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112 いつ飲み会確定したの?
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静香の画廊。同様の種類の客足が絶えない。幽霊を何度も出すわけにいかず、俊也とミネットは、一時間ほど待っていたが、静香との話をあきらめることにした。
「すみません。閉店までデートしてます。何時ですか?」
客足が途切れたところを見計らい、俊也は静香に声をかけた。
「現実、理解してもらえた? この店、もう続けられない。
その責任どうとってもらえるか相談しよう。
六時に閉めるから、どこかで暇つぶしてて」
なるほど。だから店での面会か。
だけど、責任? なんだよそれ?
まあ、責任は俺にしかないか……。相当おっかないが、六時まで待つしかない。
涼しいデパートで、六時前まで過ごした。
デパートは高くつくが、たまにはいいだろうと、つい迷い込んでしまった。
ミネットにTシャツを買ってやった。
値札の桁を、ちょっぴり見誤っていた。支払いの時、やっと気づいた。高っ!
どうしてTシャツがこのお値段? ブランド、怖っ!
アメ横で買っておけば、と後悔することしきり。地下で和菓子をお土産に買い、涼ませてくれたデパートへの義理は一応果たせた。
三時間ほどのショッピングデート。だが、何を見ても物珍しそうにはしゃぐ、ミネットを見ているだけでも、幸せ気分になれた。
いよいよ「お父さんみたい」だ。
画廊に帰ったら、思いがけない人が待っていた。
「フミちゃん! 久し振りだ。すっかり元気そうだね!」
隣の野本夫人へのあいさつも忘れ、俊也はフミに駆け寄った。
「俊也さん!」
フミが俊也に飛びついてくる。俊也はしっかりハグで返し、フミを抱えあげる。
「うん、いいぞ。少し重くなった? 普通のレディーには失礼だけど、君にはほめ言葉だよ」
「わかってるよ~! 少しずつ運動増やしてるの。そしたら、お腹がすくの。
お腹がすくって、超幸せなことなんだ?
そう思ってる」
「そうかそうか……。なんだか涙が出ちゃうよ。
よかった、よかった」
ちゅっ……。フミが俊也の唇を軽く奪う。
「へへへへ……、お母さん、ファーストキスいただいちゃった」
フミはあどけない笑顔で母親に笑いかける。母親は目じりを指でぬぐって、何度もうなずく。
「ところで……」
俊也が「どうしてこの店に?」と、言いかけたところ、
「ところで俊也さん、あの女の人、なんなの?」
フミが機先を制した。
「ああ、俺の最新の嫁。名前はミネット。
こっちの言葉が、よくわからないからごめんね」
「最新の? つまり、ローランさんとユーノさんの他にもいるわけ?
お嫁さんが」
「うん。まあ、そうなんだけど。ほんの十四人ばかりだから」
俊也は恐る恐る答える。
「よかった~! ローランさんやユーノさんに勝てるわけないし、どうしようかと思ってたの。
そんなにいっぱいいるなら、一人ぐらいまぎれこんでも大丈夫だ。
俊也さん、期待してね。
うんと女を磨くから」
彼女にとって自分は命の恩人。俊也は、ちょっとヤバい展開かな、と思っていたが、彼女の発想は、斜め上をいっていた。
フミと彼女の母親に、この店で会ったのは、全くの偶然だった。
野本夫人は静香と面識が、以前からあったらしいが、ルマンダの絵の噂をどこからか聞きつけ、「商談」に来たのだという。
マスコミは当然ルマンダの絵について知っているが、どの社も記事にしようとしない。
理由はお分かりだと思う。
「その商談というのは?」
接客用のイスで落ち着いてから、俊也は夫人に聞いた。
「フミの快気祝です。父が歓喜のあまり約束しちゃったんですよ。
なんでも買ってやるぞって。
フミの希望がローランさんの絵だった、ということです。
なんとかなりませんか?
フミはローランさんに憧れてるんです」
俊也はなるほど、と納得。
「話は聞いたわよ、究極の名医さん。
あの絵、売ってもいいよね?」
飲み物を運んできた静香が言う。
「五百万でいいです。どうか買ってやって下さい」
俊也はもちろん快諾。ローランもフミをずっと気にしていた。きっと喜んでくれるはず。
「相場は最低が五千万だそうですよ。気にしなくていいですから、相場通りで」
「俊也君、本当に気にしなくていいよ。
弥生さんのお父さん、億単位でもびくともしないから。
実際億を提示するバイヤーもいる。
もらえるものは、もらっておきなさい」
静香がイスに座って言う。そうか、気にしなくていい筋なのか。
油断した俊也は、つい見てしまった。乳輪と乳首の色が嫁たちとは違って……、
コホン……。
いや、俺にはおっぱいへの責任があるからね、って、なんの責任だよ、と自分で突っ込んだりして。
ちょっとまずいかもしれない、と気づいたことがあったが、いかんともしがたし。野本夫人、以前見た時より、若々しくなってる。乳首と乳輪の色も。おっぱいにも心なしか張りが増したような。
それにしても、人妻おっぱいもいいもんだ。見るだけなら。
ね~?
