927 / 968
バカだったから
しおりを挟む
SIDE メリル
「二人はどう思いますか!!」
ラガスがヴェルデと二人で呑んでいた時、メリルもヴェルデのパーティーメンバーであるフィーマとファールナと共に、洒落た店の個室で呑んで食っていた。
「どうと言われましても…………難しい問題ですね」
二人と合流して酒が届いてから早々、メリルは一杯目を呑み干し、先日あったラガスとの意見の衝突に関して話し始めた。
「ただ、イレックスコボルトという名のモンスターは初めて聞きましたが、どれだけ恐ろしいモンスターなのかは十分理解しました」
「だよね~~~。折角メリルさんがぶち込んだ毒を体の中で……燃やして? 掻き消したんでしょ。それでまだピンピンしてるって、さすがに反則だよね~~~」
ファールナに続いて、フィーマもイレックスコボルトの強さはヤバい、おかしい、反則だと口にする。
ただ……口端は薄っすらと上がっていた。
鬼人族らしい鬼人族であるフィーマは、シュラやセルシアよりの考えを持っているため、この場では確実にメリルの味方とは言えなかった。
普段のセルシアであれば、その辺りを読めていた筈だが……今のメリルには、それを読むだけの余裕はなかった。
「最終的に、ラガス坊ちゃまに全て任せてしまいましたし……」
「結構ギリギリの戦いだったの?」
「……うっかり、使ってないアビリティがあったので、それを使用していればもう少し余裕を持って勝利を掴めたかもしれません」
うっかりミスをしなければ、Aランクの怪物を相手に余裕を持って倒せたかもしれない。
その話を聞き……二人はさすがにそれは盛り過ぎだろ、とは思わなかった。
何故なら、ラガスの実力は十分過ぎるほど、身を持って体験している。
「けど、それを使用していれば、反動で動けない時間が生まれてしまいます」
「あぁ~~~、なるほど~~~。話を聞く限り、噂の地下遺跡は超ヤバそうな場所って感じだし、そうなると動けなくなるのは不味そうだね~」
「そうですね。Bランクモンスターが出現するのが当たり前となると、イレックスコボルトを討伐した後に、再びAランクモンスターと遭遇する可能性もあります。そうなると…………そうですね。メリルさんが心配に思う気持ちも解ります」
ファールナたちも、これまで何度も窮地と言える状況に遭遇したことがある。
だが、Aランクモンスターに遭遇したことがない二人であっても、Aランクモンスターが正真正銘の怪物であるという事実は、信じて疑わない。
「そうでしょう!!!」
「ん~~~。でもさ、パーティーの強さとか見ると、別にAランクモンスターとの戦闘が危険であることには変わりないけど……生命力? を力や再生力に変えられる様な個体じゃなければ、そのまま倒せそうだったんだよね」
「…………そうですね」
タラればの話ではあるが、あのままイレックスコボルトが生命力を放出しなければ、メリルがぶち込んだ毒が回り、シュラやセルシアの攻撃も当たる様になり、後は詰将棋の様な形になって戦闘を終わらせられた可能性は高い。
「その後、メリルさんも一人でBランクモンスターのケルベロスを倒しちゃったんでしょ」
「あれに関しては、ケルベロスが思ったよりもバカだからこそ、一人で討伐出来た様なものですわ」
身体能力に関しては、未開拓地……地下遺跡に生息している個体ということもあり、メリルの予想を少し上回っていた。
だが、本当に……予想以上に頭が悪かった。
「そんなにバカ個体だったの?」
「えぇ。全く三つの頭で意思疎通が取れてない状態でしたわ。最後の私が体内に流し込んだ毒を、全身を燃やして熱消毒する行動には驚かされましたけど」
嫌な記憶、蘇る。といったところではあったが、全身を……体の内側を燃やし尽くしたことで、ケルベロスの身体能力が低下。
結果、毒の効果がなくとも仕留められた。
「……あまり、上から言える立場ではありませんけど、私はメリルさんの実力あってこその功績だと思います」
それは嫌味などではなく、ファールナの本心だった。
「二人はどう思いますか!!」
