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178 新半モブキャラ登場 登場人物多すぎ? いいんです、女性だから

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 元ラブホ大使館。静香は二人の客を招いていた。

一人は阿部芙蓉、六年生になった朝陽と菜摘は、今年も彼女に担任をしてもらっている。
もう一人は海原さくら。二人とも静香の後輩。高校時、美術部に所属していた。

「で、のっぴきならない用件って何?」
 一階受付カウンターを取り払ったロビー。一応シュンヤーダ王国大使館の、面談スペースとなっている。

実は俊也の「関係者」以外は、初めて使用する。ロリコン男子高校生は、そのまま拷問部屋へ通し、そのままつまみ出したから。

「ラブホって初めて入りました。
案外普通ですね」
 さくらが感想を述べる。

「ラブホじゃなくて大使館よ。
嫁と忙しい旦那様のやってることは、まるっきりラブホと同じだけど。
で?」
 静香が苦笑しながら訂正する。

「強引に連れてけって言われて。
私もどんな用件か知りません」
 芙蓉は電話で頼まれたものの、さくらは詳しく話さなかった。

ちなみに芙蓉は、この大使館に三度訪れている。幸か不幸か、いずれも俊也は不在だった。

「ここって、一国の大使館ですよね?」
 さくらは恐る恐る言う。

「そうだけど。
日本政府も認めている」
 静香が答える。

「大使館には、専属のシェフが付き物?」
 ああ、そういうこと。静香は納得。

さくらは高校を卒業し、調理師専門学校へ入った。卒業後数軒のレストランで働いていたと聞いている。
フランス、イタリア、中華、日本料理店。

彼女は多国籍料理人を、目指しているらしい、と、芙蓉から聞いた覚えがある。「多国籍」と言えば聞こえがいいが、どこも数年では、器用貧乏止まりではないか、という疑念を持った。

「大使館といっても、シェフを雇うほど人数いないし、要人を招くこともない。
大体食べ歩きが目的で、王国の嫁たちは、ここへ来るんだから」
 バックには「タイゾークン」が付いているし、と静香は心の中で付け加える。

静香の実家には、常設魔法陣が設けられている。

静香の祖父泰造は、若くて美しい俊也の嫁たちを連れ回し、超ご機嫌だ。
嫁たちはおいしい思いをするので、連れ回されて超ご機嫌。

双方のニーズが合致し、至極円満な関係が継続している。

今日もマサラとエンランは、「タイゾークン」の家に行っている。

「そんな~……。
静香さん、権限がないんですか? 
王妃の一人なんでしょ? 
正式に入籍してるし」
 さくらは、すがる目で言う。

「権限? 
そんなこと考えたことない。
あちらでは階級社会の名残はあるみたいだけど、根本的には、みんな好きなように生きてる。
私も夫と必要なら相談はするけど、命令したことないし、されたこともない」

「なら、一人ぐらい雇っても……」
 さくらは言葉尻を濁す。

「ちょっと待ってよ! 
あなた、それはわがままっていうものよ」
 芙蓉は、身勝手なさくらの姿勢にカチンときた。

「じゃ、こうしよう。
さくらちゃんの自信があるコース料理、五人前準備して。
私とフーちゃん、日本にきている嫁二人。
そして私の祖父。
五人の舌を満足させられたら、私が雇ってあげる。
どう?」

「了解です!」
 さくらは自信満々風に応えた。心配になった芙蓉がこう聞いた。

「あなた、何料理が一番得意なの?」
 芙蓉は高校時代のさくらを、よく知っている。虚勢を張っていることが、ひきつり気味の作り笑顔で丸わかり。

「スイーツ! 
スイーツのフルコースで勝負よ!」

「はい、不合格。さよなら」
 静香はあきれて、そう応えた。

「ジョークですよ、ジョーク。
やだな、静香さんったら、すっかり所帯じみて。
ユーモアを解さなくなった。
旦那と子供ができたら、そんなに保守的になるんだ?」

 静香は一呼吸置く。
さくらちゃんは変わってない。マズイと思った時には、子供みたいに逆ギレ気味になる。

原因はいつもその場しのぎで、言い繕おうとする習性にある。
三十にもなって、この子、まだ子供のままだ。

「正直に言いなさい。要するに、どの店も長続きしなかったのね?」

「はい。その通りです。
男系社会のひずみに飲み込まれました。
趣味で作るスイーツが、一番得意なのは本当です」
 さくらは、シュンとして応えた。

「とりあえず、三人前料理を作りなさい。
私の祖父は、財界の生きたグルメガイドブックと呼ばれてる。
予約を入れたら、名だたるシェフも背筋がぴんと伸びる。
嫁仲間はその祖父のマスコット。
食べ歩きのね。
今日もどこかの店へ、仲間を連れていく予定なの。
変なもの食べさせたら……、想像するだけでもぞっとする」

「お呼びじゃなかったでしょうか?」
 びびりきったさくらが、おそるおそる聞く。

「料理の出来次第で、身分が変わる。
専属シェフ、メイド、肉奴隷? 
私、妊娠してるから、ハードなお相手ができなくて」
 真顔で応える静香だった。
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