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139 君をきれいにしてあげよう

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「ざ、ざ、ざっ、ざ。雪が、降ってきたよ~…」
 俊也は某国営放送で覚えた歌を歌いながら、雪を踏みしめる。超有名なミュージシャンが作った子供向けの歌だ。

朝陽が大好きだった。東京でたまに雪が降ったら、朝陽は大騒ぎだった。
カントで生まれ育ったら、とても大騒ぎする気になれないだろうが。

そういえば……、超有名なアメリカ製映画を思い出した。

俊也は一応除雪してある道を外れ、雪を丸める。

その雪玉を核として転がす。もちろんあの歌を歌いながら。

あの会社は、著作権が超うるさいらしいから省略する。「雪だるま……」どうのこうのという歌。

よっし! 下の方は完成! 

俊也は新たに雪玉を作り、同じ作業を繰り返す。

雪はいくらでもあるから、そんなに動かなくてもすぐできちゃう。

小さめの雪玉を、さっきの雪玉に乗せる。

雄大なおっぱいを二つくっつけて…よっし! 
あの隊士の恋人完成! 

隊士君、君にとって、あのぽっちゃりお嬢さんは豊穣の女神。

大変な部分も見せてもらったし、俺は密かに応援しちゃうからね。

しっかり頑張るんだよ!

「俊也さん、何やってるんですか?」
ヤバイ、ブルーだ。

気づいたら、スキー板をかついだブルーとアンリが、不思議そうな顔で俊也を見ていた。

「これは雪だるまという。英語ではスノーガール…もとへ、スノーマン。
ブルー、アンリ、ラブミーテンダーで飲もう!」 
 俊也は隊士とあの恋人のために、二人を誘った。

隊士君、君は超ラッキーだったね。危ないところだった。


 アンリは母親に引っ張られ、知り合いの家に往診。

ごめん、アンリ。俊也は心の中で手を合わせる。

明日向こうに帰ったら、何か買っておくから。明日は最終の学科試験がある日だった。

「さあ、ブルー、なんでもいっちゃって! 
飲み物は何?」
「なんか怪しいな。
俊也さん、何か私に隠し事してない?」
 
ギクリ……。

ブルーは疑いの目で俊也を見る。
「俺が隠し事なんてするわけないじゃん! 
マスター、ウイスキーのお湯割り! 
ブルー、寒かっただろ? 
お湯割りで温まろうよ」

「こっちで気になる女が、できたとか?」

「いや、ナイナイナイ!」

「俊也さん、ナイナイナイは、ないでしょ? 
はい、つきだし」
古株おねえさんが、つきだしのナッツを二皿置いて俊也の隣に座る。
このつき出しシステムは、俊也が教えた。

のんべえは、注文の料理ができるまで酒を待てないと、俊也は父親から学んでいた。

「おねえさんも、何でもいっちゃって」
「やっぱり名前も覚えてないんだ?」
おねえさんは苦笑して「ウイスキー水割り」と、アダムに注文。

「なるべく街の人と、関わり持ちたくないんだ。
お互い名前を覚え合ったら、もうひっかかりができてる」
 俊也は本音で答えた。

「それでいいと思うよ。
館の人たちは私たちと違う。
多分違うまま生きる必要が、あるんだよね?」  
 
おねえさんは、超鋭く俊也の心理を忖度する。

「まあ、館は浮世の感覚と、違う女が生息してるから」
俊也は本音を交えながら、お茶を濁す。

「あの館の最高神は、俊也さんらしいけど、ちょっと雑に生き過ぎた。
現に娼婦とこうして飲んでる。
私たちが見たことない三人の大魔導師。
その眷族は、カントで力の一端をちらちら見せる。
眷族でも、驚くほどの力があるんだから、三人はどれほどすごいんだ、ということで、想像力が尾ひれをつけまくる。
三人が主役になって、後二三年もすれば、イスタルトに広がると思う。
五六年もすれば、中央大陸全土に。
多分伝説って、そういうふうにできるんだろうね」
俊也はおねえさんの洞察力に舌を巻いた。

やはりカントの人は、そんなふうに館の住人を見ているのか。

おねえさんの言う「伝説」少し軌道修正する必要がある。
春になったら、妊婦嫁、下の人と交流を持たせよう。

幹部嫁三人は、カントへ来てすぐに妊娠し、俊也は必要以上に彼女たちを囲いすぎた。

「噂っていえばさ、よくない話が聞こえてくるよ。
ナームの方から。
貧乏王国起死回生の一手。
魔物に魔法を使わせる魔法、実用化に近づいてる、なんてね。
本当なら、悪の大魔王が誕生しちゃうかもね。
俊也さん、なんとか手を打っておいた方が、いいんじゃない?」
ホットウイスキーを飲む、俊也とブルーは固まった。

「マジで?」
 ブルーが聞く。

「マジだったら、超ヤバイってこと」
 おねえさんは、わけありげに笑う。

この人、何者? 俊也はおねえさんの手を取った。

「二階へ行こう」
「ブルーちゃん、かまわない?」
 おねえさんは、ブルーにほほえみかける。

「どうぞ」
 俊也の意思を忖度したブルーは、許可を与えた。

この女性、どこかの国が送ったスパイだ。多分間違いない。

 ラブミーテンダー二階、愛の部屋。


「私がどこから流れてきたかは言えない。
どうしてカントに来たかは、想像がついてると思う。
それ以上は聞かないと、約束できる?」
 おねえさんは、「愛の部屋」へ入るなりそう言った。

