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185 ミスト王に謁見
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俊也は、四人の研修生嫁を伴ってミストに転移。
転移魔法はバレバレになるだろうが仕方ない。
絶対秘密厳守。そう言えば、ミスト王も無理に聞き出そうとしないだろう。
漏れたとしても、転移魔法が発動できるほど魔力を持っているのは、先の王妃ぐらいだろうという、ミーナの言葉もあったし。
俊也はミーナに「帰る?」とは聞かなかった。ミーナの帰るところは、もう館以外にないのだから。
フィード伯爵を通じ、俊也と研修生嫁はミスト王と謁見する。
「初めてお目にかかります。俊也青形です。
宮廷の作法はわきまえておりませんので、不調法があったらお許しください」
俊也は片膝をついて口上を述べる。
「いやいや。俊也殿はミストの恩人。
余は対等の友人と思っております。
どうぞお楽に」
ミスト、ロン王は、あまりにも速い俊也の来訪に驚いたが、彼はきわめて賢明な王だ。
俊也が自ら明かさない限り、秘密の詮索をするのはまずいという判断をしていた。
「いただいた研修生、みな順調に能力を伸ばしております。
フレア、王にご挨拶を」
俊也は後ろに控えるフレアに言う。研修生嫁の中では、彼女の実家が最も格上だから。
「いや、よいよい。健康そうで何より。
俊也殿に同行したのは、家族や友と会いたかった。
そういうことであろう?」
「はい。そのとおりです。みんな、家族に会ってきなさい」
王の言葉に従い、俊也は研修生にそう言った。
研修生嫁は、簡単な挨拶をし、謁見の間を辞した。
王は俊也を小部屋に誘い、さっそく用件を切り出した。
「ナームを併合しなかったこと、どう思われる?」
「賢明なご判断だと思います。ナーム人は、おそらくミスト人を敵視していることでしょう。
その人心を掌握するのは大変です。
また、ナームの鉱物資源や絹は魅力でしょうが、それを手中にするより、民衆の糊口を養う資金と労力の方が大きいと、愚考いたしております。
だだし、風向きが変わった。
そういうことでしょうか?」
ロン王は思う。この男、単に力があるだけではない。抜群に切れる。
「俊也殿なら、どのような手を打たれる?」
王は率直に聞いた。俊也はこの男、油断はできないが、信用はできると判断した。
「クーデター勢力を援助するのは、しばらく見送ります。
まずはナームの人心を慰撫する。
早い話、食料支援という形で餌付けする。
その分の食料を得るために、ナビス平原を開墾します。
労力は当分ミスト兵を使います。
作物はルクス芋を中心に。
ナビス平原なら小麦や大麦でも大丈夫でしょうが、芋の方が効率はいい。
数年なら連作も可能でしょう。
民の飢えを満たしたところで、ナームの指導者を見極めます。
私には恐ろしい能力を持った妻がいます。
人の心が読めるのです。
ただ、こちらの言語には通じていません。
今、こちらの言葉を勉強しています。
一年もあれば、日常会話程度なら可能でしょう。
その妻が、この人物だ、と判断した者に積極的な援助をおこないます。
ただし、併合という形で直接統治するのは避けます。
政権維持の面倒事を背負うより、良好な関係を保つ方が楽ですから」
王は舌を巻いた。自分の計画の上をいく方策だ。
「一言申し上げます。
私は一国を統治するなんていうめんどくさいこと、絶対いやですよ」
ロン王は大笑いした。
参った。完全に腹の中を見抜かれている。
ロン王は、俊也にナームを任せる気でいたのだ。そして将来はミスト、イスタルト、俊也王国三国同盟。それこそ盤石の大勢力となる。
「わかりました。それはあきらめましょう。
ナビス平原の開墾、お手伝いいただけるのでしょうな?」
やっぱり食えない男だ。しかし、俊也の王に対する信頼は深まった。
実利最優先の人物という意味で。つまり、どうすれば得なのかがわかっている。
