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89 放置プレイ?

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 ケーンと三人の嫁は、ペガサス夫婦が牽く馬車に乗り、ライラックを旅立った。

とりあえずの目的地は、ハッシュド王国の王都ビーフン。

ハッシュド王国領内には、有名なエルフの森がある。その王国の王都なら、目標のエルフもいるだろうということで、目的地に選んだ。

エルフは人口自体が極めて少なく、森から遠く離れた地域で活動することはまずない。

「フレア斬!」
 総子は炎をまとった日輪刀を一閃。一行を襲撃してきた五頭のブラックウルフを焼き払う。

日輪刀は総子が、光の女神におねだりした超逸品。光属性と炎属性が付与された銘刀だ。

この世界の刀剣類で、三本の指に入る攻撃力を持つ。光と炎を弱点とする敵には最強である。

フレア斬は、刃が直接当たらなくても、日輪刀からほとばしる光と炎の範囲攻撃が可能な技である。

欠点は、炎耐性の弱い敵が焼き尽くされ、素材回収が不可能になることぐらいだ。


「パチパチパチ! 総子、超派手でカッコイイ!」
 ケーンは絶賛。

「えへ…、やっと炎を飛ばせるようになりました」
 光の女神一推しのユニークスキルは、実力アップに伴い、種々の剣技が発動できる太陽剣スキルだ。

意外と派手好みな、女神の趣味が大いに反映されている。

「ブラックさんが涙目やで。
ブラックウルフの毛皮、案外高う売れるし」
 ユリがブラックの首を、ぽんぽんと叩きながら言う。

「総子様、なるべくなら回収可能な技で。
ヒヒン……」

「総子様の修行のためよ。
ケチくさいこと言わないの! 
今晩抜きね」
 妻の言葉に、いっそう打ちしおれるブラックだった。


「おふぁようございます……。
なにかあったのですか?」
 昨夜のヒカリちゃん付き夜伽に疲れ、お昼寝中だったジャンヌが馬車から顔を出す。

「ブラックウルフの襲撃や。
総子ちゃん、初めてフレア斬の範囲攻撃、使えるようになったんや。
日輪刀から炎がびゅんと伸びて、超カッコよかったで」
 ユリが状況を説明する。

「総子さん、見たいです!」
 馬車から身を乗り出し、ジャンヌが言う。

「見たいと言われてもね。
敵がいなきゃ……、っと発見!」

 たまたま上空を飛んでいた、不運なワインバーンは、元聖神女のわがままで、丸焦げにされちゃったとさ。

合掌。


余談だが、ジャンヌの後釜の聖神女には、五名の女性神官が任命されている。
五名はジャンヌに比べたら資質的に劣るが、協力することで十分勤めが果たせている。

旧制度に比べ、個人的な自由も大いに認められるようになった。

ケーンの嫁となったヒカリちゃんは、すっかり丸くなってしまった。
現在彼女は、魔王討伐をあきらめ、専守防衛の方針だ。

したがって、イマイチ物足りなかったムサシも、勇者リストラを免れた。


そのムサシのパーティは…、

「おかしい。
二週間も経つのに、ダンジョンの魔物や宝箱が復活してない。
どうなってるんだ?」

 エッチの味を覚えたヒカリちゃんは、さぼり癖がついていた。

「光の女神様、ムサシのパーティ、現在ダブルSダンジョンで暇つぶししているようですが……」
 光の女神に仕える天使Aが、遠慮がちに言う。

「ふ~ん……」
 光の女神は、ドレッサーに向かい、お肌の手入れに余念がない。今晩は久しぶりに旅のエッチ!
 いたすのは、相変わらずテントだろうが、野外エッチに挑むのもおもしろいかも!
 ケーン、外やダンジョンだと、超燃えるんだよね!

 光の女神に、もちろんお肌の手入れなど必要ないのだが、そこは気分の問題。

「現在二周目に入っているのですが、モンスターと宝箱のリポップが……」
 天使Aは、ムサシたちが不憫でならない。光の女神様は完全に放置プレイの方針だと見受けられる。

「いいの、いいの。魔族には動きがないし、いまさら修行でもないでしょ?」
 光の女神は軽く流す。魔族が侵攻したら、ケーンや嫁たちがなんとかしてくれるだろう。
 ジャンヌやテレサも、ずいぶんたくましくなった。また憑依して、戦闘にも加わりたい!

「ムサシたち、リッポップを待っているようですが……」
 
「もう!
しょうがないわね」
 しぶしぶお仕事にとりかかる光の女神だった。

 ダブルSダンジョンとなったら、少しめんどくさいわね。Aクラスダンジョンセットでいいか……。

 そんなことを考えるヒカリちゃんだった。
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