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14 日本へ帰ってみた

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 二時間後。

 猫又ナイトは、無事俊也の部屋へ転送された。プリンの使い捨て魔法陣はすぐ消えた。

「ナイト様ですね? ポッ……」
 ぬいぐるみプリンが、艶っぽく体をくねらせる。

「俺はぬいぐるみなど抱かんぞ。だが、よくやった」
 そう言いながら、猫又ナイトは魔法陣を描き、猫スタンプを押す。シールドを施し「保存」と「清浄」の魔法を施す。

 そして、魔法陣を通して「ルラと話したい」と唱えた。これで会話が可能となるはずだ。

『猫又ナイトね? 無事だったんだ。よかった』
 ルラのほっとした声が聞こえる。

「予定通り、こちらで二三日滞在する。
俺がいなければやりにくいだろうが、組織化を進めてくれ。
じゃ!」

『ちょっと待って……』

 ナイトは念話を切った。うう……。ルラと二三日離れるなんて、つらい。
見た目超美味しそうで、中身も超おいしい女の子。すっかりルラの虜となったナイトと俊也だった。


「さてと、多分無理だろうが、鼻を借りるぞ」
 ナイトはシールドから出て、プリンに詰め寄った。

「好きにして…ポッ」
 なんだかな~、と思いながら猫又ナイトはプリンの鼻と鼻をくっつける。

 し~ん……。なにも起こらなかった。

 できれば避けたかったが、朝陽殿に頼るしかないだろう。目隠しさせたら問題は…多分ほとんどない。

 美佐枝殿は絶対にヤダ。問題が大きすぎる。今日は……、十二月二十三日。おっと、朝陽殿の誕生日だ。

 朝陽はいつも嘆いていた。イブの前日に生まれてしまったことを。なぜなら、誕生日会とイブの会が合同で行われ、プレゼントも一度。

 朝陽は「カレシができたら、絶対連続で祝ってもらう」と息巻いていた。

 今年はどうだろう? 俊也殿が失踪したから、中止となったとしたら気の毒だ。そういえば……。

「プリン、先に送った指輪はどうした?」

「ジャジャン! 私の指に入りませんでした」
 プリンは口から指輪を出した。指なんてあるか? 別にいいんだけど。ぬいぐるみだから。

 こいつ、口の中に指輪を含みながら、普通に話していた。ぬいぐるみだからいいのか。

 猫又ナイトは器用に爪で指輪を引っ掛ける。思ったとおり、指輪と石は混ざってない。

 あちらの世界へ転移した時、俊也のパジャマや下着も、ルマンダが見つけてくれた。非生物はミックスしないと考えていいだろう。

 猫又ナイトは、輝く石を見る。ただの透明な石ころではないか。こんなものに価値があるとは到底思えないのだが。

『おい! お前の今の爪ならダイヤでも傷つけかねない。慎重に』
 俊也の声が頭の中に響いた。

「プリン、俊也殿に変身するまで、くわえていろ」
 猫又ナイトは、プリンの口に指輪を押しこんだ。

「はい、死守します!」
 プリンは普通に応えた。



 玄関から物音が聞こえた。帰って来たか。待ちわびていた朝陽のようだ。

「ただいま~」
 朝陽の元気のない挨拶。

 猫又ナイトは急いで階下へ駆け下りた。

「ナイト! 本当に元気だったんだね。お兄ちゃんは?」
 朝陽はナイトだと認め、膝が緩み座りこむ。

「もうすぐ会える。俊也の部屋へ来てくれ」

「ナイト、しゃべれるんだ! あれっ? 尻尾二本になったの?」

「俺本来の姿だ。危うく眠ってしまうところだった。早く来い!」
 ナイトの言葉に従って、朝陽は階段を駆け上がった。


「朝陽殿、まずは俊也殿の衣服とタオルを用意しろ。服は下着もだ」

「あ~、はいはい。
変身したら裸になっちゃうって、お約束設定?
私のような美少女なら、大きな見せ場なんだけど」

「わかったから早く用意してくれ」
 猫又ナイトは、微妙な顔で目をそらした。ツルン、ペタンでよく言うよ。

「は~い!」
 朝陽はいそいそと服を準備する。

「タオル!」

「別にいいんだけど。つい最近まで、時々お風呂一緒に入ってたし。
お兄ちゃんもおピーピー、ぱお~んしないでしょ?」
 
 猫又ナイトは俊也に『もっとしつけておけ』と、心の中でブーイング。
頭の中の俊也は『申し訳ない』と赤面する。

 朝陽は一応目隠しする。

「座って俺を抱き上げ、そなたの鼻と俺の鼻をくっつけてくれ」

「はいはい。なんか偉そう」
 猫又ナイトは、一応主人や家族には「殿」を付けるが、そこは猫。殿をつけたらそれでよしと、思いこんでいる。

「もうよいと……」
 朝陽は猫又ナイトの言葉が言い終わるのも待たず、ツン……。

 朝陽は目隠しを解いた。お兄ちゃんの裸なら全然平気だ。

「お~しばらく見ない間に……、ってお兄ちゃん、お帰り!」
 朝陽はまだ服に手をかけてもいない俊也に抱きついた。

「お~、しばらくハグしてない間に……」

「わかる?」

「全然ふくらんでないことは…ウグ」
 妹におティンティンを軽く蹴られてしまった。

「レディーになんと失礼な!」

「レディーは、おピーピーを蹴ったりしません!」
 軽い痛みに耐えながら、俊也は妹をまた抱きしめた。

「二人で禁断の世界、行ってみる?」
 妹は幸せそうに笑って言う。

「そうしようか。まず服を着させてくれ」
 
 なんだかな~の、兄妹再会シーンだった。
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