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65 どうして嫁になったんですか?
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馬車を一時間近くギシギシ言わせ、ぴたっと静まった。
前の馬車に乗っていたユーノは、一呼吸置いて後ろの馬車へ。
俊也が持ち帰った、LEDのカンテラで、場車内は見渡せた。ちょうど猫又2が変身を解いたところだった。
ただ猫に還ったナイトは、アンリの股間に頭を張り付けている。
嫁たちは相談の上、三十分はそのまま寝かせると決めた。あまりにも幸せそうな顔で寝るので、起こしづらい。
「ごめんなさい。時間かけちゃいましたね」
素っ裸のアンリは、羽根布団と毛布を体にかける。この羽根布団は超優れもの。アンリはもちろん、別荘へ行って、初めてその軽さを経験した。
ユーノは「いいんですよ」と言いながら、上着だけ脱ぎ、アンリの隣へ滑り込んだ。
「あん…」
アンリは内もものくすぐったいところに、猫髭が触れ、小さく声をもらした。
「本当ならくすぐったいはずなんだけど、終わった後、なんかいいでしょ? ひげやモフモフ」
めずらしく下ネタのユーノに、アンリは少し照れながらうなずく。
「ユーノさん、どうしてSAに入ったんですか?」
アンリは口数の少ないユーノと、サシで話すのは初めてだった。
「一つは、黙って殺される気になれなかったから。俊也さんがこの世界に来なかったら、私たち貴族は、ほとんど殺された。
魔法学校関係者は真っ先にね。
もう一つは、俊也さんに抱かれて力を得たかった。
たいていの線は妥協するつもりだったけど、一度抱かれたらメロメロになった。
抱かれる動機は、みんな不純だったけど、誰も後悔なんて、ひとかけらもないと思う」
ユーノはしみじみと語る。
「私も似たようなもんです。ルラさんに『抱かれて嫁になる?』と聞かれたとき、うなずいちゃった。
嫌と言ったら、とんでもなく後悔する気がして。
最高の選択だったと思います。
筋肉が付きすぎちゃったことぐらいかな。
女の魅力が……ね?」
アンリはわりと真顔で言う。
「今は余裕ないと思うけど、ブルーさん、かなり柔らかい体になったでしょ?
アンさんがうまく要所に散らしてくれるから」
そうなんです! ブルーの超乏しい皮下脂肪を、アンはかきあつめ、かきあつめ。お尻とおっぱいは、なんとか柔らかさをキープできているのです。
油断するとブルーは、あっというまに脂肪を燃焼させてしまう。痩せたい、と願う女子や中年男性にとって、うらやましく感じられるかもしれないが、当人にとっては、結構深刻な問題なのです。
「ですよね~、アンさんの施術受けるの、超楽しみ。
変ですよね。男の人のために変わりたい。そんな女だとは思わなかった」
アンリは股間に張り付く猫頭をなでながら言う。
アンリは男に媚びることを仕事にする女たちを、日常的に見てきた。そんな娼婦たちを、醜いとまでは思わなかったが、少なからぬ抵抗を感じていた。
また、その「媚び」を買いに来る男たちに、心のどこかで忌避感をいだいていた。
「私こそ。かなり極端な男嫌いだったから。
見え透いたお世辞ばっか。
顔と体にしか興味ないのか。
そんなふうに軽蔑してた」
ユーノがナイトの背中をなでながら言う。
アンリはなるほど、と思った。ユーノさんのクールさは、男の嫌な部分が見えすぎるからなのだ。
頭がよすぎるのも善し悪しだ。
「お世辞じゃないと思うけどわかります。男ってそんなものですかね~」
「たいていはそうみたいですね。俊也さんは少し違ってる。
女の顔と体には、人並み以上に興味がある。
状況が許し、ストライクゾーンなら誰でも可。
それは普通の男と同じじゃないかな?
だけど、自ら抱いてと乞う女以外には手を出さない。
ある意味ずるいけどやさしい。
アンリさんは例外の部類ですよ。
出会いの話を聞いたら、ほとんどナンパでしょ?
