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そういうトラップもあり

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SIDE メリル

「はぁ、はぁ…………ッ!!!!!!!!!!」

リビングデッドナイトとの戦闘が終了した後、メリルは全力で拳を壁に叩きつけた。

(なんたる……なんたる失態ッ!!!!!!!!)

奥歯が砕けるのではないかという力で噛みしめる。

目の前で……主と、主のパートナーが転移トラップによって消えてしまった。
何故、自分が事前に気付かなかったのか、注意しなかったのか……何故という言葉がメリルの脳内を埋め尽くす。

「あぁ~~~~~~~……クソ、やっちまったな」

「…………そうですね」

「まっ、でもあれだ。メリル、俺らの主人はどうよ」

「どう、とは」

「バカ強い、頭が良い。料理や錬金術も出来る超凄い人ってのが俺の印象なんだが、お前はどうよ」

「………………」

ラガスに対して、どういった印象を持っているか。

(強い……それは間違いない。一人で、Aランクモンスターを倒せる実力を持ってる……賢い判断が出来るかどうかはさておき、思考力はある。普通の貴族の令息が手を出さない物事にも挑戦する…………)

じっくりと考え込んだ結果、おおよそシュラと同じ考えに至った。

「ありがとう、シュラ。少し、落ち着いたわ」

「そりゃ良かったぜ。怒りに身を任せて壁に拳を叩きつけるとか、全然お前らしくなかったからな」

無意識に魔力を纏っていたこともあり、壁には亀裂が入っていた。

「……ラガス坊ちゃまであれば、という考えには至れました。セルシア様だけではなく、ラガス坊ちゃまも共に居るのであれば、不幸中の幸いと言えるでしょう。ですが、取り乱すなというのは無理な話です」

「まぁ、それもそうだな」

こんな時だからこそ、逆に冷静な対応でメリルの不安を和らげたシュラだったが、それでもセルシアとラガスが転移トラップによって消えた瞬間、しまった……ヤバいという感情で一杯一杯になり、戦い方が非常に雑になってしまった。

(肝が冷えた? 心臓が、肺が締め付けられたような感覚? だったな。リビングデッドナイトとの戦いが終わるまで、呼吸がし辛かった)

ラガスの実力は信頼している。
セルシアの実力に関しても同じく、並大抵の試練を打ち消せると……寧ろ楽しみそうだと思っている。

だが、現在シュラたちが探索している場所は、地下遺跡という現段階に限れば、ダンジョンよりも恐ろしく、君が悪い魔境。
いくら規格外な強さと手札を持つラガスであっても、無事に合流できる保証はない。

「とりあえず、モンスターに殺されるって心配はしなくても良いんじゃないか? 必ずしも、Aランクのモンスターに遭遇するってわけじゃねぇんだろ」

「そうですね…………それに二人も今、それが許されるタイミングではない事は解ってるでしょう。それより、ルーフェイス。ラガス坊ちゃまとの会話は行えますか?」

「クゥ~~~~」

「そうですか……そうなると、やはりかなり下の階層に飛ばされたようですね」

ラガスとルーフェイスは念話によって会話が出来る。
ある程度距離が離れていても会話出来るのだが、それでも限度がある。

(転移トラップという性質上、地下遺跡の外に転移させるということはないでしょう…………ありませんよね?)

この後、メリルは現在探索中であった階層よりも、更に下の階層へ向かい、ルーフェイスの鼻を頼りに二人を探すつもりだった。

だが、転移した二人が絶対に下の階層の階層に転移しているとは断言出来なかった。

「…………シュラ。あなたは、二人がどこに転移されたと思う」

「どこって、ここより更に下の階層じゃねぇのか?」

「私もそう思うわ。でも……地上の、未開拓地の何処かに転移されたという可能性も否定出来ないと思うの」

「はっ!!!??? そりゃトラップの意味が……………………いや、あるか。ぶっちゃけ……ダンジョンの転移トラップでも、それされたら実害はなくても、イラつきはするな」

二人は五分ほど考え込んだ末に、不安を払拭する為に、ルーフェイスに全速力で一旦地上に戻るように頼んだ。
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