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147 館の春 大使館の秋

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 季節は廻り、雪解けが進む湖の館。

「俊也さん、お願いします」
「お願いします」
 風呂から上がったエンラン、マサラコンビが、俊也の部屋へ。

二人は37歳になっている。3で割って四捨五入すれば16歳。つまり、婚姻可能な年齢です(※当時)。
四捨五入していいの? いいんです! こちらでは、もろに結婚適齢期です!

 いや、ローラン、ユーノといたしたのが、これぐらいだったから、引き延ばすことができなかったのです。(-_-;)
 
 ということで……。二人は両側からベッドイン。

 俊也は感慨深い。とうとうこの日が来たか。嫁の実質完全制覇。

「え~っと、サービスしましょうか?」
 マサラが甘く聞く。
「いやいやいや。俺がサービスする」
 
「じゃんけんで、私が先です。
やさしくしてね」
 マサラが抱きついてきた。
「心して務めます!」
 俊也はマサラのやわな体を抱きしめた。

 さわり、さわり……。薄衣一枚のおっぱいをなでる。うん。小さいなりに成長してる。オジサン、うれしいよ!

 いまだにロリムードいっぱいなので、以下自粛。だだし、俊也は極めてスムーズにお勤めを果たしたと付記しておく。

翌日、魔法練習場。エンラン、マサラのロリコンビは、張り切っていた。

「充実してるのがわかる。
どれほど威力が上がってるんだろう?」
 エンランが興奮を抑えて言う。

「私も。あの岩、ふっとばせるかな?」
 マサラは、数十メートル先の小岩を見据えて言う。

昨日までは、半壊がいいところだった。

「やろう!」
「うん!」
 二人は目を合わせ、うなずき合う。

「インプロージョン!」
「インプロージョン!」
 二人は別の標的を狙い、魔法を発動。

どか~ん! 二つの岩は粉々に砕け散った。

「すごい……。俊也さんの中出し、マジで威力絶大」
 マサラがつぶやく。
「二発目でも、問題なかった。
すごすぎ」
 エンランもつぶやく。

昨夜俊也との本格セックス解禁。二人はその効果にじ~んと感動。

背後からの拍手に、二人は振り返り、深く礼をする。特に優しい目で見守る俊也に。

二人は内心焦っていた。実年齢は自分たちと同じくらいで、後から加わったのに、はるかに魔力量を持ったミネットの存在に。

「標準であの威力、基礎をしっかりやったおかげよ。
これから俊也とセックスを重ねたら、ますます威力は高まる。
おめでとう」
 館のラスボス、ルラがことほぐ。「X倍マシマシ」を使わず、あの岩を粉砕できたら、もうどこへ出しても恥ずかしくない魔導師だ。

もう少ししたら「どこへ出しても怖がられる」魔導師になるだろう。

「思うんだけど、ミストとナームのパワーバランス、崩れるかもしれないね?」
 二人の急変ぶりを、目の当たりにしたエレンが言う。

「使節団三人の基礎魔力量次第だけど、エンランとマサラ程度の器があったら完全に崩れる」
 フラワーは憂い顔で言う。「ミスト魔法研修使節団」は、一週間後館に到着する予定だ。

使節団員の器が、エンラン、マサラ程度に大きく、俊也がセックスをほどこしたら、ミストは大魔導師級の魔導戦士を、三人も手に入れることになる。

そうなれば、地対地ミサイル移動基地を、三つ手に入れたようなものだ。ミストは本格的にナームへ侵攻するかもしれない。

「仕方ないよ。断わるわけにいかないから」
 俊也は悲しそうな目で言う。自分の決断が戦争を引き起こすかもしれない。
それは十分わかっていることだった。

だが、館のメンバーを守るためなら、どこの国とでも戦う。それは俊也の信念だった。

今回は「関係ない」と、はねつけることもできた。そうした方がいいともわかっていた。

守る相手は、ミネットを捨てた母親と、彼女の実家なのだから。
そうするには、俊也の身内への情が、厚過ぎただけだ。
ミネットの生みの母親と、血縁者を見捨てられなかった。