俊也さんにそんなことできると思ってなかったから、びっくりした」
「多分、私は抱いて、とりこんだ方がいいと踏んだんでしょうね。
実家にも軍にもいたくなかった。
そんな心、見透かされたと思います」
「軍にも居たくなかったの?」
「軍曹に相当言い寄られました。
多分娼家の娘だから、安く見られたんだと思います。
私、つい言ってはならないこと言いました。『この身体、金で買えると思わないでください』。
ほんとは実家の従業員、心のどこかで見下してたんです。
情けなくて……。
何様だよ、自己嫌悪にかられて」
ユーノはぐっと胸を突かれた。この人、なんて優しい人なんだろう。そう思えたから。
ユーノにとって、娼婦や男娼は、どうでもいい存在だった。
身体を売ることは、貴族も同じだ。「仕方ない」から、貴族の多くの娘は、目をつむって抱かれている。
自分も最初は、そう思っていた。俊也の異能力は大きな魅力だったが、彼に抱かれて満足できるとは思わなかった。
つまり、目をつむって抱かれる気でいた。
抱かれてみたら、あっと驚く嬉しい大誤算。ほとんどの嫁は同じだと思う。
だから新しい嫁が増えても、嫁たちはたじろがない。俊也には感謝の気持ちしかないから。
前の馬車に乗っていたユーノは、一呼吸置いて後ろの馬車へ。
俊也が持ち帰った、LEDのカンテラで、場車内は見渡せた。ちょうど猫又2が変身を解いたところだった。
ただ猫に還ったナイトは、アンリの股間に頭を張り付けている。
嫁たちは相談の上、三十分はそのまま寝かせると決めた。あまりにも幸せそうな顔で寝るので、起こしづらい。
「ごめんなさい。時間かけちゃいましたね」
素っ裸のアンリは、羽根布団と毛布を体にかける。この羽根布団は超優れもの。アンリはもちろん、別荘へ行って、初めてその軽さを経験した。
ユーノは「いいんですよ」と言いながら、上着だけ脱ぎ、アンリの隣へ滑り込んだ。
「あん…」
アンリは内もものくすぐったいところに、猫髭が触れ、小さく声をもらした。
「本当ならくすぐったいはずなんだけど、終わった後、なんかいいでしょ? ひげやモフモフ」
めずらしく下ネタのユーノに、アンリは少し照れながらうなずく。
「ユーノさん、どうしてSAに入ったんですか?」
アンリは口数の少ないユーノと、サシで話すのは初めてだった。
「一つは、黙って殺される気になれなかったから。俊也さんがこの世界に来なかったら、私たち貴族は、ほとんど殺された。
魔法学校関係者は真っ先にね。
もう一つは、俊也さんに抱かれて力を得たかった。
たいていの線は妥協するつもりだったけど、一度抱かれたらメロメロになった。
抱かれる動機は、みんな不純だったけど、誰も後悔なんて、ひとかけらもないと思う」
ユーノはしみじみと語る。
「私も似たようなもんです。ルラさんに『抱かれて嫁になる?』と聞かれたとき、うなずいちゃった。
嫌と言ったら、とんでもなく後悔する気がして。
最高の選択だったと思います。
筋肉が付きすぎちゃったことぐらいかな。
女の魅力が……ね?」
アンリはわりと真顔で言う。
「今は余裕ないと思うけど、ブルーさん、かなり柔らかい体になったでしょ?
アンさんがうまく要所に散らしてくれるから」
そうなんです! ブルーの超乏しい皮下脂肪を、アンはかきあつめ、かきあつめ。お尻とおっぱいは、なんとか柔らかさをキープできているのです。
油断するとブルーは、あっというまに脂肪を燃焼させてしまう。痩せたい、と願う女子や中年男性にとって、うらやましく感じられるかもしれないが、当人にとっては、結構深刻な問題なのです。
「ですよね~、アンさんの施術受けるの、超楽しみ。
変ですよね。男の人のために変わりたい。そんな女だとは思わなかった」
アンリは股間に張り付く猫頭をなでながら言う。
アンリは男に媚びることを仕事にする女たちを、日常的に見てきた。そんな娼婦たちを、醜いとまでは思わなかったが、少なからぬ抵抗を感じていた。
また、その「媚び」を買いに来る男たちに、心のどこかで忌避感をいだいていた。
「私こそ。かなり極端な男嫌いだったから。
見え透いたお世辞ばっか。
顔と体にしか興味ないのか。
そんなふうに軽蔑してた」
ユーノがナイトの背中をなでながら言う。
アンリはなるほど、と思った。ユーノさんのクールさは、男の嫌な部分が見えすぎるからなのだ。
頭がよすぎるのも善し悪しだ。
「お世辞じゃないと思うけどわかります。男ってそんなものですかね~」
「たいていはそうみたいですね。俊也さんは少し違ってる。
女の顔と体には、人並み以上に興味がある。
状況が許し、ストライクゾーンなら誰でも可。
それは普通の男と同じじゃないかな?
だけど、自ら抱いてと乞う女以外には手を出さない。
ある意味ずるいけどやさしい。
アンリさんは例外の部類ですよ。
出会いの話を聞いたら、ほとんどナンパでしょ?
俊也さんにそんなことできると思ってなかったから、びっくりした」
「多分、私は抱いて、とりこんだ方がいいと踏んだんでしょうね。
実家にも軍にもいたくなかった。
そんな心、見透かされたと思います」
「軍にも居たくなかったの?」
「軍曹に相当言い寄られました。
多分娼家の娘だから、安く見られたんだと思います。
私、つい言ってはならないこと言いました。『この身体、金で買えると思わないでください』。
ほんとは実家の従業員、心のどこかで見下してたんです。
情けなくて……。
何様だよ、自己嫌悪にかられて」
ユーノはぐっと胸を突かれた。この人、なんて優しい人なんだろう。そう思えたから。
ユーノにとって、娼婦や男娼は、どうでもいい存在だった。
身体を売ることは、貴族も同じだ。「仕方ない」から、貴族の多くの娘は、目をつむって抱かれている。
自分も最初は、そう思っていた。俊也の異能力は大きな魅力だったが、彼に抱かれて満足できるとは思わなかった。
つまり、目をつむって抱かれる気でいた。
抱かれてみたら、あっと驚く嬉しい大誤算。ほとんどの嫁は同じだと思う。
だから新しい嫁が増えても、嫁たちはたじろがない。俊也には感謝の気持ちしかないから。
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