「可能な範囲で協力します。
ナームを任せられる人物の査定を含めて」
俊也は苦笑して、そう答えた。
転移魔法はバレバレになるだろうが仕方ない。
絶対秘密厳守。そう言えば、ミスト王も無理に聞き出そうとしないだろう。
漏れたとしても、転移魔法が発動できるほど魔力を持っているのは、先の王妃ぐらいだろうという、ミーナの言葉もあったし。
俊也はミーナに「帰る?」とは聞かなかった。ミーナの帰るところは、もう館以外にないのだから。
フィード伯爵を通じ、俊也と研修生嫁はミスト王と謁見する。
「初めてお目にかかります。俊也青形です。
宮廷の作法はわきまえておりませんので、不調法があったらお許しください」
俊也は片膝をついて口上を述べる。
「いやいや。俊也殿はミストの恩人。
余は対等の友人と思っております。
どうぞお楽に」
ミスト、ロン王は、あまりにも速い俊也の来訪に驚いたが、彼はきわめて賢明な王だ。
俊也が自ら明かさない限り、秘密の詮索をするのはまずいという判断をしていた。
「いただいた研修生、みな順調に能力を伸ばしております。
フレア、王にご挨拶を」
俊也は後ろに控えるフレアに言う。研修生嫁の中では、彼女の実家が最も格上だから。
「いや、よいよい。健康そうで何より。
俊也殿に同行したのは、家族や友と会いたかった。
そういうことであろう?」
「はい。そのとおりです。みんな、家族に会ってきなさい」
王の言葉に従い、俊也は研修生にそう言った。
研修生嫁は、簡単な挨拶をし、謁見の間を辞した。
王は俊也を小部屋に誘い、さっそく用件を切り出した。
「ナームを併合しなかったこと、どう思われる?」
「賢明なご判断だと思います。ナーム人は、おそらくミスト人を敵視していることでしょう。
その人心を掌握するのは大変です。
また、ナームの鉱物資源や絹は魅力でしょうが、それを手中にするより、民衆の糊口を養う資金と労力の方が大きいと、愚考いたしております。
だだし、風向きが変わった。
そういうことでしょうか?」
ロン王は思う。この男、単に力があるだけではない。抜群に切れる。
「俊也殿なら、どのような手を打たれる?」
王は率直に聞いた。俊也はこの男、油断はできないが、信用はできると判断した。
「クーデター勢力を援助するのは、しばらく見送ります。
まずはナームの人心を慰撫する。
早い話、食料支援という形で餌付けする。
その分の食料を得るために、ナビス平原を開墾します。
労力は当分ミスト兵を使います。
作物はルクス芋を中心に。
ナビス平原なら小麦や大麦でも大丈夫でしょうが、芋の方が効率はいい。
数年なら連作も可能でしょう。
民の飢えを満たしたところで、ナームの指導者を見極めます。
私には恐ろしい能力を持った妻がいます。
人の心が読めるのです。
ただ、こちらの言語には通じていません。
今、こちらの言葉を勉強しています。
一年もあれば、日常会話程度なら可能でしょう。
その妻が、この人物だ、と判断した者に積極的な援助をおこないます。
ただし、併合という形で直接統治するのは避けます。
政権維持の面倒事を背負うより、良好な関係を保つ方が楽ですから」
王は舌を巻いた。自分の計画の上をいく方策だ。
「一言申し上げます。
私は一国を統治するなんていうめんどくさいこと、絶対いやですよ」
ロン王は大笑いした。
参った。完全に腹の中を見抜かれている。
ロン王は、俊也にナームを任せる気でいたのだ。そして将来はミスト、イスタルト、俊也王国三国同盟。それこそ盤石の大勢力となる。
「わかりました。それはあきらめましょう。
ナビス平原の開墾、お手伝いいただけるのでしょうな?」
やっぱり食えない男だ。しかし、俊也の王に対する信頼は深まった。
実利最優先の人物という意味で。つまり、どうすれば得なのかがわかっている。
「可能な範囲で協力します。
ナームを任せられる人物の査定を含めて」
俊也は苦笑して、そう答えた。
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