上 下
770 / 968

日々成長中

しおりを挟む
Bランクのモンスターと二回も戦ったのか……いや、それ自体は構わないというか……ダメか。
メリルさんの表情を見る限り、ギリギリアウトって感じか。

でも、戻ってきてからの様子を見る限り、特別無茶をした感じはしないし……ルーフェイスはルーフェイスでちゃんと仕事してくれた筈だ。

「メリル、とりあえずセルシアは普段通り元気な状態で戻って来たんだし、もう食事の手を再開しても良いんじゃないか?」

「っ……そうですね。セルシア様も日々成長されていることを考えると、少し心配し過ぎていたようですね」

「うん。私、も、毎日強く、なってる」

それは間違いない事実だろうな。
というか、メリルはもう少しセルシアの実力というよりは、ルーフェイスの実力を信用しても良さそうだな。

まっ、ルーフェイスが若干シュラと性格が似てるところを考えると、どうしても心配に思ってしまうのは仕方ないか。

「まっ、とりあえずまた明日から仕事だ。気合い入れていこう」

「了解です」

「うっす!!!」

「しっかり、見る」

明日からはギルドの訓練場で指導を行うのではなく、彼らを連れて墓場に向かい、俺たちの指導から学んだことを実践してもらう。


「よし、全員いるな。んじゃ、いくぞ」

俺たちも入れると、合計十人以上での探索。

三十層以降……もしくは四十層以降を探索するのであれば、そこまで珍しくはない人数だが、今回俺たちが向かう場所は、二十一階層。

「基本的に先日話した一組が戦い終えた後は、別のパーティーに交代。それを繰り返していく。ただし、自分たちが戦う時……戦力が足りないと思えば、即座に声を掛けるんだ。下手に意地を張るなよ。今回は実戦ではあるけど、実戦の訓練だ」

ごちゃごちゃになっていて良く解らない、と思うかもしれないが、とにかく訓練の延長。

同期だからって理由で、下手に手を借りたくないプライドとかあるかもしれないが、今は変な意地を張るところではない。

まぁ……そうは言っても、二十一階層辺りに出現するモンスターはどれもDランクやEランクばかり。

「しゃッ!!!!!」

「ふんっ!!!」

「シッ!!!!」

「はぁあああああっ!!!!」

敵が一度に三体から五体ぐらいしか出てこないってこともあるけど、訓練から一時間が経過して……誰も怪我を負ってない。

「ラガスさんたちの訓練を受けたお陰か、前よりもスケルトンの上位種たちの動きが遅く感じます」

「真面目な模擬戦の時は、お前たちが反応出来るギリギリの速さで動いていたからな。スケルトンにも個体差はあるだろうけど……この辺りに出現する個体なら、どんな相手でも余裕を持って対応出来ると思うぞ」

過信になっては困るけど、自信の厚みが増える分には構わない。

「…………今の俺たちなら、三十層のボスにも勝てますか?」

おっと……返答に困る質問だな。

俺たちの指導とこいつらの根性、努力もあって戦い方は上手くなってる。
それは間違いない。
ただ、身体能力や魔力の総量が激的に多くなったわけではない。

「三十層のボスって、確かデスシリーズのどれか一体だろ……」

十人で挑むのであれば、山を張る必要はない。
けど、普通に考えて……こいつらがBランクに挑むのは……うん、まだまだ早過ぎるな。

「うん、無理だな。全員が今よりも一回り強くなって、前衛組が全員魔闘気を扱えるようになって……ギリギリってところだな」

「うっ……やっぱりそうっすよね」

「モンスターのランクがBランクまで上がると、技術を持ってるとか特殊能力の効果が強くなるとか、そういう点に眼がいきがちだけど、単純に身体能力が上がってるからな」

デス・ウィザードは置いといて、デス・ナイトやウォーリアーとかランサーとか、魔力を除いた面が全体的に上がってる。

今無理に挑んでも、一分からどれだけ頑張っても一分半ぐらいで全滅か?

「欲を言えば、今より二回りぐらい強くなって、ちゃんと策を立ててから挑むのがベストかな」

「今より二回り…………やってみせます」

うんうん、遠すぎない目標を持つのは良い事だが、だからこそ死なないように気を付けてくれよ?
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...