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8 ルマンダの忠言
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ルラは当初、魔法科学者の冷徹な目で、前もっての戯れを観察していた。
なんか超ムカつくんですけど! まあ、鼻ツンで変身は証明された。
悔しいが、自分だけが起こせる現象ではない。他のケースも実験したいのだが、それは不可能だ。
たとえば、男とか……。バラの花が咲いてしまったら、目も当てられない。そしてこの変な実験に協力してくれそうな男は、全く心当たりがない。
美人の範疇(はんちゅう)に属さない女。それも実験したいが、これもやはり協力者が思い浮かばない。
この実験の目玉、♂と♀が合体したら変化はないのか? キスの段階で、外見的変化はなかった。
キスって、あそこまでするんだ、というレベル、つまりディープレベルに至っても、俊也の外形に変化はなかった。
ごく一部はルマンダの裸を見た途端、ギンギン維持だし。
ルラは科学者としての未練を残しながら、いたたまれなくなった。
遺憾ながらルラも興奮してしまったことは、もちろん誰にも話す気はない。そんなわけで、本格的な合体以前の段階で、ルラは書斎に逃避していた。
ルラは声の変化に気づいた。いよいよ♂と♀が合体したようだ。ルマンダが狂ったようなあえぎ声をもらす。「もっと! もっと深くぅ~」などという切迫した声が響く。
ルマンダの声はずっと続いた。あんなに長く交尾するものなのか。
ルラは馬車の窓から、犬の交尾を目撃したことがある。オスが十回程度ヘコヘコしただけで、すぐに終わった。もちろんメスが、ルマンダのように乱れることはなかった。
ルラの持つセックスイメージが、根底から覆された。二人(と一匹?)は、心底セックスを楽しんでいる。
ルラが(色々な意味で)待ちわびている最終局面が訪れたようだ。
「あ~…いくぅ~、あん、あん、あん……あ~~~」
不意に静寂が訪れた。
ルラは慌てて書斎を出た。俊也がどう変化したのか気になったからだ。
俊也はルマンダの巨大なおっぱいの谷間に、バキュンしたようだ。
おっぱいの谷間には、白く光る液体が、筋を作り流れていた。
なぜだか強烈な魔力光を放っている。
ルラは一瞬どうして? と思ったが、俊也は妊娠を恐れたのだと気づいた。
魔力の高いルマンダが、そう簡単に妊娠するわけはないのだが。ルマンダはもう百歳近いし。
ちなみに、この世界では魔力量によって、平均寿命が全く違う。
貴族など、高い魔力を持つ者は、平均三百年程度生きる。
魔力が高い者ほど、成長はやや遅く、寿命間際になるまで、つまり、魔力の器が耐久限界に達するまで、老化は抑制される。
魔力が自動的に最適化している、という仮説が、通説となっている。
魔力量がゼロに近い、庶民などの血筋は長生きして百歳程度か。
もう一つちなみに、ハイティーンに見えるルラは、現在四十八歳だ。
貴族の血を引く高い魔力を持つ者は、長命で長く老けない分、庶民に比べ極端に出生率は低い。
射精した後、俊也はどう変化するのだろうと、ルラは見守った。
俊也は裸のままでベッドを下りた。しゃがんで四足になり、猫又形態に変化。みるみる馬ほど大きくなり、おどろおどろしい顔形になった。
「プリン、聞こえるか!」
「……そうかそうか。よく聞こえるとな?
魔法陣は描けるか?」
「……そうか。まだ無理か。修練を積め。
そちらの家族は驚いただろう?」
「……ん? そうでもないと?
まあよい。うろたえて警察になど連絡されたら面倒だ。
俺も俊也も元気だと伝えておけ。
寝てばかりいないで、しっかり修業を積め!
わかったな?
