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事態を把握してる……筈

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SIDE メリル

「なぁ、やっぱ…………いや、なんでもねぇや」

「そうですか」

現在、メリルたちは一旦地上まで全速力で戻り、地下遺跡の入り口を中心に、半径十キロほどのエリアをくまなく探索。
勿論、地上に戻る際もルーフェイスが嗅覚を尖らせ、ラガスとセルシアの気配を探していた。

だが……結果として二人は探索していた階層よりも上の階層、地下遺跡の外に転移させられてはいなかった。

結局時間の無駄になってしまい、シュラはうっかりそれを口にしそうになったが……どう考えてもメリルの機嫌が悪くなるとやらかす前に判断することに成功。

実際にシュラも、転移系のトラップを踏んでしまった場合、確実に下の階層に転移される訳ではない……という可能性は解らなくもなかった。

「……メリル。一個思い付いたんだけどよ、二人が転移したトラップが復活するのを待つってのはどうだ?」

「そんな事…………そう、ね。ありかなしかで言えば、なしではないでしょうね」

地下遺跡に設置されているトラップは復活する。
それはメリルたちも情報として把握していた。

「ただ、地下遺跡に設置されているトラップと、ダンジョンのトラップが同じとは限らない」

「つまり、転移トラップではあるが、転移する場所は異なる可能性があるってことか?」

「そういう事よ」

「……情報がねぇってのは、クソ面倒だな」

普段は事前情報などを好まないシュラだが、この時ばかりは情報のなさに苛立ちを感じた。

「それと、もし転移トラップを発動した際に転移される場所が同じだとしても、ラガス坊ちゃまとセルシア様が既に上へ向かってる可能性が高い」

「ルーフェイスの脚なら追い付けっと思うが……まぁ、絶対にそっちの方が良いとは言えないか………………つかさ、もしかしたらだけど……二人だけで楽しく探索し始めちゃうとか、ないよな」

「さすがにそれは……それは………………」

「…………」

シュラの予想に、メリルだけではなく、二人を背に乗せて走るルーフェイスも何とも言えない表情を浮かべていた。

「それは、ないかと」

「そうか? いや、俺も二人が考え無しで行動するタイプだとは思ってないぞ。俺より考えて動けるだろうからな。ただ……ラガスさんは当然として、セルシア様も結構冒険心が強いつーか、強敵との戦いを好むだろ」

「…………確かに、それらの可能性を完全には否定出来ないけれど、この非常時にそんなことをするほど、二人とも私情を優先しない筈よ」

「……それもそうか」

ラガスとセルシアも、確かにシュラの言う通り、冒険心が旺盛なタイプだが、それでも今が非常事態であることが解らない程、メリルたちの自分たちを心配する気持ちよりも己の冒険心を優先するほど我儘ではない。

「つか、転移トラップまであるってなると、本当にただの地下遺跡に思えなくってきたな」

「かつて存在していた、今は滅んだ文明……その文明で栄えた城、なのかもしれないわね」

「ラガスさんが似た様な話をしてたっけ? 外的から守るために、元々トラップが設置されてたってことか。いつの時代の城? なのかは知らねぇけど、随分と技術力が高かったんだな」

そうこう話してるうちに、シュラたちは地下遺跡に再突入し、ルーフェイスはあっという間にラガスとセルシアが転移してしまった場所に到着。

ただ、そこからはルーフェイスの脚力を活かし、速攻で下へ下へ降りていく……というのは珍しい。

本気の脚力はパーティーで一番のルーフェイスだが、ここまで降りてこられたのは、自分たちが通った道の残り香を辿ってきたから。

ここからは手探りで下に続く階段を探さなければならない。

「ルーフェイス。トラップとモンスターにだけ気を付けて移動して。他のことは気にしなくて大丈夫だから」

ルーフェイスは非常に賢く、ラガスたちがこの遺跡の地図を作っていると知っていた。

だからこそ、ここからはゆったりと移動すべきかと考えていた。

「ワゥ!!!」

しかし、現在主人の代わりであるメリルから気にしなくても大丈夫だと告げられ、指示通りトラップとモンスターに気を付けて下の階層に続く階段を探し始めた。
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