815 / 968
総評
しおりを挟む
SIDE メリル
「……あの虎人族の青年、思っていた以上にやりますね。ただの猪突猛進獣人かと思っていましたが」
「一応初対面なのに、無茶苦茶悪く言うじゃん」
「初対面の態度が悪かったのは、彼らが先です。加えて、面倒を見てくれているクランのトップの好意を無視しようとする態度……今のところ、気に入らないところの方が多いので」
「それもそうか」
シュラとしても、とりあえず主人であるラガスを下に見ていたであろう顔は気に入らなかった。
「つっても、あの虎人族……レクディスだっけ? 結構頭使ってるし、魔闘気まで使えるの見ると、他のハンターの手助けなんて必要ねぇ!! って言いたくなるのは解らなくもないって感じだな」
「そうですね。魔闘気を使用出来るのには少し驚きました。戦闘面に関して、あそこまで頭が回るのは……リーダー向きの性質があると感じる」
「…………あそこの、森だと、厳し、そう」
「セルシア様、あそこの森つーと……刺青コボルトとかを思い浮かべてるっすか?」
「うん」
フォレストホークやサイクロプスなど、他にもそれなりに手強い部類のモンスターと戦ってきたシュラたちだが、一番厄介で強かったのは刺青コボルトたちであるというのは全員同意見。
「皆、それなりに、強い。でも、でも……不安? が、残る」
「普通に探索する分には問題無くとも、少しのイレギュラーが発生するだけで誰かが死ぬかもしれない、という事ですか?」
「そんな、感じ……かも?」
(仮にBランクのモンスターと遭遇した場合、おそらく虎人族のレグティスがメインアタッカーなり戦うでしょう。リザードマンジェネラルやオーガジェネラル、トロールなどの人型であれば……絶対に不可能とは言えませんが……)
まだレグティスに対して多少の不満は残っている。
しかし冷静に実力を視る眼は濁っていないため、実際に手合わせもした結果、四人ならBランクのモンスターを倒せないとは断言しない。
だが、誰かが犠牲になることを覚悟して一歩踏み出さなければならない……と、メリルは彼等の総合的な戦闘力を評価した。
「モンスターたちが集まる変な池の件もあるし……つか、そもそも他の森とかに生息してる個体と比べて強いっての考えたら、Bランクとかと遭遇したら普通に死ぬんじゃね?」
「……忘れていました。そういえばそうでしたね」
「Cランク、が、一杯とか、なら……生き延びる、かも」
「そうですね…………未開拓の地の異常の一つを考えるに、それぐらいの評価が妥当ですね」
「そこまで戦えるなら、エスエールさんがこれからじっくり育てたいってのも納得だな……っと、そろそろ終わるみたいだな」
魔闘気を纏って戦うレグティスに対し、ラガスは相変わらず危険すれすれの戦いを続けていた。
しかし中盤までと違い、拳を交える中で積極的に的確に打撃を叩き込んでいる。
徐々にレグティスの体に青痣が増えていき、動きの精度も落ちていく。
「っ!! ん、なろぉおおおおッ!!!!!」
「ナイスハイキック」
「っ!!!!!! はっ!!!!???」
自身に向けられて放たれたハイキックを褒めながらあっさりと躱し、右の甲を腹に叩きこむ。
通常のパンチの様に、体を突き抜く様に放つ攻撃ではないが……じんわりと肉を、骨を越えて内臓に衝撃が走り、ついに両膝を地面に付いてしまった。
「お疲れ様。うん、ぶっちゃけて話すと、思ってたより強かった。クランの先輩じゃないハンターの助けなんて必要ねーーー、俺たちだけでも十分探索できる!!!! って思いたくなるぐらいの強さと、頭の回転力? 考える頭を持ってるみたいだな」
「…………」
勝手に総評に入ってんじゃねぇと吼えたい。
ただ、どう考えても両膝を付いた時点で、普通の戦いであれば追撃を食らうのが確定していた。
吼えたいが、今声を上げたところで負け犬が吠えるのと同じ状況。
レグティスは奥歯を噛みしめ、大人しくラガスからの評価を受け入れた。
