万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai

文字の大きさ
上 下
915 / 990

何を思い、殺したのか

しおりを挟む
「…………」

「ラガス坊ちゃまが一番に目覚めてるなんて、珍しい事もあるものですね」

なんとなく目が覚めてしまって、二度寝する気が起きず焚き木を眺めてると、おそらく毎日一番に起きてるであろうメリルが後ろから声を掛けてきた。

「……確かに、珍しいかもな」

「えぇ、本当に珍しいですよ……何か、悩み事でもあるのですか?」

「悩み……ん~~~~。別に、悩みではないかな」

「そうですか」

相変わらず俺が焚き木を眺めていると、何も言わずに紅茶を淹れ始めた。

「どうぞ」

「ありがと」

……うん、美味い。
それに……こう、心に風がスーっと入ってくるというか、吹き抜けるというか……悪くない感覚。

「落ち着きましたか?」

「元々落ち着いてはいるよ。ただ、楽な感じになったかな」

「それは良かったです……考えていることは、先日戦ったイレックスコボルトに関してですか?」

「……ふふ、バレてたか」

「私はラガス坊ちゃまの専属メイドですからね」

そんな誇らしげな表情で言われると、あっさり見抜かれたことに対してイラつくどころか、寧ろ嬉しく感じる。

「流石だな。別にどうでも良いことではあるんだけど、あのイレックスコボルトは……結局、下剋上されてたんじゃなくて、別の理由で同族たちを殺したんじゃないかって思って」

「下剋上以外の理由、ですか…………そういえば、戦闘が始まる前、巨大リザードとの戦闘を終えたイレックスコボルトには悲しみや怒りといった表情が感じられませんでしたね」

「そうだ、それが気になってたんだよ」

メリルと同じ事を考えてた。

コボルトやその上位種たちの死体を俺たちが発見した時……おそらく、イレックスコボルトが殺してから、あまり時間が経っていなかった。

斥候専門じゃないから、死体の状態から何時間前に殺されたとか正確な時間は解らないけど、多分……三時間も経ってないんじゃないかな。

「モンスターにも多少なりとも悲しいという感情はあるだろ」

「ないとは言えませんね。イレックスコボルトとしては、同族たちを大切に扱っていたかもしれませんが、他のコボルトたちは、大切に扱われていると思っていなかった。寧ろ雑に扱われていたと感じる、なんてこともあるでしょう」

「いやなすれ違いだな。怒りに関しては、単純に下剋上なんてされれば、なんなんだあいつらはって怒りが爆発してもおかしくない。でも、遭遇した時のイレックスコボルトの顔からは……そのどちらも感じなかった」

俺たちはカウンセラーじゃない。
つか、モンスターは人間よりも表情だけで感情を判断するのが難しい。

だから結局のところ、あの時イレックスコボルトがどういった感情を持っていたのか、正確なところは解らない。

でも、メリルも同じように感じたってことは、多分合ってるだろう。

「……偶々、同族たちが付いてきた。結果としてレックスの名を持つ王になりはしたけど、元々王になることに、同族を束ねることに興味がなかったからこそ、何も思わず鬱陶しいと感じ始めた同族を殺した……といった可能性はどうでしょうか」

「それは…………いや、興味がないからこそ、たとえ同族であっても、何も思わず殺せる、か」

興味がないからこそ、関係無いと思っている相手だからこそ……殺せるのか。

「殺せることに関してはなんとなく解ったけど、でも……食べるか?」

「イレックスコボルトはモンスター。モンスターに私たちの常識は通じないでしょう」

……それもその通りだな。

人間同士で殺し合いは起こっても、人間を食べる人間は…………とりあえず、常識ではないよな。
でも、自然界で生息してるモンスターなら、同族でも食料になる、か……それか、過去に同族を食べた経験があるからこそ、イレックスという名を持つ上位種に進化した?

「………………はぁ~~~。常識が通じないからこそ、考察し応えがあるな」

「ですね。では、そろそろ朝食の準備を始めます」

メリルが朝食の準備を始めてから十数分後、匂いはテントの中まで届いてない筈だが……シュラが、その数分後にセルシアが起きてきた。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

転生ヒロインと人魔大戦物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
***11話まで改稿した影響で、その後の番号がずれています。 小さな村に住むリィカは、大量の魔物に村が襲われた時、恐怖から魔力を暴走させた。だが、その瞬間に前世の記憶が戻り、奇跡的に暴走を制御することに成功する。 魔力をしっかり扱えるように、と国立アルカライズ学園に入学して、なぜか王子やら貴族の子息やらと遭遇しながらも、無事に一年が経過。だがその修了式の日に、魔王が誕生した。 召喚された勇者が前世の夫と息子である事に驚愕しながらも、魔王討伐への旅に同行することを決意したリィカ。 「魔国をその目で見て欲しい。魔王様が誕生する意味を知って欲しい」。そう遺言を遺す魔族の意図は何なのか。 様々な戦いを経験し、謎を抱えながら、リィカたちは魔国へ向けて進んでいく。 他サイト様にも投稿しています。

処理中です...