上 下
749 / 968

そう考えても仕方ないよな?

しおりを挟む
「あそこがボス部屋みたいだな」

なんとかメリルの噴火を抑え、最下層まで到着。
道中はこれまで通り遭遇したモンスターは全て倒してきたが、無駄に戦闘を増やす様な真似はせず、なるべく最短距離で下へ下へ歩いた。

「ん? なんだ、あのガキ共」

「ガキって、本当にガキなの、か…………鬼人族とメイド? はギリ大人って言えそうな見た目だが、もう二人は確かにまだガキって感じだな」

あらら、俺たちの前に先客がいたか。
一応それなりに他の街からもハンターが集まるみたいだから、五十層のボスに挑む同業者たちがいてもおかしくはないか。

「ラガスさん、ちょっくら挨拶した方が良いっすかね」

「止めとけ止めとけ。俺たちは同業者と喧嘩しに来たわけじゃないんだ。順番が回ってくるまで、大人しくしとけ」

「うっす」

シュラが言う挨拶って、どう考えても礼儀正しい挨拶じゃないだろ。

そりゃ俺やセルシアのことをガキガキって侮ってるけど、そりゃまだ学園を卒業したばかりの十五歳なんだ。
ハンターの常識に照らし合わせても、ハンターになったばかりのルーキー、ガキもガキだ。

順番が回ってくるまでそれなりに時間がかかりそうだし、軽く何か作って腹を満たしておくか。

「おいお前ら、何先輩に挨拶せずに飯を作ろうとしてんだよ」

「あん? なんであんたらに一々挨拶しなきゃいけなっ!?」

「おごはっ!!!!????」

「ら、ラガス……さん?」

はぁ~~~、クソ怠い。
本当に怠い……超鬱陶しい。

「てめぇ!!! いきなりうちのメンバーに何すんだ!!!!!」

「煩いっすよ。先に絡んで来たのはそっちからじゃないっすか。あっ、拳を振るうつもりはなかったとか、クソしょうもない嘘は付かないでくださいよ」

悪いけど、お前らの言い訳は聞かない。

「あんたら、どっかのクランに所属してる面子だろ。そんな面子が見た目ガキの連中に絡んでくる絵面で、どっちが屑か解りきってるだろ。挨拶しなかったらなんなんだよ。このダンジョンはお前らの所有物じゃないだろ」

「ペラペラペラと……クソガキが、こっちが大人しくしてりゃ調子に乗りやがって」

「抜くんすか? 抜くなら、ボス戦の前にあんたらを潰してウォームアップしようか」

プライドが高いバカであっても、ここまで潜ることが出来るバカだ。
油断はしねぇ。
本気で戦るつもりで狼牙瞬雷を抜いた瞬間、一人の男が前に出てきた。

「止めろ、お前ら」

「か、頭!!!」

「その呼び方止めろって言ってんだろ。おい、兄ちゃん。うちの連中が絡んで悪かったよ」

「……だからなんだ? てめぇらみたいな相手がガキだから、挨拶がないからってクソしょうもない理由で絡んで来た連中を、その程度の謝罪だけで許せって言ってんのか? あんたら、この街じゃ有名どころのクランに属してんだろ。やろうと思えば色々とやれるよな……そんな連中は、今ここで潰した方が俺たちは今後動きやすいと思うんだよ……あんたが俺の立場なら、そう思わないっすか?」

「ッ…………」

ふんっ! 最初からそうやって判断出来るなら、バカが動く前に止めろって話だ。

「どうすれば、矛を収めてもらえる」

「頭!!! なんで頭がこんなガキなんかにそんな!」

「黙れ。お前ら……ボス戦前に死ぬつもりか」

「「「「「「「「「「ッ!!!!」」」」」」」」」

ったく、ようやっとルーフェイスのヤバさに気付いたか。

「はぁ~~~……紅蓮の牙、っすよね。もうちょい教育した方が良いんじゃないですか」

「恐れ入るよ。ところで……君の名前はもしかして、ラガス・リザードかな」

「……ようやく今解ったみたいっすね。まっ、だから許すって選択肢はないっすけどね。バカを止めなかったあんたが悪い。あんたにその気がなかったとしても、紅蓮の牙に所属しているという事を誇りに思っているバカ共がどう動くか分からない以上……ねぇ」

「ッ!!!! どうしたら、矛を抑えてもらえる」

「……………トップであろうあんたがそこまで低姿勢なのを考慮して、全員俺の腹パンを食らってもらう。後、順番を俺たちに変われ」

「わ、分かった」

……何人かホッとしてる様だが、やっぱまだ嘗めてるんだろうな。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...