144 / 170
144 竜族オノコの純情
しおりを挟む
別邸客間。
不良はぐれドラゴン、サーブは落ち込んでいた。その理由は言うまでもないだろう。
「玄関入って五秒で発射」
齢(よわい)二百数十歳の彼は、なんとDTだった。
彼が竜王国から飛び出したのは、百二十三歳の時。不良仲間のフィリップと共に、人族領各地で大暴れした。
少しやりすぎたようだ。時の勇者ケンイチのパーティが、討伐に乗り出した。そんな噂を耳にして、フィリップと示し合わせ、魔族領に逃げ込んだ。
魔族領内では、人族領のように暴れることはできない。魔族は人族よりはるかに強い。
いくらドラゴンとはいえ、正規の軍なら中隊レベルの数でも、下手をしたら狩られてしまう。
そこでダテ角を偽装し魔族を装い、町や村を転々として生きてきた。本来の姿では目立ちすぎるから。
そして一週間前、この北の城塞の町で、サキュバスのレイサと出会った。
サキュバスの戦闘力は、魔族の中でも最底辺だ。しかしながら、サキュバス族は「魔眼」の特殊能力を持っている。魅了と鑑定の力は、他のどの種族より優れている。
サーブの真の姿がドラゴンであることなど、一目で見抜かれてしまった。
女慣れしていないサーブは、サキュバスのレイサが怖かった。彼は極端な女性恐怖症だったから。
女性恐怖症、というより、エッチ恐怖症、という言い方が妥当か。
その分野で、能力的に全然自信が持てない。真竜としてプライドだけは高い彼にとって、女性にバカにされるのは我慢できない。
そのため、本格的な叡智に及ぶまで、一週間の時間を要した。「なろう系」のヘタレ主人公並みだ。
本格的じゃなくても、サキュバスの体を張ったサービスはずいぶん濃い。
女日照りのサーブは、濃厚サービスに屈してしまった。
その結果が、「玄関入って五秒で発射」というわけ。
我ながら情けない……。
「サーブ様、お酒など召し上がりませんか?」
レイサが客間に入ってきた。相変わらずのシースルーネグリジェ。
だが、生殖能力が退化したドラゴンジュニアは、十分反応できない。
やる気はあるんだけどね……。ジュニアがついてこない。多分明日にならなければ、戦闘不能だろう。
ドラゴンのオスは、悲しいほど恵まれなかった。
「一つ頼みがある。
ダチのドラゴン、呼んでいいか?」
「お友達の!
どうぞ呼んでください!」
願ってもない展開。ドラゴン二頭、超強力な武器となる。
エッチの方も、少しは楽しめるだろう。二人がかりなら。
レイサは内心舌なめずりした。
魔王領、とある居酒屋。二人のドラゴンが、酒を酌み交わしていた。
「で、サキュバスって、そんなにいいのか?」
フィリップが、鼻の下を長くして聞く。
「いいに決まってるだろ。
プロ中のプロだよ」
サーブの言葉は、イマイチ歯切れが悪い。正直言えば、プロの技がどの程度のものかも知らない。
比較の対象がなかったから、しょうがねぇだろ!
「で、待遇は?」
フィリップは乗り気になった。人族領でずいぶん女遊びを重ねたフリップだが、魔族領ではままならなかった。
第一に資金の問題。魔族領に冒険者ギルドは存在しない。体力だけはあるから、肉体労働で日銭を稼いでいたが、月一程度、娼館で遊ぶのが精いっぱい。
第二に、魔族の女は強い。もちろん一対一で負けることなど考えられないが、後ろに怖いお兄さんが、付いていたりしたらヤバい。
あまり目立つことはできないし、女をさらって、イケナイことを、などということはできなかった。
「スポンサーは魔王の息子だ。
悪いわけないだろ」
それは自信を持って答えられた。カツカツの生活を続けていたころに比べたら、雲泥の差だ。
「いいね! そのサキュバスの記憶、念で流せ」
「えっ、うん……」
サーブは戸惑う。「五秒で発射」の記憶、デリート、できないよな?
「もったいつけてんじゃねぇよ!
まあ、お前、女は苦手だったから……。
ひょっとして、初めてだった?」
「頼むから触れないでくれ」
テーブルに突っ伏すサーブだった。
「そうか……。まあ、誰でも『最初』はあるもんだ。
少々早くても仕方ないさ。
俺も二分もてばいい方だ。
ドラゴンの男って、つらいよな?」
「二分?
五秒の気持ち、わかるか?」
「五秒?
いや……、なんだ……。
最初は仕方ねえ……。
すまん!