「じゃ、五千万で」
俊也の提示した価格に、弥生は「お願いします」と、応える。契約成立。
静香との契約は売上の二割だから、店を続けられなくなった責任も、いくらか果たせたと、少しほっとする。
「俊也さん、今夜の飲み会、私とフミも混ぜて下さい。是非ご相談したいことがあるんです」
弥生から思いがけない提案があった。
もっと思いがけなかったのは、「今夜の飲み会」が、確定しているらしいことだった。
「すみません。閉店までデートしてます。何時ですか?」
客足が途切れたところを見計らい、俊也は静香に声をかけた。
「現実、理解してもらえた? この店、もう続けられない。
その責任どうとってもらえるか相談しよう。
六時に閉めるから、どこかで暇つぶしてて」
なるほど。だから店での面会か。
だけど、責任? なんだよそれ?
まあ、責任は俺にしかないか……。相当おっかないが、六時まで待つしかない。
涼しいデパートで、六時前まで過ごした。
デパートは高くつくが、たまにはいいだろうと、つい迷い込んでしまった。
ミネットにTシャツを買ってやった。
値札の桁を、ちょっぴり見誤っていた。支払いの時、やっと気づいた。高っ!
どうしてTシャツがこのお値段? ブランド、怖っ!
アメ横で買っておけば、と後悔することしきり。地下で和菓子をお土産に買い、涼ませてくれたデパートへの義理は一応果たせた。
三時間ほどのショッピングデート。だが、何を見ても物珍しそうにはしゃぐ、ミネットを見ているだけでも、幸せ気分になれた。
いよいよ「お父さんみたい」だ。
画廊に帰ったら、思いがけない人が待っていた。
「フミちゃん! 久し振りだ。すっかり元気そうだね!」
隣の野本夫人へのあいさつも忘れ、俊也はフミに駆け寄った。
「俊也さん!」
フミが俊也に飛びついてくる。俊也はしっかりハグで返し、フミを抱えあげる。
「うん、いいぞ。少し重くなった? 普通のレディーには失礼だけど、君にはほめ言葉だよ」
「わかってるよ~! 少しずつ運動増やしてるの。そしたら、お腹がすくの。
お腹がすくって、超幸せなことなんだ?
そう思ってる」
「そうかそうか……。なんだか涙が出ちゃうよ。
よかった、よかった」
ちゅっ……。フミが俊也の唇を軽く奪う。
「へへへへ……、お母さん、ファーストキスいただいちゃった」
フミはあどけない笑顔で母親に笑いかける。母親は目じりを指でぬぐって、何度もうなずく。
「ところで……」
俊也が「どうしてこの店に?」と、言いかけたところ、
「ところで俊也さん、あの女の人、なんなの?」
フミが機先を制した。
「ああ、俺の最新の嫁。名前はミネット。
こっちの言葉が、よくわからないからごめんね」
「最新の? つまり、ローランさんとユーノさんの他にもいるわけ?
お嫁さんが」
「うん。まあ、そうなんだけど。ほんの十四人ばかりだから」
俊也は恐る恐る答える。
「よかった~! ローランさんやユーノさんに勝てるわけないし、どうしようかと思ってたの。
そんなにいっぱいいるなら、一人ぐらいまぎれこんでも大丈夫だ。
俊也さん、期待してね。
うんと女を磨くから」
彼女にとって自分は命の恩人。俊也は、ちょっとヤバい展開かな、と思っていたが、彼女の発想は、斜め上をいっていた。
フミと彼女の母親に、この店で会ったのは、全くの偶然だった。
野本夫人は静香と面識が、以前からあったらしいが、ルマンダの絵の噂をどこからか聞きつけ、「商談」に来たのだという。
マスコミは当然ルマンダの絵について知っているが、どの社も記事にしようとしない。
理由はお分かりだと思う。
「その商談というのは?」
接客用のイスで落ち着いてから、俊也は夫人に聞いた。
「フミの快気祝です。父が歓喜のあまり約束しちゃったんですよ。
なんでも買ってやるぞって。
フミの希望がローランさんの絵だった、ということです。
なんとかなりませんか?
フミはローランさんに憧れてるんです」
俊也はなるほど、と納得。
「話は聞いたわよ、究極の名医さん。
あの絵、売ってもいいよね?」
飲み物を運んできた静香が言う。
「五百万でいいです。どうか買ってやって下さい」
俊也はもちろん快諾。ローランもフミをずっと気にしていた。きっと喜んでくれるはず。
「相場は最低が五千万だそうですよ。気にしなくていいですから、相場通りで」
「俊也君、本当に気にしなくていいよ。
弥生さんのお父さん、億単位でもびくともしないから。
実際億を提示するバイヤーもいる。
もらえるものは、もらっておきなさい」
静香がイスに座って言う。そうか、気にしなくていい筋なのか。
油断した俊也は、つい見てしまった。乳輪と乳首の色が嫁たちとは違って……、
コホン……。
いや、俺にはおっぱいへの責任があるからね、って、なんの責任だよ、と自分で突っ込んだりして。
ちょっとまずいかもしれない、と気づいたことがあったが、いかんともしがたし。野本夫人、以前見た時より、若々しくなってる。乳首と乳輪の色も。おっぱいにも心なしか張りが増したような。
それにしても、人妻おっぱいもいいもんだ。見るだけなら。
ね~?
「じゃ、五千万で」
俊也の提示した価格に、弥生は「お願いします」と、応える。契約成立。
静香との契約は売上の二割だから、店を続けられなくなった責任も、いくらか果たせたと、少しほっとする。
「俊也さん、今夜の飲み会、私とフミも混ぜて下さい。是非ご相談したいことがあるんです」
弥生から思いがけない提案があった。
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