「……あの虎人族の青年、思っていた以上にやりますね。ただの猪突猛進獣人かと思っていましたが」
「一応初対面なのに、無茶苦茶悪く言うじゃん」
「初対面の態度が悪かったのは、彼らが先です。加えて、面倒を見てくれているクランのトップの好意を無視しようとする態度……今のところ、気に入らないところの方が多いので」
「それもそうか」
シュラとしても、とりあえず主人であるラガスを下に見ていたであろう顔は気に入らなかった。
「つっても、あの虎人族……レクディスだっけ? 結構頭使ってるし、魔闘気まで使えるの見ると、他のハンターの手助けなんて必要ねぇ!! って言いたくなるのは解らなくもないって感じだな」
「そうですね。魔闘気を使用出来るのには少し驚きました。戦闘面に関して、あそこまで頭が回るのは……リーダー向きの性質があると感じる」
「…………あそこの、森だと、厳し、そう」
「セルシア様、あそこの森つーと……刺青コボルトとかを思い浮かべてるっすか?」
「うん」
フォレストホークやサイクロプスなど、他にもそれなりに手強い部類のモンスターと戦ってきたシュラたちだが、一番厄介で強かったのは刺青コボルトたちであるというのは全員同意見。
「皆、それなりに、強い。でも、でも……不安? が、残る」
「普通に探索する分には問題無くとも、少しのイレギュラーが発生するだけで誰かが死ぬかもしれない、という事ですか?」
「そんな、感じ……かも?」
(仮にBランクのモンスターと遭遇した場合、おそらく虎人族のレグティスがメインアタッカーなり戦うでしょう。リザードマンジェネラルやオーガジェネラル、トロールなどの人型であれば……絶対に不可能とは言えませんが……)
まだレグティスに対して多少の不満は残っている。
しかし冷静に実力を視る眼は濁っていないため、実際に手合わせもした結果、四人ならBランクのモンスターを倒せないとは断言しない。
だが、誰かが犠牲になることを覚悟して一歩踏み出さなければならない……と、メリルは彼等の総合的な戦闘力を評価した。
「モンスターたちが集まる変な池の件もあるし……つか、そもそも他の森とかに生息してる個体と比べて強いっての考えたら、Bランクとかと遭遇したら普通に死ぬんじゃね?」
「……忘れていました。そういえばそうでしたね」
「Cランク、が、一杯とか、なら……生き延びる、かも」
「そうですね…………未開拓の地の異常の一つを考えるに、それぐらいの評価が妥当ですね」
「そこまで戦えるなら、エスエールさんがこれからじっくり育てたいってのも納得だな……っと、そろそろ終わるみたいだな」
魔闘気を纏って戦うレグティスに対し、ラガスは相変わらず危険すれすれの戦いを続けていた。
しかし中盤までと違い、拳を交える中で積極的に的確に打撃を叩き込んでいる。
徐々にレグティスの体に青痣が増えていき、動きの精度も落ちていく。
「っ!! ん、なろぉおおおおッ!!!!!」
「ナイスハイキック」
「っ!!!!!! はっ!!!!???」
自身に向けられて放たれたハイキックを褒めながらあっさりと躱し、右の甲を腹に叩きこむ。
通常のパンチの様に、体を突き抜く様に放つ攻撃ではないが……じんわりと肉を、骨を越えて内臓に衝撃が走り、ついに両膝を地面に付いてしまった。
「お疲れ様。うん、ぶっちゃけて話すと、思ってたより強かった。クランの先輩じゃないハンターの助けなんて必要ねーーー、俺たちだけでも十分探索できる!!!! って思いたくなるぐらいの強さと、頭の回転力? 考える頭を持ってるみたいだな」
「…………」
勝手に総評に入ってんじゃねぇと吼えたい。
ただ、どう考えても両膝を付いた時点で、普通の戦いであれば追撃を食らうのが確定していた。
吼えたいが、今声を上げたところで負け犬が吠えるのと同じ状況。
レグティスは奥歯を噛みしめ、大人しくラガスからの評価を受け入れた。
33
お気に入りに追加
3,491
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる