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162 作戦開始

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 翌朝、俊也とミーナはシュミットの前線基地へ跳んだ。

ローランとユーノ、ブルー、イザベルも後方支援のため同行している。

「朝、ナームの動向を偵察してきました。
遅れていた地方領主部隊も合流しました。
いよいよだと思います。
今日は後から来た部隊を休ませる必要があると思います。
おそらくは明日の早朝」
 アンリが報告する。

「いよいよか。ミーナさんもきたし、作戦を確認する。
俺の予想では、この小山に魔導師部隊を集めると思う」
 俊也は地図のペケ印を指で押さえ、ユーノをうかがう。

「長距離魔法を放つにしても、標的を視認する必要があります。
高い場所に高い火力を置く。
絶対はずせないセオリーです」
 戦術に関しては、嫁の中で第一人者のユーノが答える。

「作戦会議が終わったら、俺が猫又になってその山に登る。
予想がはずれたら、転移でA班と合流する。
予想が合っていたら、魔導部隊をせん滅する。
A班のミーナとミネットは、この基地で待機。
俺から念話で指示があったら魔法陣に乗る。
小山に転移し、魔法で敵軍を攻撃。
ミスト部隊を支援する。
ここまではいいね?」
 俊也はミネットとミーナを見る。二人は緊張の表情でうなずく。

「B班は明日早朝、ポイントXで待機。
A班の攻撃開始を合図に、物資集積地を攻撃。
無線連絡で作戦の首尾を基地へ報告。
予定通り進んだら、簡易魔法陣でA班と合流。
アンリは責任を持って、簡易魔法陣自爆タイマーを入れること」

「はい!」
 アンリとアンは力強く応える。

「後方支援班は想定外の事態に備える。
必要があるとユーノが判断したら参戦を許可する。
何か質問は?」

 全員首を振って、質問なしの意思表示。

「じゃ、さっそく行ってくる。
できる限り、現地人との接触は避けて。
ニャンニャン!」

 俊也は猫又ナイトに変身し、基地を出発した。

全員「御武運を」の声で送り出した。

「みなさん。本当にご迷惑をおかけします」
 ミーナは深く頭をさげた。

「迷惑なんかじゃないよ。仲間だもん。
ね~?」
 ブルーが嫁たちに振る。嫁たちは笑顔でうなずいた。


 猫又ナイトは、目的地に到着。標高百メートルほどのこの山は、ナビス平原を見渡せる。

ナーム軍が高火力を置くには、ここしかないと俊也はにらんでいる。
ミスト側の国境は、高い山が連なっており、ここで攻撃を加えたら、密集状態で山道を抜けるミスト軍に大打撃を与えることができる。

ミスト軍は、そんな愚かな戦術はとらないだろうが、進軍に対する備えは不可欠だ。

さてと…。ナイトは転移魔法陣を作り、保存の魔法をかける。

『着いたぞ~』
 魔法陣に向けて念話で呼びかける。

『了解! ナーム軍に動きは?』
 ローランが念話で返す。

『ないみたい。斥候は来るかもだけど、やっぱり明日だろうな』

『了解。お天気もいいし、のんびりお昼寝でも』

『おやすみ』
 ナイトはそう言って、草の上に寝転んだ。

ナイトの中の俊也は思う。戦闘か……。本格的な殺し合いは初めてだな。

だけど、やるっきゃない。ナイトはさわやかな初夏の風の中、眠りに落ちた。


 二時間も眠っていただろうか。誰か山を登る気配がする。

ナイトは飛び起きて魔法陣を消す。

木の上に登り、気配を殺す。

十人ほどの兵が、木の下の平坦地まで登って来た。

「ふ~……。ここがいいですね。
隊長や副隊長が登るには大変でしょうが。
ミストネズミが這い出してきたら、叩き放題です。
多分山間部で、待ち伏せ作戦をとるでしょうが」
 若い魔導師風の男が言う。

「そうですな。
だが、裏をかいて進撃してくる可能性は無視できない。
ヨンド隊長たちには、無駄手間になっても、ご足労願わなければ」
 警護の兵士だと思われる中年兵が言う。

「その通りです。例のおびき出し作戦に乗ってきたら、無駄手間にもなりません。
少し休んでから下りましょう」

「はっ! ふもとの警備は、我々にお任せ下さい。猫の子一匹通しませんから。
はっははは……」

 猫又なら、もうここにいるんですけど。

俊也の思った通りの展開のようだ。
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