「さあ、みんな、やるよ!」
 ルラが声をかけた。

近日中にこの魔法練習場は、元村人たちの宿舎を建てるため、更地にする予定だ。

上の第一練習場だったスペースは、すでに整地を終え、牧草地にするため草の種をまいている。
厩舎も昨年秋、すでに建てられている。

大使館にいるイザベルとミネット以外のメンバーは、一斉に魔法で整地を始めた。

俊也は思う。平和利用するだけなら、魔法は超便利なんだけど。

さあ、一眠りして手伝うか。

俊也は馬車にもぐりこんだ。猫ミックスの俊也は、いつでもすこ~んと眠ることができる。
ゆうべはことさら張り切ったことだし。日本の社会なら確実に犯罪となる行為で。


 日本の大使館。

ミネットは、寝る前の習慣で、剣の手入れをしようとしていた。

長剣をすらっと抜く。ミネットは五度レジ形態とセックス経験があるので、筋力は相当付いている。

以前は重くて振り回せなかったこの剣も、軽く感じられる。

この剣は、エレンの実家、ダイニー家に伝わっていた。エレンの次兄マーク・ダイニーの愛刀だった。

マークはダイニー家の家督相続権がなかったので、魔導戦士として働いていた。
ミスト王国の前王に乞われ、魔法の指導者としてミスト王国に赴任したわけだ。

ミネットの母親、ミーナは、とりわけ魔法の素質がある魔法戦士だった。

マークは、ミーナの美貌と魔法の素質に惚れこんだのだろう。ことさら「熱心」に指導したようだ。

ミーナが新王の妃として選ばれたとき、この愛剣をオズモン家に、お祝いとして贈ったという。

マークは、ミーナが王宮に入内(じゅだい)する少し前、イスタリアへ帰っている。

多分ミーナが妊娠したことを、知らなかったのだろう。魔力を持った女性の妊娠期間が、非常に個人差の大きいことは、前述の通りだ。

これも多分としか言えないが、ミーナも妊娠していたことに気付かなかったのだろう。

ミネットは、せめてそうであってほしいと願っている。詳しい事情を聞く気もないし、実父に会いたいとも思わないが。

実父は、イスタリアでも有名なプレイボーイだそうだから。現在も独身を謳歌していると聞く。
 
部屋のドアがノックされた。ミネットは剣を鞘に納め、はい、どうぞ、と応える。

「夜はずいぶん涼しくなったね。ホットココアよ」
 イザベルだった。

「うわ~、ありがとうございます!」
 イザベルは、ミネットを拾ったとき以来、一番彼女をかわいがってくれる。弓の師でもあるし。

「この部屋が好きだなんて、ずいぶん変わった趣味ね。この部屋で寝るの、あなたとアンぐらいよ」
 この部屋を一言で形容すれば、豪華なベッドが付いている拷問部屋だ。
つまり、特殊な趣味を共有するか、好奇心旺盛なカップルしか、選びそうにない部屋だ。

「俊也さん、この部屋案外好きみたいですよ。
備え付けの器具を、使ったことないですけど」
 ミネットは、ニンマリ笑って答える。

「まあいいんだけどね。人それぞれだし。あら……」
 イザベルは、ベッドに置かれた剣に目を留めた。確かにあの剣を飾っても、この部屋には違和感がない。

それでか。イザベルは納得する。他の部屋には違和感ありまくりだ。

「魔法研修生が来たら、館に置いておくのはまずいそうですから。
大使館に来た時ぐらい、私がちゃんと手入れしてやらないと」
 ミネットはいわくつきの剣を、壁にしつらえた木製フックにかける。
隣には、鞭各種が「飾られ?」ている。

「なんか地元の高校生に、懐かれてるんだって?」
 イザベルはマグカップをテーブルに置き、ソファーに座る。

「言葉は片言しか通じないけど、シンエイタイですって。色々なところ案内してくれますよ」
 ミネットは、向かいのソファーに座る。

「あれはやめてほしいんだけど。
外で大声で呼ぶの。
ミネットちゃ~ん!」
 イザベルは、最後を精一杯の太い声でまねる。

三人の不良君たちは、ミネットを呼ぶのに、気兼ねなんてしない。大使館周辺が田んぼでなければ、魔法で追い返すところだが。

「俊也さんが、敷地内に入ったらヤバいこと、教えてますから。
だけど、確かに恥ずかしいな。
スマホ、買ってもらおうかな」
 ミネットはホットココアをすする。

あの三人は、この近辺で、多少は顔が売れた不良らしい。
陰湿なところがないので、ミネットは格好の案内役として、三人にお供をさせている。

ミネットは嫁の中で、最も好奇心が旺盛だ。俊也にねだって買ってもらった自転車で、付近を散策するのが大好きだった。

今夜も三人に「アキマツリ」へ案内してもらった。できれば俊也と二人で、屋台など冷やかしたかったのだが、俊也は何かと忙しい。

「アキマツリ」も、ミネットには初めての経験だった。ああいった風習は、あちらの世界にないものだ。
大きな街には、近いものがあるかもしれないが、すくなくともミネットは知らない。

「日本って、びっくりするほど人が多いですね。どれぐらいいるんだろう?」
  ミネットは「チバケン」が田舎だという認識があった。事実大使館の周辺に限れば、まさにそのとおり。

今日は三人に連れられ、少し遠出した。すると、王都以上のにぎわいだった。「マツリ」だったこともあるのだろうが。

「一億二千万人ぐらいだと聞いたよ。
東京は一千万人ぐらい。千葉は聞いてない」
 イザベルは答える。

「一億二千万か。ぴんとこないな。
イスタルトはどれぐらいなんだろう?」
「正確にはわからないけど、二千万人くらいじゃないかって」
「広さは?」
「日本が百個ぐらい入るだろうって」
「なるほど。イスタルトがさみしく感じるわけだ」
 ミネットは納得する。
「あなた、本当に適応力あるよね?」
 イザベルは実感を込めて言う。ミネットは、人里離れた山中に、育ての父親と、ほとんど二人だけで暮らしていた。
普通はもっと人見知りするところだろうが、あっという間に内懐へ入ってしまう。
言葉もろくに通じない日本人とも、仲良くなってしまった。

イザベルはカントでもこちらでも、関係者以外、知人・友人と呼べる人間はいない。

「そういえばそうですよね。どうしてだろう?」
 ミネットは考え込む。その様子を微笑ましく見ながらイザベルは思う。
きっと、その素直さが秘密だよ。お母さんとも、素直に付き合えたらいいね。

またイザベルは思う。向こうへ帰ったら、手紙でも書くか。お母さまに。

彼女の母親は子爵の側室。今の自分から考えたら、決して恵まれた境遇とは言えなかった。

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