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95 拾った少女
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配信を終えたカナと琴音。
「琴ちゃん、どう考えてもやり過ぎだよ」
俊也さんに絶対怒られる。カナは勢いで付き合ったものの、今後が不安でしかたがない。
きっと大騒動になるだろう。
「これぐらいのインパクトがなきゃ。
ウシシシ…未成年高校生を盾にしたら、マスコミは防げる。
秘密知りたい?
だったら金を払え。こちとら遊びでやってんじゃね~ぞ!」
「遊びでやってるでしょ?」
カナはジト目で言う。
「まあ、いざとなったら、あんたはあっちへ逃げればいいの。
わたしゃ有名人になりたい。カネ儲けじゃ~!」
カナは大きくため息をつく。
カナは確かに相談した。
「顔出しNGで、ルラさんたち、〇チューブでバイトできないかな?」
後の企画は、すべて琴音主導。
ルラ達は、ネット事情なんてまるで知らない。
顔が出なければ可、と思い込んでいた。
「円がウハウハですよ! 羽根をはやして、懐の中に飛びこんできますよ!」
「それはすごい魔法だ! 私達もマスターしたい!」
てな感じで、乗せられてしまった。
大いにしり込みしていたカナだったが、いつの間にか巻きこまれていた、というのが実情だ。
まあ、開き直ってゼニ儲けだ! 私は顔が出ても平気だし……、仮定じゃなかった。
出ちゃった。どうしよう……。
新たな悩みを抱えたカナだった。
ちなみに、カナが魔法を使えそうになったのは、本当だった。俊也がせっせと励んでくれたおかげだ。
カナは、わずかながら魔力を備えていた。魔力量はRPGのように数値化できないが、仮に一としておこう。一の四倍は四、四の四倍は十六……。おわかりいただけたかと思う。
そして、意外なことにカナの最大魔力量は、まだ底が見えない。
ルラ達と雑談していたとき、俊也の魔力光が、はっきり見え始めていたことを話した。ルラは改めてカナの魔力量を量り、びっくりした。
魔法学校に入学できるレベルだった。初等魔法を覚えたら、地球の環境でも使えるだろう。
したがって、次回予定の『カナ、魔法を修行する』は、決して絵空事企画でないのだ。ルラ達は教える気満々だし。
魔法を使えるようになったら、私、どうなるんだろう? そう考えると、やっぱり怖かった。
俊也たちは、街で強盗をその筋に引き渡し、また旅を始めた。
相手は盗賊。しかも二人がかりで女を狙うような卑劣なやつ。誰も治療なんかしたくない。
だが、さすがにあのまま放っておくわけにいかないと、俊也は判断した。せめて、添え木ができるようにしてやろう。
ローランは、全身麻酔レベルで二人を眠らせた。ブルーに任せたら怖い。
イザベルが、こんな感じかな、というレベルに腕を戻した。
多少ずれているかもしれないが、後は知らない。
添え木だけして、包帯ぐるぐる巻き、はい、終了。
起こしたらうるさそうなので、眠らせたまま引き渡した。ローランによれば、そろそろ目覚めるんじゃないかな、という時点で。
その街の警察組織は、カントと同様。軍人が駐屯し、警察機能を代行していた。それで充分な治安が保てるはずもない。
やっぱりSA新撰組は必要だ、と俊也は改めて思った。足もとで起こるごたごたは、気持ちのいいものではない。
お荷物たちの編成は、このようになっている。
三台目は、ブレイブを含めた元村人の男三名。四台目がニーナを含めた元村人女三人。その次がミネットの馬車。
彼女の馬車だけは幌がついていない。一応前の街で防水用の幌は買ったが、天気がよかったので、荷物はさらしたままだ。
ミネットは後ろの荷物を振り返る。俊也たちをいつまでも待たせるわけにいかないので、父親を埋葬した後、必要な物だけ馬車に乗せた。
さっぱりしたものだ。
父親との生活を思い出す。彼女の父親は、たくましく強かった。魔法も使えた。このあたりで一番の猟師だったと思う。
自分の怪我やミネットの病気も、父親は簡単に治せた。
ミネットは母親の顔も名前も知らない。父親が昔何をしていたのかも。
父親は誰の力も借りず生きてきた。そしてミネットを一人で育ててきた。
冬場はミネットに魔法を教えた。この冬から治癒魔法を教えてもらえるはずだった。
ミネットは、悔しくてならない。自分の成長が遅いこと。
治癒魔法は、体力がなければ、使ってはいけないそうだから。
彼女は攻撃魔法を使えた。襲われたときも、魔法が使えたら、あんな盗賊など一撃で撃退できただろう。
だが、気が急(せ)くあまり、杖を忘れていた。
杖がなければ、彼女は魔法を発動できなかった。いや、そう思い込んでいた。ローランの魔法を見るまでは。
緊急の場合なら、杖なしでも魔法が使えるという。魔法効果は落ちるそうだが、事実実践して見せてくれた。
ブルーにこう言われた。
「私たちに付いてくる? 一人で生きられる自信がないなら、そうした方がいいよ」
ローランにも励まされた。
「あなたは魔法の素質がある。ある秘儀で鍛えたら、信じられないほどの力が得られる」
ミネットは迷うことなく応えた。
「付いていきます! お願いですから連れていってください」
今となっては、多少後悔している。不安で、寂しい……。
人間って、あんなに簡単に死んじゃうんだよね。あのお父さんが、魔法を使う余裕もなく死んじゃった。
「琴ちゃん、どう考えてもやり過ぎだよ」
俊也さんに絶対怒られる。カナは勢いで付き合ったものの、今後が不安でしかたがない。
きっと大騒動になるだろう。
「これぐらいのインパクトがなきゃ。
ウシシシ…未成年高校生を盾にしたら、マスコミは防げる。
秘密知りたい?
