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177 さらば! 霜降りお肉

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 四ヶ月後、ルマンダは大きくなったお腹を抱え、第五練習場へ向かった。

館は冬を迎えようとしている。

『母さん、だいぶ歩いてる? 揺れて気持ちいい』
 ルマンダの頭の中に、かわいい声が響いてくる。

「魔力がたまりすぎて、ちょっと気持ち悪くなったの」
 ルマンダは、お腹の中の子に話しかける。

『気持ち悪いと言えばさ、ゆうべも頭の近くに変なのが入ってきてた? 
あれは何?』

「お父さんのおチンチンよ。
そうか、気づいてたんだね?」

『おちんちん?』

「生まれて目が見えるようになったら、教えてあげる。
あなたにもついてるのよ」
『ふ~ん。お父さんのおちんちんによろしく。
おやすみ』

「十日ぐらいは、お父さんのおちんちんに会えないけど、よろしく言っておく。
おやすみ」
 ルマンダは、やさしくお腹をなでた。


 ルマンダは、第五魔法練習所に到着。練習所では、嫁たちが魔法を練習している。
三幹部をはじめ、ベテラン嫁たちが、一斉に魔法を放っているから、派手なことはなはだしい。

その点、研修生嫁たちが放つ魔法は、可愛く見えてくる。
普通なら十分な戦力となるレベルだが。

「あっ、ルマンダさん! 珍しいですね」
 気づいたフレアが駆け寄ってきた。

フレアはルマンダに、最も懐いている。その理由は、おやつをこっそり流してくれるから。

三幹部はフレアのお腹の脂肪を憂慮して、厳しいおやつ制限を課している。

「たまには魔力を一気に吐き出さないと。あなたのお腹みたいになっちゃう」
 ルマンダは、ちょっぴり皮肉を言ってみた。

「もう! 気にしてるんですから」
 フレアは、以前より丸みを帯びたほっぺたを膨らます。

「まじか? 
気になるなら剣の訓練しようぜ! 
昼にはブルーさんが帰ってくる」
 クレオの言葉に、フレアはピキーンと固まる。

ブルーやクレオと訓練したら、一挙にカロリーを消費してしまう。

いやでも消費してしまう。

情け容赦なく消費してしまう。

「私はマシュマロボディーがウリなんだから!
筋肉少女なんかに、なりたくない!」

「筋肉は裏切らない。
脂肪は裏切り続ける。
戦いが起こったら死ぬぞ!」

「冬だもん! 
皮下脂肪は寒さの最強防御壁だ! 
それに、どこで戦いが起こるのよ!」

「日々これ戦いだ! 
脂肪ダルマになったら、俊也さんが相手してくれないぞ!」

「ぐっ……」
 クレオとフレアの、小さな戦いはクレオ圧勝。

どか~ん! 
ルマンダがインプロージョンを放った。

「ルマンダさんは、それほど魔力が高くなかったんですよね? 
よっし! 
がんばるぞ!」
 フレアは杖を握り直し、練習を始めた。向上心に、はなはだ乏しかったフレアだが、ごく短期間で魔法の上達が実感でき、欲が出てきた。

そして、フレアや他の研修生嫁にとって、メイド出身のルマンダは、大きな励みだ。


 研修生嫁四人は、かたずを飲んで見守っていた。

ブルーと獣人形態クレオの練習試合。
練習というものの、ほとんど実戦。

もちろん真剣を使っているわけではない。館の発明品ライトソード。光魔法を応用したものだ。
館の嫁たちは観てしまった。『スターウォー〇』シリーズの映画を立て続けに。
あれっていいんじゃね? ということで、『ライトセー〇ー』開発に全力を傾注した。
結果、できてしまった。お米の国は著作権がことさらうるさいらしい。そこで『ライトソード』と命名することにした。

ライトソードにフォース…、もとへ、魔力を通している間は、刃の形と量感を持ち続ける。
「練習モード」の場合肉体を傷つけず、体に当たれば威力相当の痛みを感じる。
剣と剣がぶつかれば、火花が飛び散る。