……うむ。それでよい」
多分プリンと、会話していたであろう猫又2には、恐ろしいほどの妖力が、体にまとわりついている。
体内に余った妖力が、外に漏れていると思われる。今ならマジで地球割ができそうだ。
「あの~、そのお姿が最終形態でしょうか?」
ルラが恐る恐る聞く。
「多分そうだろう。これが俺の戦闘形態だ。
ただし疲れる。
おやすみ」
猫又2はみるみる小さくなり、呆然自失状態の、ルマンダのおっぱいに頭を埋めた。
「うわ~! なんだこれは? ああ、俊也のあれか」
猫又ナイトは、ぴんと尻尾を上げ、円を描く。
ペタン。光る円の中央に猫スタンプ。
「清浄!」
そう呪文を唱え、再びルマンダのおっぱいにダイブ。あっという間に、気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
ルマンダは、猫又ナイトの頭を愛しそうに撫で、微笑みをルラに向けた。
ルラの研究課題が、また一つ増えた。
射精後の睡眠は、常時猫又形態なのだろうか? 今まではノーマル猫形態だったが……。
要チェックや! もちろん、私の体を使うしかないよね!
ルラは俊也と関係を持つ積極的な口実ができて、内心ほっとしていた。
「大変な客人を招かれましたね。
この客人、亡き夫より相当以上によかったです。
またいただいてよろしいですか?」
「考えておく」
ルラは視線をそらして、ルマンダに言った。頬のほてりは感じていたが、うるむような艶っぽい目になっていたことは気づかなかった。
ルマンダは、会心の笑顔でこう言った。
「そうですか。欲情なさいましたか。そろそろ経験なさってもよいかと。
お相手は、絶対この方になさってください。
とんでもない宝物です。
すみませんが、魔力測定お願いできますか?
なんか上がっている気がします。
精を中に頂いたら、もっと上がる気もします」
研究の鬼ルラは、大切な観察材料を忘れていた。
慌てて駆け寄り、ルマンダのおでこに、おでこをくっつける。
「す、すごい! 前の倍以上だ……」
魔力量は、自身で実感しにくい。ただ、上がったな、ということはなんとなく感じる。
魔導師にとって魔力量は命に近い。技術や知識は身につけやすいが、魔力量はそう簡単に上がらない。
年齢と実践。それしか鍛える方法はないと思い込んでいた。こんなお手軽…とは言い切れないが、裏技があったとは。
そういえば、思い当たることがある。夫婦や恋人関係になったカップルは、目を見張るほど魔力が上がる。
もちろん、ルマンダほど極端ではないが、仲がいいほど上昇率は顕著だ。
ルラはルマンダの言う「とんでもない宝物」の真の意味がわかった。
この裏技は、絶対誰にも渡してはならない。
「ルラ様、私は庶民の出でありながら、高い魔力を持っています。
ときおり家に顔を見せた、父親の名前は存じませんが、多分貴族の方ではないかと想像しております。
その特性を買われ、当家の侍女として、長くお仕えしてきました。
侍女は魔力が低いという先入観が、貴族の皆様にはございます。
それで、あなたのお父上に命じられ、スパイそのものの活動もしておりました。
最近はお嬢様の影響か、隠しきれないほどの魔力となり、スパイ活動はできなくなりました。
ですが、侍女スパイのネットワークと、今でもつながっております。
もちろん、この方の情報は、絶対もらしません。
ただ、明確ではありませんが、不穏な兆候が見られます。
具体的には、魔導戦士や魔法戦士の集会が増えた。
それだけでございますが、身を守る手段は講じておいた方がよいでしょう。
貴族の数は限られております。絶対信頼できるお仲間をお探しなさいませ。
そして、この方のお力を分かち与えなさいませ。
さきほどルラ様は、あきらかに嫉妬されておりました。
もうこの方に傾いておられます。
それでも、仲間には決して嫉妬なさいますな。
あなたを含め、強力な魔導軍団を作るのです。
それが最善かと」
「か、考えておく」
今のルラには、「そうします」とはっきり言えなかった。だが、魔導戦士や魔法戦士がクーデターを企てたら、相当以上の確率で成功するだろう。「絶対嫌です」とも答えられなかった。
「ずいぶん時間を費やしてしまいました。
お食事はこの部屋で摂られますね?