だったら金を払え。こちとら遊びでやってんじゃね~ぞ!」
「遊びでやってるでしょ?」
カナはジト目で言う。
「まあ、いざとなったら、あんたはあっちへ逃げればいいの。
わたしゃ有名人になりたい。カネ儲けじゃ~!」
カナは大きくため息をつく。
カナは確かに相談した。
「顔出しNGで、ルラさんたち、〇チューブでバイトできないかな?」
後の企画は、すべて琴音主導。
ルラ達は、ネット事情なんてまるで知らない。
顔が出なければ可、と思い込んでいた。
「円がウハウハですよ! 羽根をはやして、懐の中に飛びこんできますよ!」
「それはすごい魔法だ! 私達もマスターしたい!」
てな感じで、乗せられてしまった。
大いにしり込みしていたカナだったが、いつの間にか巻きこまれていた、というのが実情だ。
まあ、開き直ってゼニ儲けだ! 私は顔が出ても平気だし……、仮定じゃなかった。
出ちゃった。どうしよう……。
新たな悩みを抱えたカナだった。
ちなみに、カナが魔法を使えそうになったのは、本当だった。俊也がせっせと励んでくれたおかげだ。
カナは、わずかながら魔力を備えていた。魔力量はRPGのように数値化できないが、仮に一としておこう。一の四倍は四、四の四倍は十六……。おわかりいただけたかと思う。
そして、意外なことにカナの最大魔力量は、まだ底が見えない。
ルラ達と雑談していたとき、俊也の魔力光が、はっきり見え始めていたことを話した。ルラは改めてカナの魔力量を量り、びっくりした。
魔法学校に入学できるレベルだった。初等魔法を覚えたら、地球の環境でも使えるだろう。
したがって、次回予定の『カナ、魔法を修行する』は、決して絵空事企画でないのだ。ルラ達は教える気満々だし。
魔法を使えるようになったら、私、どうなるんだろう? そう考えると、やっぱり怖かった。
俊也たちは、街で強盗をその筋に引き渡し、また旅を始めた。
相手は盗賊。しかも二人がかりで女を狙うような卑劣なやつ。誰も治療なんかしたくない。
だが、さすがにあのまま放っておくわけにいかないと、俊也は判断した。せめて、添え木ができるようにしてやろう。
ローランは、全身麻酔レベルで二人を眠らせた。ブルーに任せたら怖い。
イザベルが、こんな感じかな、というレベルに腕を戻した。
多少ずれているかもしれないが、後は知らない。
添え木だけして、包帯ぐるぐる巻き、はい、終了。
起こしたらうるさそうなので、眠らせたまま引き渡した。ローランによれば、そろそろ目覚めるんじゃないかな、という時点で。
その街の警察組織は、カントと同様。軍人が駐屯し、警察機能を代行していた。それで充分な治安が保てるはずもない。
やっぱりSA新撰組は必要だ、と俊也は改めて思った。足もとで起こるごたごたは、気持ちのいいものではない。
お荷物たちの編成は、このようになっている。
三台目は、ブレイブを含めた元村人の男三名。四台目がニーナを含めた元村人女三人。その次がミネットの馬車。
彼女の馬車だけは幌がついていない。一応前の街で防水用の幌は買ったが、天気がよかったので、荷物はさらしたままだ。
ミネットは後ろの荷物を振り返る。俊也たちをいつまでも待たせるわけにいかないので、父親を埋葬した後、必要な物だけ馬車に乗せた。
さっぱりしたものだ。
父親との生活を思い出す。彼女の父親は、たくましく強かった。魔法も使えた。このあたりで一番の猟師だったと思う。
自分の怪我やミネットの病気も、父親は簡単に治せた。
ミネットは母親の顔も名前も知らない。父親が昔何をしていたのかも。
父親は誰の力も借りず生きてきた。そしてミネットを一人で育ててきた。
冬場はミネットに魔法を教えた。この冬から治癒魔法を教えてもらえるはずだった。
ミネットは、悔しくてならない。自分の成長が遅いこと。
治癒魔法は、体力がなければ、使ってはいけないそうだから。
彼女は攻撃魔法を使えた。襲われたときも、魔法が使えたら、あんな盗賊など一撃で撃退できただろう。
だが、気が急(せ)くあまり、杖を忘れていた。
杖がなければ、彼女は魔法を発動できなかった。いや、そう思い込んでいた。ローランの魔法を見るまでは。
緊急の場合なら、杖なしでも魔法が使えるという。魔法効果は落ちるそうだが、事実実践して見せてくれた。
ブルーにこう言われた。
「私たちに付いてくる? 一人で生きられる自信がないなら、そうした方がいいよ」
ローランにも励まされた。
「あなたは魔法の素質がある。ある秘儀で鍛えたら、信じられないほどの力が得られる」
ミネットは迷うことなく応えた。
「付いていきます! お願いですから連れていってください」
今となっては、多少後悔している。不安で、寂しい……。
人間って、あんなに簡単に死んじゃうんだよね。あのお父さんが、魔法を使う余裕もなく死んじゃった。
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