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61 猫又式 式神使役妖術 もどき?

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 俊也が日本から帰ったとき、館には緊張した空気が感じられた。

「俊也の意見聞かせて。実は……」
 ルラは、危険が迫っている事情を俊也に語った。



「なるほどね。興味なかったから聞かなかったけど、ポナンというやつ、相当ひどい男だな」
 俊也は嫁たちが「ポナン」の話題を話題にするとき、いつも「様」を付けているから、まともな性格だと思い込んでいた。

「証拠を残さないのが気になる。何か特別な魔法を持っているかもしれない。
遠隔殺人? 
たとえば呪いの魔法とか?」
 ルラは深刻な表情で言う。

『妖力や魔力は、常に物理的な形で発動される。
そんなオカルトめいた、ある意味便利な魔法は存在しないだろう』
 俊也の中の猫又ナイトが、俊也の口を借りて言う。

「なるほど。もちろん、魔法学校でも習いませんでしたが、十分説得力のある言葉です。
私たちが使う魔法も、超常現象に見えますが、常に物理の法則に還元されます」
 ユーノが納得顔で言う。

「私の魅了や恐慌の魔法も、たしかに視覚や神経に働きかけるだけです。
猫又ナイト様、こう結論づけてよいでしょうか? 
魔法でも無から有は生み出せない」
 フラワーが聞く。

俊也はなんだかな~と思う。年齢が高い嫁はみんな俺を呼び捨てだ。俺の希望でそうしている。

だが、猫又ナイトを呼び捨てにする嫁は少ない。

まあ、いいんだけど。

『そう結論づけてよいだろう。少なくとも俺が見てきた妖術は、突きつめれば物理の法則で説明できる。
ただ、俺も俊也も知らない法則はあるかもしれない。
だから、絶対とは言い切れない』
 一同、猫又ナイトの説明にうなずく。

「まず、敵の能力を知ることだな。
猫又ナイト大先生。『安倍晴明』で学んだ例の陰陽術、ご披露ください。ニャンニャン!」
 俊也はいまだに恥ずかしい招き猫ポーズ。

 猫又ナイト颯爽と登場。


「安倍晴明とは平安時代…大昔の妖術使いだ。
本人は『陰陽術』と言い張ったそうだが、全然別物だと思う。
伝説では妖狐と人間のミックスだと言う。
そやつが使った『式神』の原理、俺でも解明できなかった。
だが『エセ式神』妖術は、使えるようになった。
紙を用意し、人形(ひとがた)に切れ。
ルマンダ、彩色用の廃魔石顔料を、その人形にまんべんなく塗ってくれ。
前に頼んだ要領でいい。白が一番効果的だった」
 
ルマンダは当然覚えていた。

猫又ナイトは、単純に切り取られた紙製猫形に、彩色をしてくれと頼んだことがある。

色々な色を塗ったが、何に使うのかはさっぱり見当がつかなかった。猫又ナイトはいたずら好きだ。

きっといたずらのタネだろうと、気軽に引き受けた。

なんと、新たな魔法の開発とは。

ルマンダは急いで自室に帰り、注文通りの人形を作った。

 ルマンダや他の嫁たちも感動する。

 猫又ナイト様、すごい! 絶対様付けだ!

 たしかにすごいと言えばすごい。猫又ナイトは、ゲームやテレビで見た魔法、自分なら使えるという、確固たる自惚れを持っている。
 
 豚もおだてりゃ木に登る、らしいが、猫又はイメージさえはっきりつかめたら、どんな魔法でも放てるようになってしまった。

 猫も自惚れりゃチート魔法使い。新たな慣用句が生まれる、かもしれない。ゴロが悪いので無理かもしれない。


 ルマンダが注文通りの紙に魔石塗料を塗った人形を用意した。

「フラワー、猫又流妖術免許皆伝のお主に頼む。
上を全部脱いで、その紙を左のおっぱいに当てろ。
イメージはお主の姿だ。
他の男へのサービスは、俊也が超いやがるから、動きやすい服を着たイメージ」

「はい」
 フラワーは素直に従った。猫又ナイトの中の俊也が、頭の中で歓声を上げる。

『ひゃっほ~! うん、猫又ナイト君、超気がきくじゃない。このシチュエーション、超萌える。
カナのおっぱいは、お前が治すまで、ひどいことになってた。
よく我慢して…』

『うるさい。お主は全く気がきかない。どうして放っておいたのだ!』

『ごめん、超眠くなって、猫又ナイトに変身する余裕がなかった。
お前の体質も悪いんだぞ。
眠くなったら、もう起きていられなくなる』

『やかましいわい! 俺はずいぶん我慢していたんだぞ! 
カナといちゃいちゃするのが忙しそうで、眠る隙を見つけられなかった』

『早く言ってくれよ。カナの乳首や唇を直してやれって』

『お前がずっといじってたからだ!』


「ナイト様、意識を戻して。俊也と口げんかしてるでしょ?」
 ルラが猫又ナイトの肩をゆすった。猫又ナイトか俊也が、怒っているような顔でぼ~っとしているときは、間違いなく頭の中で口ゲンカしている。

みんなこれまでの経験で知っていた

「お~っと。俊也が感激していたぞ。
いつもと違うシュチュで、フラワーのおっぱいが見られたこと。
見本を披露するだけだ。もうよかろう」

「はい。思い切り念を込めました。どうぞ」
 フラワーは、人形を渡した。まだ十分乾いていなかったようで、白の顔料が少し残ってしまった。おっぱいの先端に。

猫又ナイトは、俊也なら飛びついて押し倒したかもしれない、と思いながら人形を受け取った。


ナイトは思い切り念をこめ、尻尾で描いた円の中に人形を放り込む。

「フラワーの肉体!」
 と、気合の詠唱。

円の中からフラワーが生まれ、すとんと床に着地。

「やだ~、ちゃんと乾かして下さい。
おっぱいの先っちょがでてる~ん」
 式フラワーの言うとおり、白Tの胸部の一部が破れ、おっぱいの先だけが出ていた。

 式は隠そうとしなかった。乳首に集中したからか、女のルラ達まで変な気分になってきた。

 猫又ナイトは、と見ると、両手で目を隠していた。

「フラワー! お主、魅了の猫又式魔法を使ったな! 
とんでもない式が生まれたぞ……。
ということは、猫又式魔法を使えば、魔法が発動できる式が…、これは使えるぞ!」


「猫又ナイト様、その式という妖術、どういうふうに物理的な説明がつくのですか?」
 ユーノが素朴な疑問を言った。

「ん? 神秘は神秘のままでよいではないか」
 猫又ナイトは、目をそらして応えた。
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