二人分準備してまいります」
そう言ってルマンダは、猫又をベッドに下ろし、着衣を整えた。
ルマンダが、ルラに俊也との関係を勧めたのは、二つの理由があった。
一つには、さっき口にした軍部の不穏な兆候。
かなり控えめな言い方をしたが、ルマンダは、クーデターの可能性が相当高いとみている。
国王は飾りだけ。ルラの父親を含めた三大貴族が、実権のほとんどを握っている。
三大貴族は、実にバランスがとれた政権運営を行っており、貴族の間で、深刻な不和は認められない。
ただ、爵位を継げなかった者の方が、数的には、はるかに多い。
他国に比べ、経済的に恵まれているはずだが、欲を言えばきりがない。
もっと「うまい汁」を吸いたくなるのが、人情というもの。
その「権利」を得るだけの「義務」が、果たせるかどうかは別にして。
そして、もう一つの理由。
それはルラ個人の幸福に関する問題だ。
ルラは「できすぎ」なのだ。最高の家格と父親の実力。さらには、天才魔導士としての才能。
両者に見合う結婚相手が、ルマンダには全く思い当たらない。
家格として釣り合うのは、三大貴族の他の二家と、外国の王族ぐらいのものだ。
他の二家とは、すでに濃い血縁関係が結ばれており、これ以上は好ましくないことが、実証されている。
外国の王族へルラを嫁がせるのは、最高レベルの武器を渡すようなもの。イスタルトの国益を、著しく損なうことになってしまう。
つまり、ルマンダは、ルラが一生結婚できないのではないかと、心配しているのだ。
俊也を「味見」したところ、筆舌に尽くしがたいほどの美味。しかも、魔力アップの超おまけつき。
俊也が異世界から来た男であることが、大きな不安要素であるのは間違いないが、リラーナ家やイスタルトに災いする危険は極めて薄い。
めんどうなしがらみが、全く存在しないから。
ルマンダはふと気づいた。おっぱいの谷間に、放たれた精液の痕跡が完全に消えている。それに……、
「なんだかいい匂いにかわってる。あの匂い、むせかえりそうになるほど濃かったんですが。『清浄』の魔法だけでもお買い得ですよ」
そう言い残し、ルマンダは部屋を出ていった。
お嬢様、絶対この方を放してはなりませぬ。心の中で、そう叫びながら。
なんか超ムカつくんですけど! まあ、鼻ツンで変身は証明された。
悔しいが、自分だけが起こせる現象ではない。他のケースも実験したいのだが、それは不可能だ。
たとえば、男とか……。バラの花が咲いてしまったら、目も当てられない。そしてこの変な実験に協力してくれそうな男は、全く心当たりがない。
美人の範疇(はんちゅう)に属さない女。それも実験したいが、これもやはり協力者が思い浮かばない。
この実験の目玉、♂と♀が合体したら変化はないのか? キスの段階で、外見的変化はなかった。
キスって、あそこまでするんだ、というレベル、つまりディープレベルに至っても、俊也の外形に変化はなかった。
ごく一部はルマンダの裸を見た途端、ギンギン維持だし。
ルラは科学者としての未練を残しながら、いたたまれなくなった。
遺憾ながらルラも興奮してしまったことは、もちろん誰にも話す気はない。そんなわけで、本格的な合体以前の段階で、ルラは書斎に逃避していた。
ルラは声の変化に気づいた。いよいよ♂と♀が合体したようだ。ルマンダが狂ったようなあえぎ声をもらす。「もっと! もっと深くぅ~」などという切迫した声が響く。
ルマンダの声はずっと続いた。あんなに長く交尾するものなのか。
ルラは馬車の窓から、犬の交尾を目撃したことがある。オスが十回程度ヘコヘコしただけで、すぐに終わった。もちろんメスが、ルマンダのように乱れることはなかった。
