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1話 心の支え

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「…麗!?」

夜、21時。

玄関の扉を開けて入ってきた己龍麗の姿に、母親である己龍棗は一瞬、驚いたような顔をしたがすぐにいつもの和やかな笑顔に戻ると、久しぶりに家に帰ってきた息子を出迎える為に両手を広げて麗に近付く。

「…父さんは?」

だが、麗はそんな母親を綺麗にスルーすると、靴を脱ぎ捨て足を止めずに問いかける。

「…………………………」

「……書斎だね」

何も言わない母親の視線が気遣わしげに2階を見たのを見逃さず、足早に階段へ向かう。

「…待ちなさい!!…麗!!…あなた、学校は……麗!!」

慌てて麗を追いかける棗。

その時。

「…何だ、騒々しい」

目指していた2階の部屋の扉が開き、聞こえてきた太い声に階段を駆け上がっていた麗の足が止まる。

書斎から顔を覗かせた父親の己龍要に見詰められて、階段を駆け上がっていた麗の足が止まる。

「……あなた、お騒がせして……」

「……麗か………入りなさい」

息子を庇うように階段を駆け上がってきた棗の声は、しかし、次に聞こえてきた要の声に遮られ最後まで言う事ができなかった。

「………あなた!!」

「2人で話がある…誰も入ってくるんじゃない、いいね」

父親の姿を見て興奮が冷めたのか、さっきまで紅潮していた頬は若干、青ざめ………だが、意を決したような顔で父親の姿が消えた書斎へと向かう麗。

その息子の後ろ姿を心配そうに……だが、何もできず見送る棗の前で書斎の扉は閉まった。

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