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王だからこそ

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「こっちは終りました」

「あぁ、そうみてぇだな……チラッとだけ見たが、流石の一言だ」

「ラストと二人で戦った結果ですよ」

ここまですんなり褒めてくれるのはちょっと意外。

でも、ここで調子に乗って天狗な態度を取ったらアウトだろうな。

「お前ら二人だけじゃなくて、あっちの二人も大概だな」

「俺たち、授業がある日も休みの日も基本的に体を動かしてばかりたっだんで」

「なるほど……俺らとはそういう部分が違ったのかもしれねぇな」

ん~~~~……やっぱ良い人だね。
そうやってサラッと納得してくれると、非常に有難い。

てか、こっちに恨めしい視線を向けてくるだけで、結局俺には何もしてこなかったし、セルシアやメリルにも何かした訳ではなさそうだな。
ただそこまで狂ってなかった、ってだけか。

まっ、もう二度と会うこともないだろうし、これ以上気にする必要はないな。

とりあえず陸鮫と陸鮫が率いていたモンスターの討伐は完全終了。
負傷者こそ出たが、どうやら死者は一人も出ていないらしく、Bランクモンスター率いるモンスターの群れの討伐戦ではかなりの快挙らしく、ギルドの方から特別な報酬を受け取った。

とはいっても、特別報酬の内容は硬貨。
勿論魔靴の素材購入額などを考えると嬉しいが……今回の討伐戦で得た最高の報酬は、陸鮫。

その日の夜は討伐戦に参加した冒険者同士で宴会となったので、後日の昼食時、ハサンで一番の料理店を訪れ、陸鮫の身を使った料理を作ってほしいと頼み込んだ。

「ッ~~~~……はぁ~~~~、たまらん」

「うん、とても、美味しい」

「これは……なんと言いますか、宝石を食べてる?」

「何言ってんだメリル? まっ、言いたい事は解るけな。いつもならもっとがっついて食べるんだが……そうするのが勿体ないって思える美味さだ」

うんうん、皆非常にご満悦みたいだな。

シュラの言う通り、勢い良く食べるのが勿体なく思える上品さがある。
個人的には陸鮫はそう簡単に遭遇できるモンスターではないから、勢い良く消費せず食べられるのは有難い。

「これを食べられるのであれば、わざわざハサンに留まった価値はあったと言えますね」

「そうだろそうだろ。まっ、予想以上に粘る存在ではあったけどな」

解体する時、少々大変だったから防御力の高さ……どれだけ優れた鱗を持っているのか理解出来た。

ただ、防御力の固さと危機回避能力の高さは別だ。
攻撃力もそれなりに高かった……いや、最後のシュラを丸々食べようとした咬みつきは、鉄の塊を丸かじり出来そうな鋭さもあったな。

じゃなくて、それよりもたの危機回避能力の高さだ。

「ラガス坊ちゃまがそこまで褒めるとは……予想以上の難敵だったのですね」

「……目的が目的だったからな。ただ倒すことだけを考えれば話は別だったかもしれないけど……とにかく生き残るのが上手い奴だったな」

「結構歳取ってて、経験豊富だったんすかね?」

「あり得そうな内容ではあるな」

モンスターも学習しない訳ではないからな。
でも、そうなると危機回避能力じゃなくて、先読みの力が優れてたってことになるのか?

「……王は、力より、も、危機を回避する、のが重要、らしい、よ」

「力よりも危機感知か…………なるほど、納得出来なくもないな」

群れを率いるのであれば尚更、そういう力が大切に……って、確か陸鮫は他のモンスターたちを支配していたんだよな。

ん~~~~……だとしても、海の王者であるならば、そういう力が生まれつき備わっていてもおかしくない、か。

「ラガス坊ちゃま、疑問は解決しましたか?」

「陸鮫本人じゃないから真相は解らないけど、納得は出来た。ありがとな、セルシア」

「偶々、思い出した、だけ」

……相変わらず小さな微笑が絵になるな。

にしても、あいつらは本当に何もしてこなかったな。
決闘でも申し込んでくるかと思ったが……まっ、何も起こらないのであれば、それに越したことはなな。
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