語る。今まで、誰にも言ったことはなかったが。
朝陽の言葉に、菜摘は背筋を伸ばしてうなずいた。
それなんだ……。
今まで付き合ってきた男と、俊也さんの違い。
今までの男は「自分のため」だけの男であり、しかも「戦わない」男だった。
俊也さんは、一度私のために戦ってくれた。あの時の目は怖いほど「男の目」だった。
「朝陽ちゃん、念のためもう一度聞く。
ほんとに、いいの?」
「いいとするしかないでしょ?
あくまで私は、アニキの妹なんだから」
明らかなつくり笑顔を浮かべる朝陽だった。
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