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「ラガス坊ちゃま、寝る前に少しよろしいでしょうか」

「……もしかして、フィーマとファールナから、近々Bランクモンスターに挑みたいって相談されたのか?」

「っ! そ、そうなのですか……何故ぞれを?」

宿に戻ると、シュラは早々に寝た。
現在起きてるのは俺とメリルとセルシアのみ。

「ラガス……読心術、みたいな、アビリティを会得、した、の?」

「そんな訳ないだろ、セルシア。今日、実はレグディスとヴェルデからその話をされてな。んで宿に戻ってきたら、メリルが真剣な表情で伝えたい事があるって顔してたから、もしかしたらと思ってな」

「そのまさかです、ラガス坊ちゃま」

やっぱりか。
まっ、二人からっていうよりレグディスがメインで伝えてきたんだが……フィーマとファールナも同じ考えを持ってるなら、ちゃんとパーティーの意志と捉えて良さそうだな。

「Bランクモンスターに挑戦、か……」

「彼女たちの気持ちは汲みますが、私としてはやや早い気がします。正確には、未開拓地に生息しているBランクモンスターを相手にするのは早いかと」

「考えは同じみたいだな」

前向きに検討するというか、相手を選びはするけど、俺としては既にあいつらとBランクモンスターを戦わせようとは思ってる……けど、メリルにはその気持ちは欠片もない感じか?

「……ラガス坊ちゃま、ニヤけてますよ」

「そうか?」

「全く……ラガス坊ちゃま、彼らが今挑んでも構わないと考えてるようですね」

「別にあれだぜ、まだ早いという気持ちがあるのは嘘じゃない。ただなぁ、もう覚悟が決まってる様に見えたんだよ」

俺たちがまだ早いって言っても、俺たちが指導する期間が終われば、勝手に挑むだろう。

であれば、俺たちが見える範囲で好き勝手戦ってくれた方が良い。
って…………簡単に納得はしてくれないか。

「覚悟が決まっているからといって、容易に差が埋まる訳ではありません」

「……ふふ、随分とあいつらの事を大切に思ってるみたいだな」

「それはラガス坊ちゃまとて同じでしょう」

おっと、これは手厳しい返しだ。
確かに……関わった以上、そこら辺のハンターよりもずっと大切に思ってるのは間違いない。

「他の地域に生息しているBランクモンスターであればまだしも……この地域に生息してるBランクは」

「同じ事を考えてたよ。でも、あいつらはこれからもこの未開拓地をメインに、ハンターとして活動していくんだろ。それなら、いずれは避けては通れない道だ」

「……その道は、直ぐに通らなければならないのでしょうか」

「通らなければならないんだろうな」

俺たちには全ては理解出来ない。

でも、あいつらは本能的に全てを悟ってるのかもしれない。

「レグディスが、面白い事を教えてくれたんだよ。もし……この機会を逃せば、俺たちは上のステージに登る機会を失ってしまうんだと」

「? 今回だけが、私たちが指導を行っている機関だけが、Bランクモンスターと戦えるチャンスという訳ではないでしょう」

「……上手く言葉にするのは難しいな。ただ、あいつらにとって……今、この時期が一番気持ちが乗ってるんだろうな。もしかしたら、意外と半年後……一年後ぐらいに、同じテンションになるかもしれない」

仮に、俺たちが何とか出来る時期に、討伐に失敗したからといって、二度とチャンスが訪れない訳でもない。

それこそ何度もチャンスは訪れるだろう。
ただ、今ほど明確に討伐出来るビジョンが浮かぶことはなく、根拠がないふわふわし過ぎてる半端な自信ではなく、言葉にするのは難しいけど、今の四人には揺るぎない自信がある。

「けど、今しかないと思ってるのは、多分あいつらにしか解らない感覚で、俺はその感覚が間違ってるとは思わない」

「…………」

「どうする? そんなBランクモンスターに挑みたいなら、私を倒すだけの力を見せてから挑みなさい!! って感じで壁として立ち塞がるか?」

「私とて、彼らの努力は認めてますし……その様な恥ずかしい真似はいたしません」

ふふ、それじゃあ決まりだな。
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