もう触れない」
サーブの滝の涙に、心揺さぶられるフィリップだった。
不良はぐれドラゴン、サーブは落ち込んでいた。その理由は言うまでもないだろう。
「玄関入って五秒で発射」
齢(よわい)二百数十歳の彼は、なんとDTだった。
彼が竜王国から飛び出したのは、百二十三歳の時。不良仲間のフィリップと共に、人族領各地で大暴れした。
少しやりすぎたようだ。時の勇者ケンイチのパーティが、討伐に乗り出した。そんな噂を耳にして、フィリップと示し合わせ、魔族領に逃げ込んだ。
魔族領内では、人族領のように暴れることはできない。魔族は人族よりはるかに強い。
いくらドラゴンとはいえ、正規の軍なら中隊レベルの数でも、下手をしたら狩られてしまう。
そこでダテ角を偽装し魔族を装い、町や村を転々として生きてきた。本来の姿では目立ちすぎるから。
そして一週間前、この北の城塞の町で、サキュバスのレイサと出会った。
サキュバスの戦闘力は、魔族の中でも最底辺だ。しかしながら、サキュバス族は「魔眼」の特殊能力を持っている。魅了と鑑定の力は、他のどの種族より優れている。
サーブの真の姿がドラゴンであることなど、一目で見抜かれてしまった。
女慣れしていないサーブは、サキュバスのレイサが怖かった。彼は極端な女性恐怖症だったから。
女性恐怖症、というより、エッチ恐怖症、という言い方が妥当か。
その分野で、能力的に全然自信が持てない。真竜としてプライドだけは高い彼にとって、女性にバカにされるのは我慢できない。
そのため、本格的な叡智に及ぶまで、一週間の時間を要した。「なろう系」のヘタレ主人公並みだ。
本格的じゃなくても、サキュバスの体を張ったサービスはずいぶん濃い。
女日照りのサーブは、濃厚サービスに屈してしまった。
その結果が、「玄関入って五秒で発射」というわけ。
我ながら情けない……。
「サーブ様、お酒など召し上がりませんか?」
レイサが客間に入ってきた。相変わらずのシースルーネグリジェ。
だが、生殖能力が退化したドラゴンジュニアは、十分反応できない。
やる気はあるんだけどね……。ジュニアがついてこない。多分明日にならなければ、戦闘不能だろう。
ドラゴンのオスは、悲しいほど恵まれなかった。
「一つ頼みがある。
ダチのドラゴン、呼んでいいか?」
「お友達の!
どうぞ呼んでください!」
願ってもない展開。ドラゴン二頭、超強力な武器となる。
エッチの方も、少しは楽しめるだろう。二人がかりなら。
レイサは内心舌なめずりした。
魔王領、とある居酒屋。二人のドラゴンが、酒を酌み交わしていた。
「で、サキュバスって、そんなにいいのか?」
フィリップが、鼻の下を長くして聞く。
「いいに決まってるだろ。
プロ中のプロだよ」
サーブの言葉は、イマイチ歯切れが悪い。正直言えば、プロの技がどの程度のものかも知らない。
比較の対象がなかったから、しょうがねぇだろ!
「で、待遇は?」
フィリップは乗り気になった。人族領でずいぶん女遊びを重ねたフリップだが、魔族領ではままならなかった。
第一に資金の問題。魔族領に冒険者ギルドは存在しない。体力だけはあるから、肉体労働で日銭を稼いでいたが、月一程度、娼館で遊ぶのが精いっぱい。
第二に、魔族の女は強い。もちろん一対一で負けることなど考えられないが、後ろに怖いお兄さんが、付いていたりしたらヤバい。
あまり目立つことはできないし、女をさらって、イケナイことを、などということはできなかった。
「スポンサーは魔王の息子だ。
悪いわけないだろ」
それは自信を持って答えられた。カツカツの生活を続けていたころに比べたら、雲泥の差だ。
「いいね! そのサキュバスの記憶、念で流せ」
「えっ、うん……」
サーブは戸惑う。「五秒で発射」の記憶、デリート、できないよな?
「もったいつけてんじゃねぇよ!
まあ、お前、女は苦手だったから……。
ひょっとして、初めてだった?」
「頼むから触れないでくれ」
テーブルに突っ伏すサーブだった。
「そうか……。まあ、誰でも『最初』はあるもんだ。
少々早くても仕方ないさ。
俺も二分もてばいい方だ。
ドラゴンの男って、つらいよな?」
「二分?
五秒の気持ち、わかるか?」
「五秒?
いや……、なんだ……。
最初は仕方ねえ……。
すまん!
もう触れない」
サーブの滝の涙に、心揺さぶられるフィリップだった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる