上 下
758 / 968

どちらにしても困る

しおりを挟む
「いよいよ今日っすね、ラガスさん!!!!」

「そうだな、シュラ……解ってるとは思うが、俺たちの仕事はルーキーたちを殴ることじゃないからな」

「勿論解ってるっすよ!!!!」

……物凄い、殴る気満々な顔で言われてもなぁ……正真正銘の馬鹿ではないんだし、ちゃんと加減はしてくれるか。

「ラガス坊ちゃま、やはり指導の一環として毒を使うのはよろしくないでしょうか。勿論、致死性のない毒です」

「……アホたれが。駄目に決まってるだろ」

何だかんだであれだよな、メリルの方がこういう時は考え方というか、やり方がぶっ飛んでるよな。

「ラガス、雷は、止めた方が、良い?」

「うん、そうだな。雷は止めとこう。普通にシュラと同じでセルシアも拳骨で十分だから」

セルシアも身体能力は高いから、拳骨が十分な武器ではあるんだよ。

世の中見た目じゃないってのは……多分ルーキーたちも解ってるとは思うけど、やっぱり先入観ってのはあるだろうから、もしセルシアの拳骨を食らう奴がいれば、その痛さに心底驚くだろうな。

「あっ、ラガスさん。セルシアさん、シュラさん、メリルさん。おはようございます。既にルーキーたちは集まっていますので、お部屋にご案内しますね」

「ありがとうございます」

ん~~~、五十層での……紅蓮の牙との一件が広まったのか?
なんとなくではあるが、ギルド内に居るハンターたちの視線に、侮りが要素が随分と減った気がするな。

「ところで、紅蓮の牙と全面戦争寸前まで発展したとお聞きしましたが、本当ですか?」

「へっ? いやいやいや、そんな事してませんよ。ただ、ちょっと面倒な絡まれ方をしたんで、ちゃんと自分たちはここまで自分たちの実力で来たんだぞ、って示しただけですよ」

おいおいおい……いったい誰がそんな嘘を言いふらしたんだ?

確かにちょこっと衝突はしたけど、その場で事は収まったんだ。
それに後日、紅蓮の牙のトップも含めて、きっちりと謝罪は受け取った。
というか……結果だけ見れば、こっちがよっとやり過ぎたまであるか?

「そうだったんですね。あそこのトップ層は、ちょっと古い考え方と言うか、実力はあるんですけどそれなりに実力があるルーキーからはちょっと煙たがられてましたからね……それでも、これまでの功績に惹かれて加入する者は多いですが」

「……という事は、今日から自分たちの指導を受けるルーキーたちも、今後紅蓮の牙に加入するかもしれないってことですね」

「紅蓮の牙の力が増すのは良い事ですが、そうなると他のクランから不満が……しかし他のクランが大きく成長すると……といった感じで、どちらにしろ自分たちギルド職員としては、悩ましい結果になりますね」

他のクランが紅蓮の牙並みに大きくなれば、ダンジョン内で紅蓮の牙と他のクランが争い合うかもしれないからか……やっぱり組織ってのは面倒だな。

「こちらの部屋に、ルーキーたちが待機しています」

「どうも……っし、変に緊張せずに入るか」

とは言いつつも、やっぱりちょっと緊張するな。

「こんにちは~~~っと」

事前に聞いてた通り、十人のルーキーたち……六人は人族ではないルーキーか。

「初めまして」

「う~~~~~っす」

「どう、も」

「ワフ~~~~」

「えぇ~~~、俺たちがこれからお前たちに戦闘のあれこれ、ダンジョン内でのあれこれを教えるティールと、俺の仲間たちだ」

……真っ当な自己紹介だと思うんだが、彼らの視線が基本的に冷たい。

まっ、見た感じ……二十を越えてる人はいなさそうだし、十八とかまでなら反抗期真っ只中でもおかしくないか。

「それじゃ、そっちの自己紹介がてら、俺たちと戦おうか。何人か、なんでてめぇらみたいなガキが指導係なんだよって目をしてるし、そういった感じの自己紹介の方が良いだろ」

おっ!!!! 急に顔が元気になったな。
んじゃ、外に出てちゃっちゃと始めようか。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...