ルラの持つセックスイメージが、根底から覆された。二人(と一匹?)は、心底セックスを楽しんでいる。
ルラが(色々な意味で)待ちわびている最終局面が訪れたようだ。
「あ~…いくぅ~、あん、あん、あん……あ~~~」
不意に静寂が訪れた。
ルラは慌てて書斎を出た。俊也がどう変化したのか気になったからだ。
俊也はルマンダの巨大なおっぱいの谷間に、バキュンしたようだ。
おっぱいの谷間には、白く光る液体が、筋を作り流れていた。
なぜだか強烈な魔力光を放っている。
ルラは一瞬どうして? と思ったが、俊也は妊娠を恐れたのだと気づいた。
魔力の高いルマンダが、そう簡単に妊娠するわけはないのだが。ルマンダはもう百歳近いし。
ちなみに、この世界では魔力量によって、平均寿命が全く違う。
貴族など、高い魔力を持つ者は、平均三百年程度生きる。
魔力が高い者ほど、成長はやや遅く、寿命間際になるまで、つまり、魔力の器が耐久限界に達するまで、老化は抑制される。
魔力が自動的に最適化している、という仮説が、通説となっている。
魔力量がゼロに近い、庶民などの血筋は長生きして百歳程度か。
もう一つちなみに、ハイティーンに見えるルラは、現在四十八歳だ。
貴族の血を引く高い魔力を持つ者は、長命で長く老けない分、庶民に比べ極端に出生率は低い。
射精した後、俊也はどう変化するのだろうと、ルラは見守った。
俊也は裸のままでベッドを下りた。しゃがんで四足になり、猫又形態に変化。みるみる馬ほど大きくなり、おどろおどろしい顔形になった。
「プリン、聞こえるか!」
「……そうかそうか。よく聞こえるとな?
魔法陣は描けるか?」
「……そうか。まだ無理か。修練を積め。
そちらの家族は驚いただろう?」
「……ん? そうでもないと?
まあよい。うろたえて警察になど連絡されたら面倒だ。
俺も俊也も元気だと伝えておけ。
寝てばかりいないで、しっかり修業を積め!
わかったな?
……うむ。それでよい」
多分プリンと、会話していたであろう猫又2には、恐ろしいほどの妖力が、体にまとわりついている。
体内に余った妖力が、外に漏れていると思われる。今ならマジで地球割ができそうだ。
「あの~、そのお姿が最終形態でしょうか?」
ルラが恐る恐る聞く。
「多分そうだろう。これが俺の戦闘形態だ。
ただし疲れる。
おやすみ」
猫又2はみるみる小さくなり、呆然自失状態の、ルマンダのおっぱいに頭を埋めた。
「うわ~! なんだこれは? ああ、俊也のあれか」
猫又ナイトは、ぴんと尻尾を上げ、円を描く。
ペタン。光る円の中央に猫スタンプ。
「清浄!」
そう呪文を唱え、再びルマンダのおっぱいにダイブ。あっという間に、気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
ルマンダは、猫又ナイトの頭を愛しそうに撫で、微笑みをルラに向けた。
ルラの研究課題が、また一つ増えた。
射精後の睡眠は、常時猫又形態なのだろうか? 今まではノーマル猫形態だったが……。
要チェックや! もちろん、私の体を使うしかないよね!
ルラは俊也と関係を持つ積極的な口実ができて、内心ほっとしていた。
「大変な客人を招かれましたね。
この客人、亡き夫より相当以上によかったです。
またいただいてよろしいですか?」
「考えておく」
ルラは視線をそらして、ルマンダに言った。頬のほてりは感じていたが、うるむような艶っぽい目になっていたことは気づかなかった。
ルマンダは、会心の笑顔でこう言った。
「そうですか。欲情なさいましたか。そろそろ経験なさってもよいかと。
お相手は、絶対この方になさってください。
とんでもない宝物です。
すみませんが、魔力測定お願いできますか?