すでに一時間、二人の剣は、まだクリティカル判定を出していなかった。

剣は戦闘不能のダメージを与えたら、赤く発光する仕様だ。

ガチン! 二人の剣がぶつかり、つばぜり合いとなる。
クレオが力任せに押す。すっとブルーは、剣の力を逃がす。

ヒュン。ズバ。

押した力の逃げ場がなく、空いたクレオの胴にブルーは剣を薙いだ。
ブルーの剣が赤く光る。クレオはそのまま倒れ、気を失った。

スゲー! クレオ、ここまでブルーさんを追い詰めた。

研修生たちは拍手を送る。もちろんクレオの上達ぶりをたたえて。

館に来たばかりのクレオは、文字通り瞬殺されていた。

ブルーのリカバー魔法で、クレオは意識を取り戻した。

「参りました!」
 クレオは立ち上がって、背筋をピシッと伸ばし、深く頭を下げる。

「魔法を使われたら、私はもう勝てない。
認める。
あんたがこの館最強嫁だよ。
近接戦ならね」
 ブルーは寂しそうにほほ笑む。

「クレオ、そろそろ俊也さんモードでお相手してもらったら?」
 同時期入門のフレアが言う。ちなみに、「入門」はかけ言葉だ。

「あんたこそ、そろそろレジさんにお相手してもらったら? 変身解除」
 ぼふん。クレオは人間形態に還る。

館へ来て以来、クレオはもっぱらレジ形態、フレアは俊也形態だった。

「レジさん、おっかないんだもん」
 フレアは口を尖らせて言う。

「四五発中出ししてもらったら、余分な脂肪がつかなくなるよ。
な、ミネット?」
 ブルーは、研修生嫁に混じって見学していたミネットに振る。

「そうよ。いくら日本のスイーツ食べても、筋肉がすぐカロリーを消費してくれる。
勇気を出してチャレンジしたら?」

「マジで!」
 四人の研修生嫁は、異口同音に叫んだ。第一次研修生三人も、もっぱら俊也形態だった。

「レジ形態なら、単独では役不足かもね。
な、クレオ?」
 ブルーはクレオに振る。

「すっご~いよ! 
四人まとめてお相手してもらったら?」
 クレオはニヤッと笑う。

「よっし! チャレンジしよう!」
 超「やる気」になったフレアが言う。

「おう!」
 先輩研修生は、口をそろえて応えた。


 フレアと三人の研修生嫁が、息せき切って館へ帰ってきた。
 フレアが代表し、ソファで気持ちよさそうに丸まっていたナイトを抱き上げる。

 ちゅっ!

 フレアが唇キス。

 ボフン! 全裸のレジ、見参! 凶悪なパオーンは、だしぬけの目覚めにいまだ沈黙。

 ソフィアとクラリスが、沈黙のパオーンを捕獲。両側から口と手で凶悪性をたたき起こす。
 フレアとバーバラが、一枚一枚脱皮。二人は新参嫁の中でも、脂肪は豊だ。ややぽちゃで、抱き心地がよさそうな裸体を、レジに見せつける。

「びっくりした……。要するに、そういうこと?」
 レジは一応聞いてみる。
「シェイプアップエッチ、お願いします!」
 フレアとバーバラは、口をそろえて哀願。お口が忙しいソフィアとクラリスは、さらに熱意をこめて愛玩。

 野性の宴が始まった。

 嫁たちをいたぶり、いたぶられながらレジは思う。

またふにゅぽよお肉が、失われるだろう。ややポチャバラエティーも、大好物なんだけど、仕方ないか。
女の子は、スマートさを美徳と考える習性がある。
二段腹、三段腹は、健康的にもどうかと思うけど、おっぱいとお腹が、タプタプ揺れる光景は結構そそる。

 さらば、霜降りお肉。レジは赤身お肉量産に向けて、せっせと励むのであった。
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