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「そういえば、俺エスエールさんたち以外の大手クランの人たちとは関わってないんですけど、他の大手クランも順調に探索してるんですか?」

「今回は本当に大手って言われてるとこしか動いてないからな。割と順調だとは思うが、この前シルバーランクのハンターが一人死んだって話は聞いたな」

「シルバーランクのハンターが……」

既に死者が出ていてもおかしくはない。
それは俺たちも十分に解っていたけど、改めて聞かされると……ちょっと感じるものがあるな。

「Bランクの……蜘蛛系モンスターに殺られたんだったか? 解毒が間に合わなくて死んだって聞いたな」

「毒、ですか」

メリルがいるから、毒とかは割と大丈夫かな。
つっても、蜘蛛系のモンスターって狭い空間でも自由自在に動き回りやがるからな。

糸や毒も厄介だけど、あぁいう動きも面倒だ。

「即効性の毒だったらしくてな。無事にその毒蜘蛛は倒せたみたいだが、解毒は間に合わなかったらしい」

「……当然ですけど、そのクランは探索を止めてないんですよね」

「みたいだな。それぐらいって言うのは良くねぇ……それは俺も解ってるが、クランとしてはシルバーランクのハンターが一人死んだってだけじゃあ、止まれないだろうな」

「ちなみに、どれぐらいの犠牲が大手クランでも止まるのでしょうか」

「…………これは俺の個人的な感覚だが、一度にシルバーランクの奴らが……五人以上、ゴールドランクのハンターが複数に死ねば、色々と考えなきゃならなくなるな」

シルバーランクが五人以上、ゴールドランクが複数人か…………一度に多数のBランクモンスターや、Aランクモンスターと遭遇したら、それぐらいの被害が出てもおかしくなさそうだな。

「敗走しても、生きて帰ってくるのが一番。って解ってても、そうする為に誰かが犠牲になる必要が出てくる場面もあるからな」

「……今、まだ完全にダンジョン化してないのを考えると、上の階に登ったからって安心出来ませんもんね」

「そうなんだよな~~」

エスエールさんもそういった経験があるんですか、とは聞かなかった。
空気を読んだとかじゃなく、単純に聞くような場ではないし、わざわざ訊こうとも思えなかった。



「ご馳走様でした」

「おぅ、腹一杯になったか?」

「はい」

「そりゃ良かった。んじゃ、またな」

本当に全額驕ってもらい、丁度腹八分目の状態。

「いやぁ~~~、美味かった~~。やっぱり、先輩ってのはエスエールさんみたいな人が一番良いっすね」

「まぁ、それは確かにそうだな」

後輩に飯を奢って、部下? の為に、わざわざ他のハンターに稽古を付けてやってほしいと頼む。

エスエールさんがクランマスターって立場を考えても……シュラの言う通り、やっぱり良い先輩だな。

「…………」

「? メリル。難しい、顔、して、どうした、の?」

「いえ、なんでもありません」

「メリル、なんでもないことないだろ。もしかして、シルバーランクのハンターが死んだって話について考えてたのか?」

「いえ、違います」

あら、違ったのか。
メリルが何かを考え込むなら、それだと思ってたのに。

「……あっ、もしかしてあれか! エスエールさんが話してた、Bランクの毒蜘蛛とどうやって戦うかを考えてたんだろ」

「まぁ、そうですね」

「えっ……そうだったん?」

なんか、マジで以外というか、予想外過ぎた。

「何をそんなに驚くのですか。私だってそれぐらい考えますよ」

「そ、そうか…………なんかすまん」

「別に謝る必要はありませんが……もし、まだエスエールさんが話して頂いたモンスターが地下遺跡に潜んでいるならば、基本的に対処するのは私になりそうですからね」

……メリルはメリルで、強くなろうって考えに意欲的になってくれてるのかもな。

なんて考えてると、少し離れた場所に見覚えのある顔を発見した。
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