ラガスがヴェルデと二人で呑んでいた時、メリルもヴェルデのパーティーメンバーであるフィーマとファールナと共に、洒落た店の個室で呑んで食っていた。
「どうと言われましても…………難しい問題ですね」
二人と合流して酒が届いてから早々、メリルは一杯目を呑み干し、先日あったラガスとの意見の衝突に関して話し始めた。
「ただ、イレックスコボルトという名のモンスターは初めて聞きましたが、どれだけ恐ろしいモンスターなのかは十分理解しました」
「だよね~~~。折角メリルさんがぶち込んだ毒を体の中で……燃やして? 掻き消したんでしょ。それでまだピンピンしてるって、さすがに反則だよね~~~」
ファールナに続いて、フィーマもイレックスコボルトの強さはヤバい、おかしい、反則だと口にする。
ただ……口端は薄っすらと上がっていた。
鬼人族らしい鬼人族であるフィーマは、シュラやセルシアよりの考えを持っているため、この場では確実にメリルの味方とは言えなかった。
普段のセルシアであれば、その辺りを読めていた筈だが……今のメリルには、それを読むだけの余裕はなかった。
「最終的に、ラガス坊ちゃまに全て任せてしまいましたし……」
「結構ギリギリの戦いだったの?」
「……うっかり、使ってないアビリティがあったので、それを使用していればもう少し余裕を持って勝利を掴めたかもしれません」
うっかりミスをしなければ、Aランクの怪物を相手に余裕を持って倒せたかもしれない。
その話を聞き……二人はさすがにそれは盛り過ぎだろ、とは思わなかった。
何故なら、ラガスの実力は十分過ぎるほど、身を持って体験している。
「けど、それを使用していれば、反動で動けない時間が生まれてしまいます」
「あぁ~~~、なるほど~~~。話を聞く限り、噂の地下遺跡は超ヤバそうな場所って感じだし、そうなると動けなくなるのは不味そうだね~」
「そうですね。Bランクモンスターが出現するのが当たり前となると、イレックスコボルトを討伐した後に、再びAランクモンスターと遭遇する可能性もあります。そうなると…………そうですね。メリルさんが心配に思う気持ちも解ります」
ファールナたちも、これまで何度も窮地と言える状況に遭遇したことがある。
だが、Aランクモンスターに遭遇したことがない二人であっても、Aランクモンスターが正真正銘の怪物であるという事実は、信じて疑わない。
「そうでしょう!!!」
「ん~~~。でもさ、パーティーの強さとか見ると、別にAランクモンスターとの戦闘が危険であることには変わりないけど……生命力? を力や再生力に変えられる様な個体じゃなければ、そのまま倒せそうだったんだよね」
「…………そうですね」
タラればの話ではあるが、あのままイレックスコボルトが生命力を放出しなければ、メリルがぶち込んだ毒が回り、シュラやセルシアの攻撃も当たる様になり、後は詰将棋の様な形になって戦闘を終わらせられた可能性は高い。
「その後、メリルさんも一人でBランクモンスターのケルベロスを倒しちゃったんでしょ」
「あれに関しては、ケルベロスが思ったよりもバカだからこそ、一人で討伐出来た様なものですわ」
身体能力に関しては、未開拓地……地下遺跡に生息している個体ということもあり、メリルの予想を少し上回っていた。
だが、本当に……予想以上に頭が悪かった。
「そんなにバカ個体だったの?」
「えぇ。全く三つの頭で意思疎通が取れてない状態でしたわ。最後の私が体内に流し込んだ毒を、全身を燃やして熱消毒する行動には驚かされましたけど」
嫌な記憶、蘇る。といったところではあったが、全身を……体の内側を燃やし尽くしたことで、ケルベロスの身体能力が低下。
結果、毒の効果がなくとも仕留められた。
「……あまり、上から言える立場ではありませんけど、私はメリルさんの実力あってこその功績だと思います」
それは嫌味などではなく、ファールナの本心だった。
134
お気に入りに追加
3,491
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる