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67 正義の幽霊?

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 四日後、ポナン一行は、カントの地へ後三日という街で、立ち往生してしまった。

ゆうべは式が大挙して襲来した。神経が病んでいた一人が、とうとう小規模魔法、ファイアウオールを使ってしまった。宿の中で。

当然宿は全焼。両隣りにも延焼。幸い、宿は襲撃で大騒ぎだったので、宿の客やご近所は、みんな外で野次馬と化していた。

ポナンの部下は、賊が襲撃してきたと言い張った。だが、たっぷりいた目撃者たちは、ポナンの部下たちが、どったんばったん暴れまわったとしか証言しなかった。

何人かは、小柄な黒ずくめの人影を目撃した。すぐにその者たちは消えた。

翌日、野次馬の中に、こんなひそひそ話を広める少女たちがいた。

「私も人影見たけど、あれって幽霊らしいよ。
あいつらが泊まった街道の宿に、毎晩出たって評判よ。
見なかったことにした方がいいよ。
毎晩出るんだよ。毎晩。
言ってて怖くなっちゃったよ~! 
私は何も見なかった。
呪われるようなことやった、あいつらが悪いんだよ!」

目撃者は貝より固く口を閉ざした。実際焼け跡から死体は全く出なかった。

部下たちが剣や魔法で、何人か倒したはずなのに。

また、旅の商人から「本当に毎晩出た」という客観的(実はいい加減)な情報もあった。

迷信深い街人が、ペラペラしゃべるはずはなかった。この街道の怪談話は、代々受け継がれていくことだろう。



ポナンと側近二人だけは、馬を飛ばして逃げ出した。

残された気の毒な部下たちは、全員逮捕された。彼らにとって、木端警官など目ではないが、反抗する気力も失っていた。


ポナンの残した馬車の底には、大量の金貨が隠されていた。

誰が書き残したのか不明だが、馬車の中には「馬車の底に金貨あり。これで火事被害者に保障すること」という書置きが、残されていた。

街の人々はこう噂した。

「親玉は大魔導師だってさ。きっと馬車には結界を張ってたはずだ」

「大魔導師の結界を破れるほどなら、上級魔導師か…やっぱ幽霊?」

「幽霊の恩返し?」

「街の衆に迷惑をかけたわびだ!」

「いい幽霊もいるんだ!」

勝手に「正義の幽霊」の噂は広まった。
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