なんか上がっている気がします。
精を中に頂いたら、もっと上がる気もします」
研究の鬼ルラは、大切な観察材料を忘れていた。
慌てて駆け寄り、ルマンダのおでこに、おでこをくっつける。
「す、すごい! 前の倍以上だ……」
魔力量は、自身で実感しにくい。ただ、上がったな、ということはなんとなく感じる。
魔導師にとって魔力量は命に近い。技術や知識は身につけやすいが、魔力量はそう簡単に上がらない。
年齢と実践。それしか鍛える方法はないと思い込んでいた。こんなお手軽…とは言い切れないが、裏技があったとは。
そういえば、思い当たることがある。夫婦や恋人関係になったカップルは、目を見張るほど魔力が上がる。
もちろん、ルマンダほど極端ではないが、仲がいいほど上昇率は顕著だ。
ルラはルマンダの言う「とんでもない宝物」の真の意味がわかった。
この裏技は、絶対誰にも渡してはならない。
「ルラ様、私は庶民の出でありながら、高い魔力を持っています。
ときおり家に顔を見せた、父親の名前は存じませんが、多分貴族の方ではないかと想像しております。
その特性を買われ、当家の侍女として、長くお仕えしてきました。
侍女は魔力が低いという先入観が、貴族の皆様にはございます。
それで、あなたのお父上に命じられ、スパイそのものの活動もしておりました。
最近はお嬢様の影響か、隠しきれないほどの魔力となり、スパイ活動はできなくなりました。
ですが、侍女スパイのネットワークと、今でもつながっております。
もちろん、この方の情報は、絶対もらしません。
ただ、明確ではありませんが、不穏な兆候が見られます。
具体的には、魔導戦士や魔法戦士の集会が増えた。
それだけでございますが、身を守る手段は講じておいた方がよいでしょう。
貴族の数は限られております。絶対信頼できるお仲間をお探しなさいませ。
そして、この方のお力を分かち与えなさいませ。
さきほどルラ様は、あきらかに嫉妬されておりました。
もうこの方に傾いておられます。
それでも、仲間には決して嫉妬なさいますな。
あなたを含め、強力な魔導軍団を作るのです。
それが最善かと」
「か、考えておく」
今のルラには、「そうします」とはっきり言えなかった。だが、魔導戦士や魔法戦士がクーデターを企てたら、相当以上の確率で成功するだろう。「絶対嫌です」とも答えられなかった。
「ずいぶん時間を費やしてしまいました。
お食事はこの部屋で摂られますね?
二人分準備してまいります」
そう言ってルマンダは、猫又をベッドに下ろし、着衣を整えた。
ルマンダが、ルラに俊也との関係を勧めたのは、二つの理由があった。
一つには、さっき口にした軍部の不穏な兆候。
かなり控えめな言い方をしたが、ルマンダは、クーデターの可能性が相当高いとみている。
国王は飾りだけ。ルラの父親を含めた三大貴族が、実権のほとんどを握っている。
三大貴族は、実にバランスがとれた政権運営を行っており、貴族の間で、深刻な不和は認められない。
ただ、爵位を継げなかった者の方が、数的には、はるかに多い。
他国に比べ、経済的に恵まれているはずだが、欲を言えばきりがない。
もっと「うまい汁」を吸いたくなるのが、人情というもの。
その「権利」を得るだけの「義務」が、果たせるかどうかは別にして。
そして、もう一つの理由。
それはルラ個人の幸福に関する問題だ。
ルラは「できすぎ」なのだ。最高の家格と父親の実力。さらには、天才魔導士としての才能。
両者に見合う結婚相手が、ルマンダには全く思い当たらない。
家格として釣り合うのは、三大貴族の他の二家と、外国の王族ぐらいのものだ。
他の二家とは、すでに濃い血縁関係が結ばれており、これ以上は好ましくないことが、実証されている。
外国の王族へルラを嫁がせるのは、最高レベルの武器を渡すようなもの。イスタルトの国益を、著しく損なうことになってしまう。
つまり、ルマンダは、ルラが一生結婚できないのではないかと、心配しているのだ。
俊也を「味見」したところ、筆舌に尽くしがたいほどの美味。しかも、魔力アップの超おまけつき。
俊也が異世界から来た男であることが、大きな不安要素であるのは間違いないが、リラーナ家やイスタルトに災いする危険は極めて薄い。
めんどうなしがらみが、全く存在しないから。
ルマンダはふと気づいた。おっぱいの谷間に、放たれた精液の痕跡が完全に消えている。それに……、
「なんだかいい匂いにかわってる。あの匂い、むせかえりそうになるほど濃かったんですが。『清浄』の魔法だけでもお買い得ですよ」
そう言い残し、ルマンダは部屋を出ていった。
お嬢様、絶対この方を放してはなりませぬ。心の中で、そう叫びながら。
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