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思い込んでしまっていた

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「…………ッ!!!!!!!」

「「「「っ!?」」」」

め、珍しいな。セルシアが拳を壁に叩きつけるなんて。

シュラじゃないから、あんまり大きな音は鳴らなかったけど……セルシアだからか、それはそれで逆に怖いと感じるな。

「…………すぅーーーーー……はぁーーーーーー…………ごめん。逃がし、た」

「いや、あれは仕方ないよ。俺らも、もっとあのコボルトが逃げるかもしれないっていう可能性を頭に入れておくべきだった」

これまで地下遺跡内で遭遇したモンスターたちは、最初は群れで遭遇していて、最終的に俺たちの中の一人と戦う状況になっても、逃げようとしなかった。

ダンジョンの中で生まれたモンスターが基本的に逃げようとしなかったのもあって、地下遺跡内に生息するモンスターも逃げないと思い込んでしまっていた。

「ラガス坊ちゃまの言う通りです。まさかセルシア様との戦いから逃げ、最後は自ら転移トラップを踏んでどこかに飛んでしまうとは」

「……あれって、完全にあそこに転移トラップがあるって解ってた動きだよな」

「そうね。迷いなくあの床を踏んだ……いえ、あの床で止まった。知っていなければ、解っていなければ出来ない選択肢…………ラガス坊ちゃま。アサルカコボルトを視た時、何か特殊なアビリティを有していましたか?」

特別なアビリティ、か…………まてよ、そういえばあいつ……鑑定のアビリティを、持っていたか?

「……絶対、とは言えない。でも、もしかしたら鑑定のアビリティを持っていたかもしれねぇ」

「っ!!! そっ……それは…………そう、でしたか」

基本的に名前を確認するつもりだったから、会得してるアビリティまで細かく確認してなかった……クソっ!

「悪い。もっとあいつが持ってるアビリティを確認しておくべきでした」

「いえ、ラガス坊ちゃまは悪くありません。結果として、全員あのアサルカコボルトが劣勢になったとしても、逃げることはないだろうと思っていたのですから」

「……そうか」

それは、そうかもしれない。

ただ、鑑定のアビリティを持ってるモンスターっていうのは、意外と数が少ないんだ。
だから、狼竜眼で確認した段階で、もっと警戒しておくべきだった。

「それでも、悪かったな、セルシア」

「うぅん。ラガス、は……悪くない、よ。倒せなかった……貫け、なかった……私が、悪い」

…………ここで、上か下かどちらか解らないけど、不用意に探しに行こうとしない辺り、セルシアもセルシアで成長してるんだな。

「とりあえず、あぁいう個体もいるってのを頭に入れとかないとな」

「そうですね。しかし、建物からダンジョンに変化している場所に生息しているからか、それともダンジョンにはあぁいった個体が時折現れるのか……」

「気になるところではあるな」

前者の可能性が高い気がするけど……って、それはそれで気になるんだけど、それよりも一個問題が残ってしまったな。

あのアサルカコボルト、勘だけどセルシアと戦った時よりも強くなるだろうな。
それに、あの性格だ……ただ強くなるだけじゃなくて、嫌な方向に強くなりそうだ。

…………マジで、セルシアが悪いんじゃない。
なんなら、後方であからさまにセルシアを相手に所々でバカにする様な笑みを浮かべてたアサルカコボルトを見てた俺らが気付かなきゃいけなかった。

あぁいうのは偶にいるけど、あそこまで露骨で……対応するのも上手い個体は、初めて見た。

「……しゃあないよな」

「? 大丈夫っすか、ラガスさん」

「あぁ、大丈夫だよ」

モンスターを逃がしてしまうってのは、そこまで珍しい話じゃない。
珍しい話ではないんだけど…………だからといって、伝えない訳にはいかないよな~~~~。

とりあえず、戻ったら伝えておくか。
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