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16 とんでもない人の嫁になっちゃった

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 ケーンとキキョウ、おまけのブラックは、赤の森を訪れた。

 赤の森は、Bランク以上が推奨されている。普通はDランク以下、立ち入り禁止となっている危険な狩場だ。
 トリプルSのキキョウがいるから、ケーンたちのパーティでも問題なく入れる。

「でかい魔物の気配がする。
地面をくねりながら進む音だ。
多分……」
「私も気づきました。赤の森ならレッドサーペントですね。
お任せください」
 ケーンの指摘を待つまでもなく、キキョウはマサムネ改の鯉口を切っていた。
 斥候としてのキキョウの能力は抜群だ。そのキキョウは、内心驚いている。
 ケーン様は、私より一瞬早く気配を感知した。キキョウは索敵能力に関し、誰にも負けない自信があった。
 私のアイデンティティが……。

「ケーン様、お願いですから、装備、もう少しましなものを。
まるで初心者です」
 赤の森で狩りをするのに、ケーンは普通の皮鎧に青銅の剣のまま。強いことはわかっているが、見ていて不安になる。

「大丈夫だよ。俺を信用できない?」
 ケーンはにこりと笑う。キキョウはケーンのその笑顔に弱かった。少年のようにあどけない。

「私が狩ります!」
 キキョウは一歩前に出る。信用できる、できないの問題ではない。
 私の心臓の問題!

「大丈夫だって!
見てて!」
 ケーンはキキョウを跳びこし、駆けて行った。

「キキョウ様、本当に大丈夫です。
レッドサーペントの牙なんて、ケーン様の結界、破れるはずはありません。
仮に破れたとしても、即座に回復できます」
「毒霧を吐くのよ!
レッドサーペント!」

「ケーン様は、あらゆる耐性を持っております。
ケーン様の耐性を破れるのは、女魔王の魅了魔法ぐらいのものでしょう」
 ブラックは胸を張って応えた。

「マジ…ですか?」
「マジです。ケーン様の実力、御父上と対等。控えめに申し上げてですが」
 ブラックの長い鼻は、いっそう高々だった。 

 一分後、ケーンは長くて太いレッドサーペントを引きずって帰ってきた。

「ブラック、お土産」
 そいうって、ケーンはレッドサーペントの頭を、ブラックの方へ放り投げた。

「レッドサーペントの毒嚢、金になりますな!
他の部位もお任せください!」
 ブラックは頭をバッグにしまい、解体にとりかかった。

「少しは信用してもらえた?」
 ケーンは澄まして言う。

「青銅の剣で、どうやって頭落とせるんですか?
レッドサーペントの鱗、相当硬いはずです」

「ドラゴンなんかの装甲は無理だと思うけど、このあたりの魔物なら……」
 ヒュン! ケーンは大木を一閃。大木を軽く蹴る。

 バリバリバリ……、ずっし~ん。大木は周囲の木枝をへし折り、倒れた。

 は~~~、とキキョウは、深くため息をついた。私より強い。間違いなく……。

 とんでもない人の、嫁になっちゃったよ……。
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