おねえさんは、ちょっとコケティッシュで、不思議に「かわいい」と思わせる容貌だった。広く開いた胸元、おっぱいの谷間は、ルマンダの双丘をさらに緩めた感じ。仰向きなら、つきたて餅のように、つぶれてしまうのではいか?
うつむきで垂らしたら、きっとすごい。それほど柔らかそうに見える。
いわゆるウシ乳? 俊也の好みから言えば、総合点でストライクゾーン。

「約束する」
 俊也は答える。

「抱いてもらえたら、もう少し口が軽くなるかも」
 おねえさんは、俊也の手をおっぱいに導いた。

まさにウシ乳の柔らかさ! 牛の乳、触ったことないけど。

この世界で実年齢は、はなはだ推定しにくい。したがって年齢は不詳だが、多分この店でナンバーワンの売れっ子だろう。
なんとなく貴族の血が混じっていそう。俊也はそんな印象を持った。

「ごめん。館以外の女性と交われないんだ」
 俊也は手を、おねえさんの手の動きに任せながら、そう言った。
 だって、やっぱりルマンダより柔らかいんだもん!
 おねえさんの手を、振り払うなんてできません!
 いや、どっかのスパイは確定。彼女を意図をさぐるため、邪険にできないでしょ? と、自らに言い訳。

『おっぱいなら、なんでもいいんだろ?』
 頭の中のナイトがチクリ。
『そうだよ! なんでもいいんだよ!』
 俊也は頭の中で開き直る。

「意地悪……」
 おねえさんは、俊也の手をおっぱいから下方へ導いた。

「サービスだけだったら可能だけど。
それで口は軽くなる?」
 俊也はおねえさんの「下方」で、指を遊ばせながら言う。

「ふん……。軽くなるとおも…ふ~ん……」
おねえさんは、長いスカートを持ち上げる。俊也の指は下着の上から……。
 こすり、こすり……。くにゅ、くにゅ……。
 
「きっと知りたいんだろ? 
アンリやアンが、どうしてあんなに強くなったのか」
 うっとりしていた、おねえさんは一瞬固まった。

俊也は彼女の名前は知らないが、顔は覚えていた。アンリとアンをスカウトしたとき、このおねえさんは、すでにこの店でいた。

「魔物が魔法を使えるようになったとしても、多分それほどの脅威にはならない。
きっと魔物を触媒にして、魔導師が魔法を使うという形になるだけだ。
使い方によっては、ある程度の武器になるだろうね。
魔物自体は、かなり魔力を持ってるらしいけど、自分たちの意志では魔法を放てないはず。
違ってる?」
 俊也は指での追及を施しながら、言葉でも追及する。

「もう……。人が悪い」
おねえさんは、俊也の手をスカートから出した。

「イスタルトの貴族が、雇ったわけじゃないね? 
まあ、どこの国から流れてきたかは、聞かない約束だった。
ナームの悪あがき、多分本当のことだと思う。
そう思っていい?」
 俊也はベッドに腰をおろしてそう聞く。

「あなたが、まがいものの餌で釣れるなんて思ってないよ。
私、この店でいていいの? 
けっこう楽な任務なんだけど」

「どうぞどうぞ。
君をきれいにしてあげよう。
それで満足して」
 
俊也はおねえさんの、露出過剰ドレスに手をかけた。
 

 全裸のおねえさんは、ベッドの上で虚脱していた。俊也は、合体以外のフルコースを、おねえさんにサービスした。
俊也はおねえさんの、裸体に布団をかけてやった。

「名前は?」
 俊也はおねえさんの裸体に、大いなる未練を残しながら聞いた。歳は見た目より高いかもしれない。
 体のラインは崩れかけている。だが、その「崩れかけ」不思議に男の性欲をそそる。
 俊也が「偶然」閲覧したネットの映像。「熟女」ものは「ロリもの」より好きだった。
 あくまで「偶然」であること、大切なことであるので強調しておく。

「いいの? ひっかかりができちゃうよ?」
 おねえさんは物憂げに聞いた。

「本当なら、もっとひっかかり、つけたかったんだけど」
「ライラ。本名だから」

「OK、ライラ。雇い主によろしく言っておいて。
ここまでは報告していい。
館の女性は、俺と性交することで強くなるようだ。
君が想像している通りだよ」
 そう言って、俊也は「愛の部屋」を出た。

ライラは思う。そうか、私への思いやりの意味もあったのか。
彼と性交して、秘密の全部を知ってしまったら、私がカントでいる意味はなくなる。

しっかり確認をとるため、鋭意誘惑活動実施中。
当分はそれでごまかせる。

ライラの雇い主は、しびれをきらせ、別の任務につかせたいと思っていたようだ。

カントでは、体を売る必要はあるが、命のやりとりをするような仕事はない。

普通娼婦は、客を選べない。体調が悪くても無理に客を取らせる店もある。

ライラが仕掛けてみようと考えたのは、居心地のいいこの店から、離れるのが嫌だったからだ。

それにしても、娼婦にここまで尽くすとはね……。あの館の人たち、引きこもりでがまんできるわけだ。

エッチを生業(なりわい)とする彼女は、久しぶりに、体がとろけるような快感を味わっていた。
 

 翌日、彼女は「きれいにしてあげよう」という、俊也の言葉の意味が、はっきりと分かった。
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